学校裁量の時間

 ○ 港南小学校
 潮風に育むゆとりの時間
 港南小のゆとりの時間は、土曜の全校でやる集会活動と月・火・金の各学年の自主活動に大別される。
 土曜日の全校集会には、七夕集会、草とり、文化祭、兄弟学級行事などの、勤労体験や情操を深める活動がある。
 そして、学年学級の自主活動には、果実の収穫祭、遊ぶ物を創ったり、計算や漢字の練習、スポーツ会といった楽しさと鍛えることを目的とした活動を用意している。
 港南地区は、大きな倉庫、団地群、高速道路、モノレール、埠頭といった巨大なコンクリートに覆われている。
 そして神社、仏閣がない、子どもの心にうるおいをと願う教職員の気持が、環境の緑化や、港南グランドの草地の活用を創り出している。
 とくに、毎月の二十七日の愛校日は、愛校心の昂揚ばかりでなく、歴史の浅い港南地区を愛する心に発展して欲しいと、期待している。
 写真(1)は「学校をよくするためにどうするか」のテーマに対して(私の考え)を発表しているところである。
 この発表から、草とり、学校の引越しの手伝い、兄弟学級の遠足(写真(2))スポーツ大会が生まれているのである。
 そのせいか、港南の子は働くことをいやがらない。そして上級生は、下級生のめんどうをよくみる。
 港南の小さな校庭に、いろいろな実のなる木が植えられている。ユスラウメ、ビワ、ブドウ、ナツミカン、イチゴ、ナシ、アンズ、ザクロ、カキ、モモ、イチヂク、ナツメ、キンカン、ウメ等……
 その木は学年が決まっていて、秋になると収穫祭をして味覚を楽しんでいる。
 
 ○ 青山小学校
一 本校の主題
  「地域を学び地域に学ぶ」
二 学習の場
 一・二年(火)第五校時
 三~六年(火)第六校時
三 学習展開
 学級単位及び学年合同
四 教材化への理由
 青山地区の環境変化は誠に著しい。次々に大きく、そして美しいビルに建て代えられていく。
 土地や建物の使用目的が変わり、人々の動き・流れが変ってきている。ここ数年で昼間人口が、めっきり多くなった。母親が勤めに出るなど、子どもの生活にも変化が強いられている。
 一方、歴史的に由緒ある場、古式ゆかしい建造物等、変化の対照として、その威厳を保持しているのがおもしろい。何かを語りかけようとしているようにも思える。
 さて、変化の著しい社会や環境にあって、どう生きたらよいか。歴史は未来に対して何を示唆しているのだろうか。地域を学び、地域から何か価値あるものを受けとってほしい。その上、地域をよく知って愛情に結び、豊かな人生への一助となるよう願っている。過去を調べ、現実をとらえて分析し、未来を夢見ることこそ、自ら学ぶ能力育成に役立つと考えた。教材としての価値づけを深く考え、高学年になるに従って、自ら追求していく体制を考慮している。
五 学習の題材例
 ア 歴史・史跡 イ 施設・公共物 ウ 地勢・気候 エ 生活・その他、に分けて題材を配列。
 一年=いちょう並木、春や秋をみつける、床地図
 二年=お店調べ、一二三丁目の地図づくり、児童館
 三年=学校の昔、坂しらべ、古い建物
 四年=石碑しらべ、地名しらべ、地図づくり
 五年=神社仏閣しらべ、伝統工芸館、レポート
 六年=地域の変遷、歴史上の人物、企業と外国、大使館や公使館
六 課 題
 学習活動の進展は、全て予定通りとはいかない。実施しつつ反省をしている段階である。真に価値ある教材を求め、研究を続けている。
 
 ○ 東町小学校
 自由活動を通して
 児童が自主性・創造性を十分生かしながら、自己実現を図れる機会と場を、本校では自由活動として、教育活動の中に位置づけ、その充実に取りくんでいる。
 自由活動では、児童個々の興味関心を大切にする中で、児童個々の追求したい主題が決定され、活動が行われるので、教科・領域を越えた総合的・全人的活動が期待でき、また発揮されている。
 まず、主題設定に際しては
1 興味・関心があり、自分なりに目標が明確なもの。
2 主題追求には、多少困難が予想されるが、体験的学習の過程で成功感や成就感の期待できるもの。
などを児童に想定させている。
 こうした設定主題を具体的内容として表わしてみると、
・詩や物語り等の創作的活動。
・国内外の地理・歴史等に関する調査的活動。
・学校等の模型作りや手芸的製作的活動。
・飼育栽培や実験観察的な活動。
・技能や耐久力の伸長をめざす体育的な活動。
等々、多種多様なものがある。
 次に実際活動の場は、学年の発達段階に応じ、三つに分けて行われている。
 一・二年は、やりたい活動を学級単位やグループごとで毎週木曜日に一時間ずつ。
 三年は学級ごとに各自の教室で、個人のテーマ追求を、毎週木曜日に一時間ずつ。
 四年以上では、学年学級の枠をはずし、校内各所を利用して、毎週火木の二時間、個人テーマの追求にあたる。
 また、三年以上の児童は、プランカードに個人テーマを記入し、計画段階で担任と相談する機会を持つ。ここで児童の能力に応じたテーマとなるよう、助言と指導が行われ無理のない計画とされる。
 さらに活動の展開にあたり、四年以上の担任と専科教諭で、組織された自活検討委が手分けして、随時助言と励ましを行い活動の充実を図っている。
 活動の節として、年四回のグループ内発表や代表による全体発表会が、活動をいっそう魅力あるものとしている。
 
 ○ 竹芝小学校
 本校は区内第一の小規模校である。児童数が少ないことは、教育活動の上で、(集団活動の場が少なくなりがちとか士気が盛り上がらない等)不利な面もあるが、(家族的で和やかだとか一人一人に行き届いた指導がしやすいなど)利点も多い。
 不利な条件を克服して、利点を最大限に生かし、創意工夫することが、教育目標の具現のために大切であると受けとめ、教職員一丸となって努めている。
 学校裁量の時間も、この点を踏まえて計画・実践している。その主な活用は、①クラブ活動②自由活動③児童会活動・学級指導④休憩・放課後等の時間増である。
 次にその主な実践を紹介する。
一 クラブ二本立て
 四年生以上は全員で五十五名である。児童の希望を生かして運動関係と文芸関係のクラブを設置すると、各クラブとも十人未満の編成になってしまう。これでは望ましい集団活動は期待出来ない。そこで、どの児童も運動・文芸と二つのクラブに所属させ、月曜(運動関係)と金曜(文芸関係)の二回クラブ活動をするようにした。
 現在、運動が四つ、文芸は五つのクラブを設けている。どのクラブも適切な人数で、親しみのある雰囲気の中にも活気のある活動をしている。
二 自由活動
 毎週木曜日六校時は「自由活動」とし、学級ごとに自主的・創造的活動や教育相談等を行っている。その内容のいくつかを紹介すると、
 郷土資料館や丸山古墳など周辺の文化財を見学する活動がある。生の資料に触れて、港区の歴史を肌で感じ、知識と共に郷土愛を深めている。
 共同制作の活動も盛んである。例えば、最近は大きなベニヤ板に学級全員で絵を描く情景が見られた。これは、運動会を盛り上げるために、学級ごとに絵を作って飾ろうという発案の実践である。
 その他、自由研究、話を聞く会、学級園の手入れ、教師と遊ぶ等々多様な活動を行う中で、豊かな人間性を培っている。(教頭・門倉昭三)

(『ひろば』昭五七)


 
【付記】昭和五十一年の教育課程審議会の答申「ゆとりあるしかも充実した学校生活が送れるようにすること」を受けた改定学習指導要領は標準授業時数の削除を行い、その生じた時間が、「自由裁量の時間」「ゆとりの時間」と通称された。各学校はこの時間を子どもの実態や学校の特性を生かし、特色ある取り組みを行った。ただし学習指導要領には「自由裁量」や「ゆとり」という言葉は使われてない。