○第3次幼稚園教育振興計画の目標は、港区においては既に達成されている。
○港区公私立幼稚園調整審議会で、区立幼稚園での3年保育は行わない、との約束がある。
○私立幼稚園は、3年保育の歴史も経験もあり、また、未就園児を受け入れられる十分な定員枠がある。
○区立幼稚園で3年保育を実施すると、私立幼稚園に入園を希望している幼児が公立幼稚園に移行する可能性があり、経営上、困難な問題が生じる。
○幼稚園は義務教育機関ではない。3歳の子供を幼稚園または保育園に入れるか、あるいは自主保育をするか、保護者のニーズは様々である。公立幼稚園に3年保育がないからという理由で、未就園児345人全員が4歳まで待機するという考え方は、一般的でない。
○社会状況から3年保育は必要だが、一般論として、即、区立での3年保育には繋がらない。
○私立幼稚園には、地域の幼児が通園しており、園児たちは、地域の友だち関係の中で育ち、地元の小学校へ多数入学している。
○区立、私立双方の保護者にとって、保育料の格差が解消され、自由に幼稚園を選択できることが望ましい。是非、公私格差を是正して欲しい。
○過去の歴史の中で、区立幼稚園が多く設置され、私立幼稚園が圧迫されてきた。港区公私立幼稚園調整審議会で公私格差の2分の1以上の教育費を負担するということであったが、現在は守られていない。
○人口1万人に1園という基準が概ね達成され、また、公私立幼稚園の距離が適切に保たれ、幼児人口に対して幼稚園の定員数が適切であるならば、基本的に区立幼稚園の3年保育に反対する理由は無いが、現実は、このようにはなっていない。
○区立幼稚園の保育料は、コストからみて、あまりにも低すぎ、所得制限も無く不公平である。
○区立幼稚園の公費支出額は、平成7年度文部省の地方教育費調査で園児一人当たり222万円で東京都内最高である。(公立幼稚園における園児一人当たりの全国平均は、平成7年度71万円)これに対し、私立幼稚園の支出額は40万円にも満たない額で運営されている。
○港区教育委員会の資料では、園児一人当たり175万円(平成7年度区一般会計の決算額)の数字が提出されたが、この資料と他の地方公共団体の公費支出額との比較が出来ないため、他の地方公共団体と比較して非常に過大であるとの認識ができない状態であった。
この過大支出に対し、港区側からこれが非常に問題であり、是非とも早急に是正しなければならないという強い態度が見られず、また、公立幼稚園側においても、教育のための過大な経費支出に対する認識に問題がある。
一方、私立幼稚園に対する施策については、殊更、苦しい財政状況の中で努力しているような説明をしていることは、極めて残念である。
○公立幼稚園の運営について反省がなく、また、新たに3年保育をやるべきだと主張していることについては、公立は区の運営であるから、経費がいくらかかっても財政上許される、との態度が明らかであり、同じような過大支出を生む結果が予測される。
○港区は、財政構造改革指針において「事務事業の抜本的見直し」を掲げ、その方策として、民間との役割分担の見直しをすることとしている。私立幼稚園が幼児教育の責任を十分に果たすことができ、かつ、財政的にも合理的な運営が行い得るならば、港区は、思い切って公立幼稚園に対する見直しを行い、公立幼稚園による幼児教育をやめて、私立幼稚園に一切を任せ、財政援助を検討すべきである。
○第3次幼稚園教育振興計画は、全ての幼児を対象としたものではない。入園を希望する3歳児から5歳児の就園を目標としている。
3歳から4歳までの一年間の成長は非常に大きく、3歳児を4歳児と同様に扱ってはならないと思う。3歳児は成長のばらつきがあり、絶対に行かせるということをしないように注意しなければならない。実際、子ともの状態から、4歳まで入園を待つ親もいる。その他、3年保育についても、3歳児を担任する保育者の適性の有無や保育内容の問題がある。保育内容、3歳児の状態を研究したうえで、この問題を考えていくべきである。
○未就園児345人は公立幼稚園の3年保育を希望するか、あるいは保護者のもとで育てたいと思っている。保育料が高くても私立幼稚園を選ぶのは、保護者が3歳から保育を受けさせたいからである。公立に3年保育がないからという理由で4歳まで待機せざるを得ない保護者も多い。保育料の格差も選択肢の一つであり、経済的理由で公立に行かせたい保護者もいる。
○私立には、私立の良さがある。区立も保育内容に自信を持っている。地域で愛され、育てられている幼稚園は、公立も私立も存続が可能である。幼児期にふさわしい生活ができる教育環境をつくることが大切である。区立幼稚園でも、3年保育が実現すると、異年齢の幼児集団ができ、大変望ましい環境ができる。
○区立幼稚園では、3年保育の具体的経験はないが、公立幼稚園では、何年も前から研修を行っており、いつでも実施できるように準備は整っている。
○保護者は、私立、公立ということで選択するのではなく、その幼稚園がもっている特色で決めている。
○私立幼稚園の立場はよく理解できる。しかし、社会状況が変化した現在、過去の歴史的経緯を現在に当てはめることはできない。私立幼稚園の3年保育を受けたくても入れない多くの子供たちはどうすれば良いのか。子育ての世代は経済的に私立に行けない家庭もある。幼稚園教育が準義務教育と言われる今こそ、公立で3年保育が必要である。
○平成9年11月に実施したアンケート調査(東京都公立幼稚園長会が、区立幼稚園の4歳児と5歳児及びその関係者の保護者を対象に実施した内の港区の調査結果で、回答者数は311名)では、「公立幼稚園に3年保育があったら入園させますか」の設問に対し、「入園させる」が78%であった。また、平成8年9月に実施したアンケート調査(港区立幼稚園教頭会が、区立幼稚園の4歳児と5歳児の保護者を対象に実施。回答者数は403名)では、「区立幼稚園を選んだ理由」の設問(複数回答)に対し、「経済的負担がかからない」が65%であった。3年保育の試行は、1園と言わず2~3園で実施して欲しい。
○区立幼稚園の適正規模・適正配置と同時に、3歳児の適正配置を考え、3年保育をしなければ、区立幼稚園での3年保育を待ち望んでいる区民の理解は得られない。平成11年度から試行を実施して欲しい。
○第3次幼稚園教育振興計画の目標は、港区においては既に達成されている、との主張であるが、区立幼稚園に入園を希望しながら就園できない3歳児が、現実問題として存在する。
○幼児は、幼児同士のかかわり合いの中で、刺激を受けて育っていく。公立幼稚園で子供を育てたいと4歳まで待つ保護者もいる。私立と同様、公立の存在も大事である。
○少子化の現在、保護者は幼稚園の降園後も一緒に遊べる友達関係を大切に考え、兄や姉等が通学する地元の小学校に近い区立幼稚園に入園を希望している。
○思春期に引き起こされる青少年の様々な問題は、家庭、幼稚園、小学校を通して考える必要がある。自分の存在感を持ち、心の居場所を持ちながら、成長していく力を育むために、幼稚園教育の在り方が非常に大切になってきている。
3年保育は、家庭や社会環境の変化により、その必要性がせまられている。多様な人間関係の中で、自分の力で生きる大切さと、他の人とともに生きるという自我の育成が大切である。少子化の現在、家庭生活だけで育てるのは難しく、そのことが幼稚園教育に求められている。
○3歳児は、自我が芽生え、自分の世界をもつ大変大事な時期で、3歳の育ちが4歳~5歳の発達に大きな影響を及ぼすことが言われ、3年保育の振興計画が打ち出された経緯がある。核家族、少子家族等家庭環境が変化し、家庭の教育力の低下とともに、2歳以下の子供の育ちにも大きな影響を及ぼしている。幼稚園教育は、4歳では遅く、せめて3歳から考えていく必要がある。
○幼稚園では、遊びを中心とした教育を行っている。また、親子での徒歩通園を大切にし、教職員と保護者が直接、その日の子供の様子を互いに伝え合えることや、徒歩通園中に自然環境に触れたり、交通安全について教えたり、直接的な経験ができ子供の望ましい成長を促すことができる。