氷川小学校保護者会

保護者懇話會
  大正元年自九月二十四日 至十月一日一學年男、女、ノ保護者懇話會ヲ開ク
   一 兒童ノ個性調
開會前一定ノ印刷物ヲ配布シ家庭ニ於ケル狀况ヲ書キ出サシメ懇話ノ資料トナス
 
   二 奥田校長ノ懇話大要
(一) 教授ノ參觀、懇話ノ必要ニ就テ
(二) 學校ト家庭ト連絡ノ必要ニ就テ
(三) 母ノ一念
 西諺ニ曰ク揺籃ヲ動カス母ノ手ハ世界ヲ動カスト又佛帝「ナポレオン」ハ敵人ノ婦人ヲ見テ戰ノ勝敗ヲトスト是レ皆婦人ノ勢力ガ偉大ナルヲ云ヒタルモノナリ豈ニ獨リ西洋ノミナランヤ東洋ニ於テモ其例ニ乏シカラズ聞ク東京高等師範學校附屬中學校及高等女學校入學生ニ於テ母ノ一念顯著ナルモノアリト、一中學生ハ獨リ子ニシテ父ハ既ニ死シ母ノ慈育ニ依リ人トナリ入學試驗ニ應ジタリ然ルニ性來學術ニ優レ居ラザル爲メ算術ノ試問ニ對シ如何トモ解答シ難シ茫然自失ス時ニ耳邊ニ母ノ聲アリ「ツツカリ」ナサイト〔略〕
(四) 子ヲ持テ知ル親ノ恩ニ就テ
(五) 子寳ノ說明例話
(六) 誠實ト質素ニ就テ
(七) 尊師幷習慣ニ就テ
(八) 人傑ハ貧賤ヨリ出ヅルニ就テ
 
   三 古賀學校醫ノ談話
開會中九月二十四日二十六日二十七日十月一日ノ四日間出席衞生上ノ懇話ヲナシ又保護者ノ質問ニ答辯ス
 
   四 擔任教員ト保護者トノ懇話
相互腹藏ナク懇話スル樣精々指導シ一人每ニ意見ヲ交換シ遺憾ナク談話シタリ
    保護者ノ懇話槪活表
  家庭別
種別
家庭ノ善キ方家庭ノ惡シキ方
言   葉惡クナリマシタ善クナリマシタ
行   儀
小 遣 錢與ヘズ與フ多キハ一日ニ二、三回
朋   友近隣ニ惡友アリ 
祖母アル者甘ヘテ困ル 
學 用 品 無益ニナシテ困ル
心   情怯懦剛情
末   子我儘我儘
朝   起早起ニナリマシタ早起ニナリマシタ
命   令 服從セズ
教   師能ク守ル能ク守ル

{附記}
保護者ノ中ニハ多少虚言アリ全然信ジ難キモノアリ
踊ノ爲メニ體操科ヲ缺キタキ希望ヲ述ベタルモノアリ

(氷川小学校『校務年鑑』大二)


 
【付記】保護者会は明治の三十年代頃から設立されているが、初期の活動として、会員より会費を徴収し、鉛筆、筆、紙類の学用品を児童に配布した。さらに運動場の改善、運動器具の購入などに尽力するなど、後援会的活動も行っている。