○区立幼稚園は、園児一人当たり平成7年度文部省の地方教育費調査で222万円(都内最高額)で運営されているが、私立幼稚園は、40万円にも満たない。公費は無駄なく納得できるように使われるべきである。私立幼稚園は、公私格差是正の請願を30年以上も前から提出し、採択されている。また、公私立幼稚園調整審議会でも格差の2分の1以上を助成する答申が出されているにもかかわらず、ここ2年間は、財政難を理由に8,000円に据えおかれ、格差は開いており、2分の1以上の助成は達成されていない。
○保育園は、完全に公私格差が是正されており、また、最近は大学においても格差が是正されてきている。
○私立幼稚園の保護者は、区立幼稚園の経費と私立幼稚園の保育料について、いわゆる教育費の二重払いをしている。公費は公立と私立の保護者に対し、平等に使って欲しい。同じ幼児をもつ区民として、税金を平等に還元して欲しい。また、区によって補助金に大きな差があることは、保護者にとって大きな問題である。江戸川区並の助成をして欲しい。
○私立幼稚園等に対する財政援助は、学校法人が設立する幼稚園と学校法人以外が設立する幼稚園では、東京都の補助金が大きく異なる。また、保護者に対する負担のための助成と、私立幼稚園そのものに対する助成を状況に応じてバランスをよくする必要がある。
○区立幼稚園の役割又は存在意義や私立幼稚園への全面委譲についても、民間活力を導入するという観点から検討する必要があるのではないか。
○港区財政構造改革指針を考慮した検討が、幼稚園教育においても必要である。
○「私立幼稚園の振興策は、基本的には、東京都の役割」ということについては、そのように定めた規定はない。おそらく、私立学校法により私立学校の設置、廃止の認可等の事務が都知事に委任されていること、高等学校以下に対し、東京都によって経常費の助成費補助が行われ、国庫補助金が東京都に対し交付されていること等との関連において、そのような発言になったと思われるが、私立幼稚園の設置、廃止の認可等については、東京都委任条項により都知事から港区長に委任され、港区はこの事務について、私立幼稚園の所轄庁となっている。港区は、区の事業として、保護者負担軽減補助事業、私立幼稚園等の団体に対する補助や就園奨励事業等を行っている。また、第3次幼稚園教育振興計画要項(平成3年度から10年間)の円滑な推進のため、その趣旨に沿って、各市町村は、幼稚園教育振興計画を定めることになっているが、都道府県もそれに基づいて都道府県としての幼稚園教育振興計画を定めることとされている。
このように、私立幼稚園の振興については、東京都及び港区の間に役割の軽重はなく、東京都及び港区がそれぞれ必要な役割を果たしている。
○近く地方自治法の改正が行われ、港区が基礎的地方公共団体として位置づけられることが予定されている。区市町村のような基礎的地方公共団体の役割は、住民のしあわせを図るための事業を行うことである。地方分権推進法においても、住民生活に直接関係のある事務は、住民に身近な地方自治体において行うことを基本として、地方分権の推進を図ることとしている。私立幼稚園の振興に関する事務は、この意味において、区民の幼児の日々の教育を行う私立幼稚園に関することであり、住民生活に最も密着したものというべきである。保育所については、区の事務となっている。幼稚園と保育所では、その根拠となる制度は異なるが、住民生活に直接関係の深い事務であることに変わりはない。
地方分権の具体的内容は、今後の課題であるが、区の役割は、さらに重要になると考えられる。地方分権の場合、事務の委譲だけでなく、財源の委譲等の充実についても努力が求められている。このように、港区の私立幼稚園の振興策のための役割は極めて重要であり、今後、港区としては、東京都とともに、私立幼稚園振興に関する施策を積極的に行うよう配慮されたい。
○私立幼稚園の振興策は、基本的には東京都が主として担っている。港区は地域で公私立幼稚園の共存・共栄を図るため、財政状況を考慮する中で公私格差是正を観点に保護者負担軽減補助をしてきた。また、今後も基本的に同様である。住民負担の公平性という観点から、今後は、所得制限等の導入を検討していきたい。その際は、低所得者層への傾斜配分と共に、私立幼稚園及び保護者への何らかの支援策を検討する必要があると考えている。
○区立幼稚園で3年保育を実施する場合、その配置や定員等を十分考慮したとしても、港区の幼児人口が減少している今日、私立幼稚園に影響を及ぼすことが考えられる。そのため、振興策は、区立幼稚園での3年保育の実施と一体で考えている。
○私立幼稚園に対する区の権限は、区長委任条項により幼稚園の設置認可、園長や教員の変更届等の事務のみで、年間の委任事務費は、わずか15万円のみである。財政措置を伴わない権限では、主体的な振興策はできない。
○区立幼稚園の経営の中で無駄があれば、適正規模・適正配置して効率的な運営をしなければならない。基本的に施設の建設費用又は行政サービスの費用は、それを利用する区民も利用しない区民も全体で負担している。区民が負担した財源を公平かつ効果的に配分するという面から、公私格差の是正に努力していく必要がある。
○公私立幼稚園の保育料に差があることも選択肢の一つであり、経済的に恵まれない保護者は、保育料の安い区立幼稚園への入園を望んでいる。
○効率的な行政運営をするには、施設管理や行政サービスの一部に民間活力を導入することが必要である。しかし、そのことが、幼稚園教育に馴染むか否かについては、検討が必要である。
○幼稚園教育は義務教育に準じ、また、私立幼稚園は公教育の一翼を担っていると考えている。
○昨今の家庭環境や社会状況から、子育て支援策として、地域コミュニテーづくりや地域ぐるみの子育て、子育てネットワークづくり、父親の参加等、できるところから早急に手をつけるべきであると考える。したがって、幼稚園は、3歳児から5歳児を対象とするだけでなく、そうした子育ての拠点となる意味がある。
○3年保育の教育内容や方法について、追求すべき課題を解明するために、既に経験されてきた私立幼稚園や保育所の実績を生かし、公私立幼稚園共通の研究、研修の場をもつことが望まれる。