南山小学校成績・操行考査

   學業成績考査規程
第一條 學業成績ヲ考査スルニハ左ノ方法ニ依ルモノトス
    一、綴方書方圖畫手工裁縫ハ主トシテ平素ノ成績物ニヨリ之ヲ考査ス
    一、唱歌體操ハ平素授業ノ際兒童學業ノ習熟進歩ノ度ヲ考査シテ之ヲ定ム
    一、修身読方算術歷史地理理科ハ平素授業ノ際ニ於ケル口答若クハ筆答ノ成績又ハ特ニ課シタル問題
      ノ解答ニヨリ之ヲ定ム
第二條 児童ノ學業成績ヲ表ハスニハ左ノ評語ヲ用フ
    甲 (優等ナルモノ   一〇、九)
    乙 (普通ナルモノ   八、七、六)
    丙 (稍普通ナルモノ  五、四)
    丁 (劣等ナルモノ   三、二、一、〇)
第三條 各教科目ノ成績ハ每學期二回以上考査シ其通評ヲ兒童明細簿ニ記入スベシ
    但唱歌體操及裁縫ノ考査ハ每學期一回ニ止ムルコトヲ得
第四條 學年末ニ於テハ各學期間ノ學業成績ヲ參考シテ該學年間ノ成績ヲ定メ一覧表ヲ調製シテ學校長ニ差出
    スベシ
第五條 各學年ノ課程ヲ修了若クハ全教科ノ卒業ヲ認ムルニハ學年末ニ於ケル學業成績各教科目共丙以上ナル
    ヲ要ス
    但丁アルモ其兒童平素習業ノ状況ニ依リ職員會ノ詮議ヲ經テ修了若クハ卒業ト認ムルコトアルベシ
   ◯操行考査規程
第一條 各學級擔任訓導ハ平素受持兒童ノ操行ヲ査定シ學期末ニ於テ操行査定會ノ決議ヲ經テ學校長ニ報告ス
    ベシ
    但第一學年ニアリテハ第一學期末ニ於ケル報告ヲ缼クコトヲ得
第二條 操行ハ左ノ評語ヲ用ヒテ之ヲ表ハスモノス
    甲(教訓ノ趣旨ヲ守リ行爲ノ善良ナルモノ)
    乙(行爲ノ尋常ナルモノ)
    丙(教訓ノ趣旨ヲ守ラズ行爲ノ不良ナルモノ)
   附 則
第一條 行為ノ善惡ヲ判定スル標準トシテ參考スベキモノ左ノ如シ
    行為ノ善良ナルモノ(甲)      行爲ノ不良ナルモノ(丙)
     1 誠實ナルモノ           1 虚偽ナルモノ
     2 親切ナルモノ           2 狡猾ナルモノ
     3 「キマリ」ヲ守ルモノ       3 怠情ナルモノ
     4 禮儀正シキモノ          4 亂暴ナルモノ
     5 勤勉ナルモノ           5 嫉ミ深キモノ
     6 辛抱強キモノ           6 野卑ナルモノ
     7 温順ナルモノ           7 輕率ナルモノ
     8 勇氣アルモノ           8 卑屈ナルモノ
     9 沈着ナルモノ           9 其他教訓ノ趣旨ヲ守ラザルモノ
     10 快活ナルモノ
     11 其他教訓ノ趣旨ヲヨク守ルモノ
第二條 甲ト認ムルニハ甲ノ參考項目ノ全部ニ該當スルヲ要セザルモ丙ト認ムル項目ニ該當セザルヲ要ス
    乙ハ甲丙ノ參考項目ノ孰レニモ該當セザルモノ
    丙ハ丙ノ參考項目ノ一以上ニ該當シ甲ト認ムル項目ニ該當セザルヲ要ス(甲ト認ムベキ項目ニモ該當
    シ丙ト認ムベキ項目ニモ該當スルモノハ事情ニヨリ甲乙丙ノ何レカニ査定スルコトヲ得)
第三條 學校ノ操行ヲ主トシ校外ノ操行ハ出來ル丈探査シ慎重ナル態度ニテ評語上考慮ヲ加フルコトヲ要ス
第四條 先天的缼陥ニヨリ或道徳的行爲不完全ナルモ寸酌セザルヲ本體トス
   賞罰規程
第一條 兒童ノ善行ヲ奬勵シ其非行ヲ防遏シテ改過遷善ノ實ヲ擧ゲンガ爲メニ本規程ヲ設ク
第二條 賞ヲ分チテ左ノ二種トス
    一、賞詞
    一、褒狀
第三條 賞詞ハ其善行ヲ認メタル場合ニ於テ該學級ニアリテハ受持訓導全校兒童ノ面前ニアリテハ學校長之ニ
    賞詞ヲ與フルモノトス
第四條 左ノ項ニ該當スルモノハ學年末ニ於テ之ニ褒狀ヲ與フルモノトス
    一、操行佳良ニシテ學術優等ナルモノ
    二、一年間特ニ勵精セシモノ
     但半途入學者ニシテ四月中ニ入學セシモソノ入學ノ日ヨリ起算シテ全出席ノモノ
      遅刻早退ハ六回ヲ以テ一日ノ缺席ト見做ス
      一學年兒童ニ限リ五月一日ヨリ起算ス
      第二項ニ該當スルモノノ中進級セザルモノハ之ヲ賞セザルモノトス
      褒狀ハ左ノ書式ニヨル 〔略〕
第五條 左ノ項ニ該當スル兒童ニ對シテハ本校奬學基金ヨリ生ズル利子ヲ以テ之ニ賞牌ヲ授與ス
    一、操行善良ニシテ學業優等ナルモノ
    二、奇特ノ行ヒアリシモノ
    三、學業ノ進歩特ニ著シキモノ
    四、特ニ勵精セシモノ
    五、身體ノ發育顯著ナルモノ
    六、體力ノ衆ニ超ユルモノ
     但前項中第二項ノ方法ハ職員會ノ決議ヲ經テ學校長之ヲ行フモノトス
    本規定ニヨリ授與スベキ目錄ノ樣式幷ニ賞牌左ノ如シ
    〔略〕
    優等章
     一、二學期以上本校在學ノ兒童タルコト
     二、總評操行共ニ甲ナルコト
    善行章
     一學年間以上本校在學ノ兒童ニシテ特ニ永久ニ全校兒童ノ 模範トナルニ足ル善行アリシモノ
    學業進歩勵精章
     前學年末ニ於テ進級セザリシ兒童ニシテ本學年末ニ於ケル成績著シク進歩シ其級中位以上ナルモノ
    勵精章
     二ヶ年以上繼續シテ全出席ナルモノ
     但半途入學者遲刻早退及一學年兒童ニツイテハ賞罰規定第四條第二項ノ但書ニヨル
    體育奬勵章
     甲
    一、每年身體檢査後選定
    一、受持訓導候補者ヲ選出シ體操受持訓導ト合議シテ校長ノ裁決ヲ經ベシ
    一、一學級三名以内選定表彰スルコトヲ得
    一、再表彰妨ゲナシ
    一、一學年ノ兒童ハ表彰スルヲ得ズ
    一、選定標準
     1、發育槪評甲ナルコト但シ場合ニヨリ乙ニテモ可
     2、脊柱正ナルコト
     3、疾病ナキモノ但シ耵聹栓塞、扁桃腺肥大ハ差支ナシ
     4、重大ナル不具畸形ナラザルコト
     5、前年度ノ病缺十日以内ノ者ナルコト
     6、前年度ノ體操科學年成績丙ナラザル者ナルコト
     右各項ニ該當スル兒童ニツキ左記標準ニヨリ選定ス
     身體檢査ニ於ケル昨年度同年齡兒ノ身長體重ノ各平均ト本年度ノ身體檢査ニ於ケル一年年長ノ身長
     體重ノ各平均ノ各差ヲ算出シ

身長ノ例

     學級各兒ニツキ該當年齡別ニ比較シテ此ノ差以上ノ發育兒ヲ擇ミ差ノ大ナルモノヨリ選定ス
     乙、體力衆ニ超ユルモノノ選定ハ
     運動會ニ於テ競技ノ結果體力衆ニ超ユルト認メタルモノ
第六條 兒童ニシテ訓戒命令ニ背キ其他不都合ノ所爲アリタル時ハ其 輕重ニ從ヒ左ノ種類ニヨリ處罰ス
    一、譴責 二、直立 三、留置 四、停學
第七條 兒童ヲ留置ノ罰ニ處シタル場合ニハ其旨家庭ニ通知スルモノトス
    但留置ハ一時間以内トシ擔任訓導ニアラザルモノ之ヲ處罰シタルトキハ其旨擔任訓導又ハ學校長ニ通
    知スルモノトス
第八條 性行不良ニシテ他兒童ノ教育ニ妨害アリト認ムルモノハ小學校令第三十八條ニヨリ停學ヲ命ズ

(『南山小学校『校規』大一二)


 
【付記】「学制」期以降明治期前半は、生徒の試験による評価が頗る重視されたが、その弊害も指摘されるようになり明治三十三年、従来の試験を廃止の考え方から、考査という考え方に転換が図られた。赤坂・南山で考査の方法について規程されているが、学業だけでなく操行、賞罰などについても規定されていることが分かる。