グループ研究(あそび)

   「あそび」のめざすもの
 幼年部では望ましい経験や活動により学習の基礎となるはたらきの開拓や基本的な生活習慣や態度の育成を図っているが、四・五歳児の段階として、一・二年につながる学習の基礎となるはたらきを育てる「あそび」について、それがめざすものをつぎのように考える。
(1)「あそび」は子どもが自分で考え、自分でしようとする力を高める。
(2)子どもが自分で考え、自分でしようとする力は、感覚に直接訴える「あそび」により高まる。〔略〕
 「あそび」は「未分化で、感覚的、想像的である等」の発達段階に即し、四歳のひとりで単純な「あそび」から五才の友だちといっしょのややまとまりと流れのある「あそび」となり、一・二年の学習の基礎となるはたらきを育てる。
 
 「あそび」の主な題材および標準主題
一 学 期二 学 期三 学 期
4
○遊具であそぶ  ○土や水であそぶ  ○動物とあそぶ
○野原や畑であそぶ
5
○さあはなぐみだ いろいろなあそびをしよう
○乗り物ごっこをしよう
○プールで水あそびをしよう
○運動会をがんばろう
○私たちの動物とあそぼう
○虫、木の実、木の葉をとったり、いもほりをしよう
○みんなでお店ごっこをしよう
○元気で一年生になろう

 
 「あそび」の考え方と子どもの実態にたち、四歳については主な題材を、五歳については標準主題を示した。
 この他、上記の題材や主題のほか、たなばた、もちつき等の行事を適宜行なう。幼年部間の交流活動を積極的に行なう。
○竹馬(五歳)(四五年一月~二月)
 主題の解釈
○竹馬は子どもの感覚を育てる(自分自身の力でその重心のかけ方・のり方を体得していく)〔略〕
 竹馬は竹にのるという感覚を身体の中に体得させ、自分の足としていく喜びを子どもにもたせてくれるあそびである。
○竹馬は子どものしようとする力・ねばる力・がんばる力を育てる。
 自分自身で努力した経験をもつことにより、他のあそびにも自分でやろうとする気持がでてくることを期待する。のろうとしてもなかなか自分の思いどおりにならない。毎日、自分でのってみようとこころみる。そうしてのりこなす。その過程の中で、何とか自分でやろうとする気持、最後まで頑張ろうとする気持を育てていきたいと願って竹馬をとりあげた。
 
 活動の記録
 最初は空缶でつくった竹馬から練習し、缶のりがうまくできるようになってから、本来の竹馬であそぶように指導し、お正月の家庭のあそびとして始め、三学期になってからは、幼稚園でそのあそびをさらに拡げていった。家庭でのれるようになってきた子が四〇名中六名、三学期当初はのれない子の指導にてんてこまいであった。
 Mが缶の竹馬をのりこなすようになった。本来の竹馬に進ませる。教師が竹をささえ、その歩くリズムを身体の中に体得させる。それができてくるとずいぶん足の運びが軽くなる。竹のはしを手でささえ、すこしずつ力を調節していく。ささえているかささえてないかのところまできたとき、Mが「先生、もう手をはなしていいよ」といった。歩きだしてから途中で手をはなしてみた。その歩いているテンポがくずれず、とん・とん・とんと前にでた。「あ、のれた」何度かそれをくり返し、確かなものにしていく。Mは夢中でそのくり返しを要求した。「もう、自分で練習してごらん」今度は壁にもたれかかり、竹馬にのる。壁にくっついたままねばる。何度も足をふみはずす。「先生、竹馬、家にもってかえるよ」、次の日、Mは「もう、竹馬、ひとりでのれるようになったよ」と大いばりでやってきた。
 竹馬は個人指導である。何人もまとめては、指導がなかなかできない。教師の後に、竹馬の指導をしてくれといって列ができ、ぞろぞろついて歩く。どうしてももうひとり教師が欲しい。
 
○虫をとってあそぶ(四歳)(昭和四十四年九月下旬~十一月中旬)
  題材の解釈
○虫は動く。子どもは何にでもさわりたがるが、動くものにはとくに興味を持つ。子どもは全身の感覚を虫の動きに集中し、追い、捕え、自分の物にする。
この力を育てたい。しかし子どもの周囲には家と車が混雑し、虫と言えばお寺の境内に少しいるほかは、夜店で買うおたまじゃくしぐらいしがない。
○四月末に二cmほどの雨がえるを保育室に持ち込んでみた。組の半数の子どもがあとずさりしたり、奇声を発して逃げたり、震えたり、泣き出したりしてかえるを手でつかめない。子どもに何にでもさわりたい気持が芽生えたときから今日まで、生き物に出会うことがほとんどなかったために、こんなにこわがるのだろう。
そこで一学期は園で飼育しているうさぎやモルモットをなでたり、だいたり、金魚やどじょうを手ですくったりして、生き物に直接ふれることに徐々にならした。

(東町幼稚園資料『これからの学校の追究と実践』昭四五)


 
【付記】昭和四十六年中教審の答申の中で「四・五歳児から小学校低学年の児童までを同じ教育機関で一貫した教育を行うことによって、幼年期の教育効果を高めること。」の提案がされた。本区の併設園でも幼少関連の研究がされている。本資料は東町幼稚園での四・五歳児と一・二年を幼年部となづけ遊びの記録の一部である。