2 育ちと学びについて

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 保育園・幼稚園における「育ち」とは、幼稚園においては学校教育法第23条(*1)に掲げる目標を達成するため、また、保育園においても同様に、保育所保育指針の総則に掲げる目標(*2)を達成するため、保育園・幼稚園修了までに育まれる生きる力の基礎となる心情、意欲、態度のことです。幼児期に期待される「育ち」を確実に小学校へとつなぐことが大切です。
 幼児の育ちをつなぐためには、豊かな学びの機会を保障することが必要となります。ここでいう幼児にとっての「学び」は、大人が目的をもって学ぶこととは異なり、遊びを中心とした主体的な生活を送っている結果として、次のようなことを「学ぶ」ことを言います。
 
 幼児にとっての学び
・幼児が様々なものや人と出会い、それらとのかかわりの中で、好奇心や探究心をもつこと
・基本的な生活習慣を身に付けること
・いろいろな遊びを通して、体を動かす心地よさを味わうこと
・試行錯誤を重ねる中で物の特性や物事の法則性に気付くこと
・目的に向かって挑戦し、多少の困難を乗り越えたときの達成感や自己肯定感を味わうこと
・言葉を獲得すること
・創造的な思考力や表現力を身に付けていくこと
 
 そして、これらのすべてが小学校以降の生活や学習の基盤となっていきます。幼児期の教育においては、幼児の生活の基盤となる家庭と保育園・幼稚園が連携しながら「豊かな学び」が保障されるよう、「育ち」と「学び」を確実に小学校へとつなぐことが重要と考えます。
 また、幼児にとって園生活は、豊かな生活体験を得る場です。「豊かな」ということは、多種多様で、一つ一つの体験がバラバラにあるのではなく、体験の一つ一つが幼児にとって心を動かす体験となり、体験と体験が重なって関連性をもち、新たな意味や価値が生み出されることであり、それが幼児の学びを「豊か」にします。そのために保育士や教員は、体験の一つ一つが有意性をもつよう、環境を構成し、幼児の活動に沿って環境を再構成することを繰り返しながら、幼児とともに遊びや生活をつくり出していくことが求められます。
 このように、大人が一方的に環境を決めたり与えたりせずに、幼児の気持ちに寄り添ったきめ細かな教育を展開することが、幼児の生活に意味をもつ「豊かな学び」へとつながります。

 


「育ちと学び」を小学校へつなぐ



*1 学校教育法 第23条
幼稚園における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体的諸機能の調和的発達を図ること。
二 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
三 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
四 日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
五 音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。
 
*2 保育所保育指針 第1章 総則 (抜粋)
3 保育の原理
(一)保育の目標
 ア 前文省略
 (ア)十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。
 (イ)健康、安全などの生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。
 (ウ)人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。
 (エ)生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。
 (オ)生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。
 (カ)様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。