體操教授要目ノ記載事項ヲ課スルハ勿論此ノ外ニ左ノ種類ノ運動ヲ加フ
一、武術ノ形體操一名體育流武術
劔術形體操(拙著劔術形體操ニ詳述ス)
薙刀形體操(拙著薙刀形體操ニ詳述ス)
尚劔術ハ男ニ薙刀ハ女ニ何レモ尋三以上ニ課スモノ時間ハ正課時間中ニ一時間正課時間外ニ一週三十分ヅヽ二回トス
別册乙號ニ略術セリ
一、體育的衞生的改良撃劔
一、 仝 薙刀試合
尚撃劔ハ男ニ薙刀試合ハ女ニ何レモ尋六髙一、二兒童ニ課スル準備中ナリ
別册丙號ニ略述セリ
一、薙刀舞(拙著アリ)尋三以上ノ女ニ課ス
一、本邦固有遊戲(拙著アリ)全校兒童ニ之ヲ課ス該遊戲中雨天ノ日教室内ニ於テ課スルニ適スルモノ多々アリ
一、仕舞 尋三四五六、女兒ノ有志者ニ時間外ニ一週一度之ヲ課ス
晴天ノ放課時間ニハ運動場ニ於テ全生ニ愉快ニ活溌ニ充分ナル運動ヲ爲サシメンガ爲メ運動場ニ容易ニ設備スルヲ得ベキ簡易ナル遊具ヲ數多ク備付ケ運動セシム
雨天ノ放課時間ハ室内ニテ使用スルニ適スル遊具三十餘種ヲ箱ニ入レ各室ニ之ヲ一箱ヅヽ備付ケ遊戲セシム
此クノ如ク晴天雨天共ニ正科時間ニモ放課時間ニモ適當ト思惟スル運動遊戯ヲ課シ尚此外ニ體育衞生思想ヲ向上セシメン爲メ體操科ノ理論トモ云フベキ體育衞生講話ヲ爲ス其ノ時間ハ一週三十分以内ノ割ヲ以テ雨天ノ體操正課時間中ヨリ之ヲ取ル其ノ教材ハ各教員ニ拙著實際的體育衞生講話資料一部宛ヲ渡シ置キ其ノ記載事項中ヨリ之ヲ取ルコトヽス
以上述ブルガ如ク運動法ニヨリ身心ヲ鍊リ體育衞生講話ニヨリ體育衞生思想ヲ皷吹シ尚此上ニ體育奬勵法ヲ設クルコト左ノ如シ
體育奬勵内規
一、男女各同年齡中體格ノ最モ偉大强健ナル者一人宛ヲ選ビ當校創立紀念日ヲ以テ體格優等證書及體育奬勵章
ヲ授與ス
二、男女各同學年中前回身體檢査ニ比シ發育顯著ナルモノ一人宛ヲ選ビ當校創立紀念日ヲ以テ體育奬勵章ヲ授
與ス
三、各學級ニツキ體操遊戲法ノ最モ巧ミナル者五人以内ヲ選ビ修業證書授與ト同時ニ體育法熟練證ヲ授與ス
四、前三項ノ證書ハ一回授與セルモノニハ復ビ同一ノ理由ヲ以テ授與セズ
五、各學年體育的訓育試驗ノ成績優等者ニ修卒業證書授與ト共ニ體育的訓育成績優等證書ヲ授與ス
六、運動會開催ノ節竸技優勝者ニハ褒狀ヲ授與ス
七、體育流武術優等證書ハ髙等科第二學年ノ男女選手ニ限リ卒業ノ際之ヲ授與スルモノトス
八、體格優等證書身體發育顯著證書ハ各受持教員ニ於テ身體檢査ノ結果ヲ案シ候補者三名宛ヲ選ビ校長及學校
醫ノ意見ニヨリ夫ヲ決定シ體育法熟練證ハ體操科教員ニ於テ五名以内ノ候補者ヲ選ビ校長之ヲ決定シ體育的
訓育試驗成績優等證ハ校長提出ノ問題ニ付キ筆答セシメ選定スルモノトス
各證書ノ本文ハ左ノ如シ
一、體格優等證書ノ分
證
第 學年
明治 年 月 日生
右者體格優等ナルヲ認メ體育奬勵章一個ヲ授與ス
大正 年 月 日
東京市麻中小學校長 小澤夘之助
同小學校學校醫 伊澤 元藏
二、發逹顯著者ノ分〔略〕
三、體操遊戲法優等證ノ分〔略〕
四、體育的訓育成績優等ノ分〔略〕
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敬老教育ニツキテ
敬老ノ教育ニ付キテハ尋常小學修身書卷二、二十五「トシヨリニシンセツニセヨ」ノ題下ニ簡單ニ說明シ高等小學修身書卷ノ一第八課敬老ノ題下ニ說示スルニ止マレドモ小官ハ忠孝ト並ビ訓フベキモノト思考ス縱ヒ愚考ノ如ク尋常科每學年ノ修身書ニ加ヘ每學年之ヲ教訓スルコトトスルモ小官ハ未ダ之ヲ以テ滿足スルコト能ハズ每學年ノ教訓ト相待ツテ直覺的ニ之ヲ教フル方法ヲ加フルコトノ極メテ緊切ナルヲ認メ當校ニ運動會、學藝會、展覽會等ノ催シアル每ニ當校兒童ノ祖父母等ニシテ當校兒童ト同住スル七十歳以上ノ高齡者ニ案内狀ヲ發シ出來得ル限リノ便宜ヲ與ヘ職員、兒童中ノ接待掛各自ヲシテ能フ限リ優遇セシメ以テ老者ヲ敬フベキコトヲ兒童ノ面前ニ於テ實地之レガ模範ヲ示ス事トス其ノ方法及ビ當校敬老教育ニ對スル特志後援者ノ歷史等ハ別紙ニ詳ラカナリ
敬老内規
一 各學級ニ高齡者名簿ヲ備フルモノトス
二 高齡者名簿ノ樣式ヲ左ノ通リ定ム
高齢者氏名 | 調査暦年度 | 死亡年月日 | 住 所 | 兒童ト ノ續柄 | 兒童氏名 |
生年月日 | 數ヘ年 | ||||
石井きよ子 | 大正五年度 | 麻布區網代町 一番地 | 祖母 | 石井カネ | |
天保十年 十一月十日 | 七十八歳 | ||||
板 安 清 | 大正五年度 | 大正六年 十月二十六日 | 麻布區網代町 一番地 | 祖父 | 門馬みや |
弘化元年 七月十三日 | 七十三歳 | ||||
七里田鶴子 | 大正五年度 | 麻布區我善坊町 三十番地 | 祖母 | 七里喜久子 | |
嘉永二年 正月 七日 | 七十一歳 |
三 受持兒童ノ父母、祖父母等ニシテ數ヘ年七十歳以上ノ同住者ヲ高齡者名簿ニ記載スル者トス
四 高齡者名簿ノ整理ハ曆年始メ學年始メノ二回トシ其ノ他兒童ノ入退學及ビ高齡者死亡ノ場合ニ臨時之ヲ爲
ス者トス
五 當校ニ、運動會、學藝會、訓練會、展覽會等ノ催シアル每ニ右高齡者ヲ招待シ種々ノ便宜ヲ與ヘ職員及ビ
高級兒童中ノ接待掛ニ於テ努メテ優遇シ全校兒童ニ對シ實地模範ヲ示ス者トス、但シ附添人ハ場席ノ廣狹等
ヲ考ヘ便宜ノ處置ヲ爲スベシ
左ニ參考ノ爲メ當兩校兒童ト同住高齡者調査表二通ヲ添附ス
(都公文書館資料)
【付記】大正七年に、国民教育振興に基く趣旨貫徹のため麻中小学校が具体的方策として、実施する方法を東京府宛に報告したものである。
特に、体育について体操教授要目に武術の形体操を加えた。男子には剣術、女子には薙刀を尋常三年以上に課し、体育奨励の内規も定めている。
また敬老教育について、修身科の指導に加え、学校行事に積極的に、児童の祖父母、地域の高齢者を招き、接待係を児童にさせて、敬老教育の実地指導を試みたり、敬老者名簿等も常備した。