ア 期間
昭和四十二年九月~四十三年三月
イ 対象
生徒ユネスコ委員(各クラス男女各一名ていどで編成)を中核とする全校生徒
ウ 方法(組織)
(ア) 教師のユネスコ委員会を組織し、これを研究の推進母体とする。
(イ) 生徒ユネスコ委員会を、例えばアメリカ班などに分け、仕事を分担させる。
(ウ) 教師全員分担して、生徒ユネスコ委員会、各班の顧問となる。
エ 内容と日程の概略
(ア) 教師の研修と共通理解を深め、指導態勢を整える。教師のユネスコ委員会を組織する。(六月~八月)
(イ) 他国に関する興味関心度調査とプリテストの実施(九月上~中旬)
(ウ) ユネスコ協同学校の趣旨を全校生徒に徹底する。(九月下旬)
(エ) 生徒ユネスコ委員会を組織する。(十月上旬)
(オ) 生徒ユネスコ委員会を、例えばアメリカ班等の数班に分け、それぞれに顧問教師を置く。(十月中旬)
(カ) 生徒ユネスコ委員会、各班は、資料の収集・整理・啓蒙等の諸活動を行なう。(十月中旬~三月)
(キ) ポストテストの実施。(十二月中旬)
○研究対象国六ヵ国の選出
他国に関する興味関心度調査の集計は次のようである(十位までを示す。表中の数字は順位を示す。)
全学年 |
国 名 | 自 然 | 歴 史 | 産業経済 | 文 化 | 政 治 | その他 | |
1 | スイス | 1 | 3 | 4 | 5 | 2 | 6 |
2 | アメリカ合衆国 | 3 | 4 | 2 | 2 | 1 | 5 |
3 | ベトナム | 6 | 2 | 5 | 4 | 1 | 3 |
4 | イギリス | 4 | 2 | 2 | 1 | 3 | 5 |
5 | フランス | 2 | 3 | 4 | 1 | 6 | 5 |
6 | ソ 連 | 2 | 6 | 3 | 4 | 1 | 5 |
7 | オーストラリア | 1 | 4 | 2 | 3 | 5 | 6 |
8 | ギリシア | 3 | 1 | 6 | 2 | 4 | 5 |
9 | 中 共 | 5 | 3 | 3 | 2 | 1 | 4 |
10 | アラブ連合 | 3 | 1 | 5 | 2 | 4 | 6 |
以上の集計を参考にして研究対象国六つを選ぶことにした。一クラスの人員を六つに分けると六、七名ずつとなり、研究班として適当な人員だからである。
この調査でスイスが最も高いのは、国際平和といえばすぐに永世中立国スイスを連想する生徒の既成観念からきているように思われる。これに続くものはいわゆる大国、それから時事問題でにぎやかな国、その名が何か文化や平和の響きを感じさせる国々ということが言えそうである。それにひきかえ、アジア諸国や日本の隣国への関心度は低いのである。これは、われわれの日常生活において接する情報の多少から当然の帰結ともいえよう。しかし国際協力を考える場合、同地域の国々や隣国を無視することはできないであろう。ベトナムやソ連に生徒の関心度が集まるのは、よくうなずけるところである。またこれらは国際平和を考える上で先ず頭に浮かんでくる国々でもある。しかし、今ここで、これらの国々のはらむ複雑な政治経済問題にあえて生徒を駆ることには多くの問題がありそうである。また正確な資料を得るということにも難点があろう。そこで、この集計では第一三位のアジアの大国インドと、第二四位の隣国中華民国(台湾)を加え、第二位のベトナムと第六位のソ連は、高位ではあったが除くこととし、結局、スイス、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、インド、中華民国の六ヵ国を研究対象国として選ぶことにしたのである。
○研究テーマ・研究内容・発表方法
1 スイス |
学級 | テ ー マ | 研 究 内 容 | 発 表 方 法 |
一A | 地形と気候 | ○地形・気候の特色 ○地名(山・川・湖) | 写真・絵・説明(模造紙二枚) |
一B | 観 光 | ○一年間の観光収入 ○交通機関 ○観光地 | 模造紙二枚 |
一C | 酩 農 | ○牛馬羊の分布 ○バター・チーズによる年間収入 ○酪農品を扱っているメーカー ○牧草地面積 | 模造紙二枚 模造紙三枚 |
二A | 永世中立 | ○ハプスブルグ家 ○国際的立場 ○独立とその後 | 模造紙三枚 |
二B | 独立の歴史 | 独立までの過程 | 年表を主として重要事項の説明、写真・地図模造紙二枚 |
二C | 歴史上の重要人物 | 年表と、人物の説明 | 年表と説明、模造紙二枚 |
三A | 貿 易 | 相手国と貿易品目・量 | 模造紙四枚 |
三B | 政治のしくみ | 直接民主制 | 模造紙四枚 |
三C | 国内問題 | 人種と言語 | 模造紙二枚 |
2 アメリカ合衆国 |
学級 | テ ー マ | 研 究 内 容 | 発 表 方 法 |
一A | 五大湖付近の工業 | ○工業地帯の交通 ○工業地帯と都市 ○製品の種類と産額 ○発達の理由 | 模造紙四枚のはりあわせ |
一B | 気候と農牧業 | ○農業人口 ○地域別産業・産物 ○TVAと土地利用 | 模造紙三枚とグラフ用紙 |
一C | 交 通 | ○ニューヨークの交通 ○鉄道 ○道路 ○航空路 | 模造紙三枚とノート一冊 |
二A | 独立戦争 | ○原因と経過 ○結果・影響 | 模造紙二枚とノート一冊 |
二B | ニューヨークの近代史 | ○歴史 ○文化 ○交通 | ニューヨークの地図と模造紙二枚 |
二C | アメリカ近代史 | 第一次大戦から現在までの主な出来事 人物・文化 | 年表の作成 |
三A | 歴代大統領 | 歴代の主な大統領とその業績 | スクラップブック一冊 |
三B | 貿 易 | 輸出入額・製品および他国との比較 | 模造紙二枚と方眼紙 |
三C | 教育制度 | 中等学校の制度と日本との比較 | 模造紙二枚 |
3 中華民国 |
学級 | テ ー マ | 研 究 内 容 | 発 表 方 法 |
一A | 自然と農業 | ○自然、地形、気候の特色 ○農産物の輸出入と対日貿易 | 模造紙一枚と方眼紙写真 |
一B | 観 光 | 名勝地と都市(龍山、碧渾、宜蘭、北投温水、陽明山、太魯閣、明渾、清澄湖、台北、台中、高尾、台南) | 模造紙三枚(写真、絵はがき、説明) |
一C | 位置と貿易 | ○中華民国の位置と貿易の現況 ○対日貿易 | 模造紙二枚と方眼紙 |
二A | 教育、文化 | ○教育(幼稚園、初等教育、高等教育、大学、海外留学生、文盲率) ○文化に貢献した人々(渾成功、蔣介石、孫文) | 模造紙三枚に要約、方眼紙 |
二B | 辛亥革命と中華民国の成立 | ○革命当時の中国の動き ○辛亥革命、三民主義 ○中国維新政府 ○対華二一ヵ条の要求 | 模造紙三枚に要約 |
二C | 高 砂 族 | ○高砂族とは何か ○高砂族の種族と居住地 ○人口 ○体質、言語 ○対日反抗と対日協力 | 写真、新聞の切抜き 模造紙二枚 |
三A | 貿易と現在の経済 | ○日本統治時代の対日貿易 ○戦後の貿易 ○外資導入 ○国民所得 ○外国からの援助 | 写真、絵はがき 模造紙二枚 方眼紙 |
三B | 政治機構 | ○政府の政治機構図 ○政務機関(国民大会、立法院、考試院、司法院、行政院) | 図表、機構図と説明 |
三C | 対日関係 | ○対日講話条約の成立について ○対日貿易に対する中共、国府の態度 ○国府、中共の対立 ○中華民国の政治的立場 |
(赤坂中学校資料 昭四二)
【付記】昭和四十二年度ユネスコ協同学校の指定を受け、国際理解と国際協力のための教育研究をする。その報告書よりの抜粋である。