本會記事
一、大正八年四月一日白金尋常小學校新入兒童入學式ニ梅園會長代理トシテ近山幹事臨場新入兒童保護者一同ニ挨拶ヲナス
一、四月十一日梅園會長ヨリ評議員久野工藤田三郎兩氏ヲ本會幹事ニ推薦ス
一、四月十九日午後七時ヨリ幹事會ヲ開ク梅園會長、近岡、近山、松本、吉島、久野、藤田ノ六幹事出席五月
二十五日總會開催ノ件會費預金ノ一部ヲ中加銀行ニ移ス件等ヲ協議シ午後九時閉會
一、同年五月二十五日午後二時ヨリ白金尋常小學校雨中體操場ニ於テ總會ヲ閣ク梅園會長増井、片岡、近山、
吉島、松本、久野、藤田ノ七幹事岡幹事代理池田十三郎、田坂友吉、山田英太郎、酒井良明、土倉龍次郎、
八十島樹次郎、半田庸太郎、河村牧司、杉山虎雄、遠山芳三、美野田琢磨、恩田銅吉、藤堂大藏、小山田
仲之丞、關根要八、岩永祐吉、十六評議員及ビ守屋善兵衞田中一貞二評議員代理ヲ始メ出席者總數二百八
十六名梅園會長開會ノ辭ヲ述ベ増井幹事大正七年度會計報告ヲナシ梅園會長ヨリ更ニ本會規約ノ改正ニツ
キ審議セシニ佐藤忠氏ノ發議ニヨリ遂條審議ヲ省略シ滿場一致ヲ以テ原案ヲ可決シ次ニ梅園會長ヨリ會長
改撰ノ議諮リシニ池内伊右衞門氏ノ提議ニヨリ梅園會長ニ於テ適任者ヲ推薦アリタキ件ヲ滿場ニ問ヒシニ
一同會長指名ニ一任センコトヲ卽決セラレタルヲ以テ梅園會長ハ幹事松本源太郎氏ヲ後任トシテ推薦セラ
レタリ滿場拍手ヲ以テ新會長ヲ迎ヘ茲ニ規約改正ノ結果トシテ現保護者タル松本新會長就任ノ挨拶アリ次
ニ八戸道雄氏ヨリ梅園舊會長ニ向ツテ感謝ノ意ヲ表スベキ方法ヲ提議セシニ何レモ賛意ヲ表シ宜シク幹事
及ビ評議員ニ於テ取計ラヒアリタキ件ヲ議決シ梅園舊會長ヨリ創立當初ヨリ現况ノ盛大ヲ致セル經過報告
アリ、先ヅ閉會セシニ續テ駒木根學校長ヨリ梅園舊會長多年ノ功績學藝會ノ趣旨掲示諸表ノ說明體育奨勵
ト學校家庭ノ連絡及ビ自發復習帳給與ノ趣旨等ニ就キ述ブルトコロアリテ各學年、各學科ニワタレル十數
回ノ兒童學藝演習ノ發表アリ別室ニハ綴方書方圖畫手工裁縫書取算術等ノ成績及給與品貸與品ノ展覽アリ
加フルニ職員ノ調査成レル保護者職業別、兒童貯金調、通學距離實測調、每朝兒童行事調、兒童轉校回數
調、兒童現住所町名調、改築以來各年度兒童總數増加表、中學校高等女學校入學者累年比較表ノ統計掲示
アリ家庭教育上ノ稗益ヲ與ヘ午後五時退散
一、同年六月二日午後七時ヨリ幹事會ヲ開ク松本會長、片岡、吉島、久野、近山四幹事梅園舊會長坂上舊幹事
ニ感謝狀贈呈並ニ顧問推増ノ件及評議員會開催ニ關スル協議ヲナシ午後九時閉會
一、六月七日松本會長ヨリ舊幹事福田回三郎氏ヘ感謝狀ヲ贈呈ス
一、六月十四日午後二時ヨリ白金尋常小學校内ニ於テ評議員會ヲ開ク松本會長、吉嶋、藤田兩幹事小山田仲之
亟、山田英太郎、衣笠光遠、關根要八四評議員出席梅園舊會長坂上舊幹事ニ感謝狀贈呈及顧問推薦ノ件ヲ
議決シ午後四時閉會
一、六月二十四日梅園舊會長坂上舊幹事ニ松本會長ヨリ本會規約第十一條ニヨリ六月十四日評議員會ノ議決ヲ
經本會顧問ニ推薦スナル文意ノ顧問推薦狀ヲ發送ス
一、同年七月十二日午後七時ヨリ幹事會ヲ開ク松本會長藤田、片岡、吉島、増井、近山五幹事出席梅園舊會長
坂上舊幹事ニ感謝狀贈呈及基金ヲ以テ公債購入其他備品購入等ノ協議ヲナシ午後九時閉會
〔略〕
(『白金小学校児童保護者会報告書』大八)
學年別開催の保護者懇話會
作年度も十一月の末に開催した保護者懇話會を本年度は大正九年十一月二十四日に一二學年九組の保護者懇話會を開き百六十九名の保護者の出席がありました。一時間の實地授業の參觀があつた駒木根學校長の挨拶があり、正味一時間半の擔任訓導と出席保護者との間に懇談が行はれたわけであつたが、二部教授の午後の一學年男女三組の保護者が入り代つて參觀をしたのであるが、擔任は一人で二組の保護者に接し午前九時から午後三時半まで引續きの懇話會は隨分御苦勞でありました。續いて十一月二十五日に三四學年八組の保護者懇話會を開き百三十七名の保護者が出席をいたしました。なほ十一月二十六日には五六學年八組の保護者懇話會があつて百四名の保護者が出席をいたしました。昨年の保護者懇話會には家庭に於ける實行要項の記入を要求したのであるが、本年度は一般保護者に兒童の善行資料と特に躾方につき注意せる點等の照會用紙を保護者に配附し置き、懇話會開催前に右の回答を兒童に知れざるやう封書にて擔任教員に提出せしめ、かくして得た資料に基づいて懇話會を催したのであるが、實は千五百の兒童の保護者のうちには家庭教育上模範的善行と良習資料を得る豫定であつたが、殘らず調べて見た結果は甚だ豫期に反して理想的の資料を發見し得ざりし點が頗る遺憾であつたが、家庭教育に相當注意を拂ひ居る痕跡を窺ひ得て力强き感を起しました。今各級友に共通せる躾方の美點と見るべき事項を擧げて見ると、神佛及祖先に禮拜の慣習、兩陛下の御冩眞に每朝禮拜をなさしむるあり、教育勅語及戌申詔書の奉讀あり、獨立の精神を養成する爲自分のことは自分で行はしむる責任觀念の練磨あり、又一昨年流感の影響より來れる身體擁護の方法と見るべき起床、外出、歸家の時含嗽、顔手足を洗ふ習慣養成あり、其他深呼吸、冷水摩擦、乾布摩擦、鐵亞鈴、家庭體操、戸外運動、薄着の勵行、八時間の睡眠、飮食物の注意として腹八分の習慣養成の如き、其他經濟的方面と見なすべきものに就ては金錢を使用せしめず現品給與の方法をとれるが如き、粗衣粗食に甘んずる習慣養成の如き、郊外散策に握飯の辯當を實行せるあり、家計簿の記帳を日常の慣習となさしむる等幾多の善行資料を得たのであるが、就中特に躾方につき注意せる一例を擧ぐれば、マツチの空箱に紅白の紙を張り置き、善行ある每に白の軸木を入れ非行ある每に紅の軸木を入れさせ、かくして善行を奬勵し非行を矯正せる方法を取りたるが如きは、千餘の回答中慥かに示範的善導の方法と見て遜色なきことゝと思ひました。又同一失敗を二度繰りかへさゞる習慣の養成とか、一日一善の勵行とか其他自發的の奬勵と見るべきは自ら時間割を作製して復習せるが如き、自ら貯金臺紙に貼附して樂しむ習慣持續の如き、召使を家人と見同情して其勞を慰むるが如き實例に接したることも、具體的の修身資料となつたのであるが擔任教員に對する注文は無敷であつて一々列擧すること煩に堪えん程であるが就中各學年の要求の比較的多いものを擧げて見ると、尊族に對する言葉づかひ、應對の粗略なること、父母長上に反抗し或は口答へすること、又女兒の亂暴に過ぐること、不規律の習慣を打破したきこと等であつて、復習に就ては上級に至るに從ひ遊ぶことが多くなりて父母に心配をかける等の注文があり、雜誌の耽讀とか種々の希望があつたのであるが、要するに今回の回答は一々具體的の實例が各擔任の手許に提出されたわけであるから充分兒童の個人指導又は惡癖矯正の上に多大の便利を得て、一は以て保護者懇話會をして意義あるものたらしめ、一方には平素以上の資料を兒童訓練の上に利用することを得て、昨年度より更らに進んだ方法を考究した保護者懇話會でありました。
(『白金小学校校報』大八)