小学校入学前教育カリキュラムに期待すること

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港区小学校入学前教育カリキュラム検討委員会委員長
國學院大學教授 神長 美津子

 年長組の子どもたちにとって、「小学校1年生になる」ということは、まさに「成長する自分」を実感するときであり、小学生になることへの期待に胸がふくらむときです。しかし、一方には、小学校の生活や学習は、幼稚園や保育園と大きく異なるので、小学校という新たな環境の中で、「我が子は、大丈夫かしら」と、不安を抱いている保護者も少なくありません。
 今回、港区で、幼稚園や保育園、小学校の代表の方々と話し合って作成した「育ちと学びをつなぐ 小学校入学前教育カリキュラム」は、こうした保護者の方々の不安にしっかり応えていくものであり、そのために、幼児期の生活や教育から小学校の生活や学習への移行を丁寧に示しています。まさに、みんなと一緒に学習できるようになったからこそ、義務教育がスタートすることを示しています。
 確かに、遊びを通して総合的に指導する幼児期の教育と、教科等の学習を中心とする小学校教育とは異なり、子どもにとっては段差となるかもしれません。しかし、この段差を乗り越えていくからこそ、子どもたちは、新しい世界と出会うことができ、大きく成長することができるのです。ただし、そのためには、幼稚園や保育園、小学校の先生方が連携し、5歳児から1年生への移行期の教育を共有することが必要です。
 「育ちと学びをつなぐ 小学校入学前教育カリキュラム」の特色は、幼児期から児童期への発達や学びの連続性を踏まえて、「生活する力」「発見・考え・表現する力」「かかわる力」の3つの自立の視点から作成し、5歳児から1年生への移行を分かりやすく示していることにあります。
 また、保護者への発信を工夫して、その移行期の教育を保護者とともに考えているところも特色です。幼稚園や保育園が、保護者の我が子の小学校入学に対する期待と不安をしっかり受け止め、保護者とともに、子どもの成長を温かく見守っていく関係を構築していくためのヒントを示しています。
 「育ちと学びをつなぐ 小学校入学前教育カリキュラム」が、幼稚園や保育園のそれぞれの話し合いの中で、また保護者や小学校の先生方との話し合いの中で活用されて、小学校入学前の子どもたちの発達や教育への関心が広がり、さらに深まることを願っています。