学校生活の中での音響設計

  音響設計
 子どもの登校から下校までの学校生活の中で子どもの発する音の発動と自制を含め、子どもをとりまくいっさいの音を人間工学にもとづいて設計し、色彩環境とあわせ子どもの生活、学習に効果をあげようとする。
 まず、生活の合図的な意味をもつテーマ音楽のあり方にはじまり、工場・病院・デパート等で効果をあげているBGM(バックグラウンドミュージック)をとり入れ、精神安定・生活向上のためのBGMから学習効果・生活向上のBGMのあり方を追求する。
(1)テーマ音楽・BGMの採用までの経過と設計書
                         指導講師 芸大助教授 桜林 仁

 

テーマ音楽時 間曲   目作 曲 者演奏形体学年
朝の音楽8:12~8:15戴冠式(Ⅱ)モーツアルトピアノ協奏曲
ペールギュント組曲(朝)グリークオーケストラ
四季(春)ビバルディ合奏協奏曲
メヌエットパデレフスキーピアノ
パガニーニの主題によるラフマニノフピアノ協奏曲
コッペリアドリーブオーケストラ
給食の時間12:45古典(Ⅱ)プロコフィエフオーケストラ
清掃の時間1:15~1:30古典(全)プロコフィエフオーケストラ
下校の時間3:40ロラィオ(Ⅲ)コープランドオーケストラ

(2)子どもに及ぼす影響
  子どもに求めたアンケートについての回答をまとめると次のとおりである。
① 朝のテーマ音楽について
  テーマ音楽に関心をもっている
  楽しいよい気分の心情になる
  自習が活発され行動になってあらわれる
1年2年3年4年5年6年
685880414560
1009595637393
756683363151
② テーマ音楽の行動誘発について
  朝のテーマ音楽
  給食のテーマ音楽
  清掃のテーマ音楽
  下校のテーマ音楽
1年2年3年4年5年6年
756683362152
736464544576
 78424466
86665279
③ チャイム・テーマ音楽の比較
  テーマ音楽の方が好きである
1年2年3年4年5年6年
666187635565
④ 性別反応としては女子の方が男子より肯定的である。
⑤ BGMが学習に及ぼす影響について
  BGMをながす場合と、ない場合について 児童の計算力の速度と正
  確度を調べたが、この調査では特別の効果はみられなかった。

全体として学年別には1 2 3 6学年はすべての調査に過半数が肯定しているが、4、5年には否定的ムードがいくつかでている。
 この調査には倫理観が先行しているものもあり、それについては、差引いて考える必要があろう。私たちは調査に併行して、それ以上に観察と意見を重んじてたしかめるよう進めている。

(東町小学校『学校要覧』昭40)


 
【付記】 東町小学校で、学校生活の中で児童の学習効果を高めるためにバックグラウンドミュージックをとりあげ、朝・給食・清掃・下校の音楽のテーマを決めて、時間帯に全校にBGMをながし、実際に児童の反応効果を確かめながら研究をすすめたものである。