中学校学区別生活指導協議会

地域ぐるみの非行防止対策をどう進めるか
   ―第一回中学校学区別非行対策部会開かれる―
 戦後第三のピークと言われる少年非行。中でも低年令化・粗暴化が進んでいることが大きな社会問題となっている。こうした傾向への対策を協議するため、七月十三日(月)、第一回中学校学区別非行対策部会が中学校十校を会場として開催された。(青山中学区は学校行事の関係で十四日に開催)この会は各中学校単位に、PTA、警察、地域団体等と小中学校とが相互に情報交換を行い、子どもの実態や問題点を確認し、学校と家庭、地域、関係機関が一体となって非行防止対策を話し合うもので、小中学校校長、生活指導主任のほかPTAからは会長、校外生活部長、地域から町会長、関係機関や関係団体からは警察署少年関係係官、青少年委員、保護司、児童委員、婦人会代表等、全会場で二九五名にのぼる多数が出席し、教育委員会からも、教育委員長、教育委員、教育長、次長、指導室と社会教育課の関係者等が各会場に参加した。
 話し合いの内容は、学校における児童・生徒の生活指導上の問題点と、学校・警察・家庭・地域間の情報交換のほか、小中学校連携の問題点と今後のあり方、家庭教育の問題点と家庭に期待すること、地域社会の問題点と地域に期待すること、学校と関係機関との連携のあり方、地域としての夏休み対策等の中から各会場ごとにテーマを選択して行われた。
 「始めての集まりでしたが、全員が積極的に発言し、情報交換や意思の疎通をはかることができた。ただ具体策に対する追求が、時間の関係等でやや不足気味であったような気がする。この次はもっとテーマをしぼって会議を進める必要があるだろう。」(D中学校生活指導主任)
 地域の特性の違いや小中学校で抱えている問題が異なるため、話し合われた内容は必ずしも共通するものではないが、その中から幾つかを列挙してみると次のようである。
 
一 問題行動
 (1)不良行為の中では、深夜はいかい、喫煙がトップである。夜おそく、「友だちに勉強を教わりに行く」
  という口実を信じて安易に子どもを出す親に問題がある。
 (2)小学校でも、階上から下の人に水や物を落したり、非常ベルをならしたり、民家に向ってわざと石を投
  げたり、万引きなどの事件が起きている。
 (3)女の子の言葉づかいがひどい、「かえるべえ、そうか、かえるか」と言っているので注意したら「おじ
  さん、すみませんでございました」と茶化した。
 (4)昨年と比較して、悪質化、広域化、暴力化している。非行は中学生になって始まるのではない。幼・小
  時代から厳しく指導してほしい。
 
二 学校に対して
 (1)子どもの不正に対して、親も教師もおこらない。もっとしっかりしてほしい。現象だけでなく、どうし
  てそのようなことが行われたのか原因を追求していってほしい。
 (2)言葉づかい、差別的言動、ボス的存在等を注意し、生命の大切さの指導を十分にしてほしい。
 
三 家庭に対して
 (1)母親がパートに出てしまい、小さい時からテレビが子育てをしている。テレビの悪影響を親は考える必
  要がある。
 (2)共働きが多いが、日中、親が働いている時間帯に子どもは盛り場で遊んでいる。親はそれを知らない。
  親も教師も子どものことをよく知っているようで知らない。だから子どもに対して甘くなる。
 (3)親が買物にいく時、ゲームセンターで買い物がすむまで待っているようにと、母親がお金を置いていっ
  たケースがある。母親教育もしなくてはならない。
 
四 地域に対して
 (1)地域の住民のつながりを育てようといろいろ行事を計画するが、参加率がわるい。道路一つちがったら
  学校がちがう。同じ地域の住民でありながら学校がちがうというだけで地域のまとまりがこわれてしまう。
 (2)三校(小中)のPTA校外委員会が提携して一声運動を進めることになったが、限られた委員だけの運動に留
  まって効果がうすい。一声運動の輪を広げる具体策がむずかしい。
 
五 地域ぐるみの対策
 (1)家庭と協力して、基本的生活習慣を身につけさせるようにしたり、たまり場になりやすい場所をリスト
  アップして、小中合同の夜間パトロールをしていきたい。

(『ひろば』昭和五七・九)


 
   第二回中学校学区別非行対策部会
 一月下旬、昭和56年度の第二回中学校学区別非行対策部会が、各中学校で開催された。
 一月二十六日に開催された港南中の部会では、学校、PTA、警察とが情報交換を行った後、〝地域の子どもの特徴と指導上の留意点について〟をテーマに、協議をした。このテーマは、更に、(1)学校において日々指導していくなかで、学習面、生活面についての問題点、(2)他の地域の子どもとくらべて優れていること、(3)家庭に協力してほしいこと、(4)地域に望むこと、(5)小学校から指導を継続させていきたいこと、の五項目に分けられ、芝浦小、港南小、港南中からそれぞれについて問題提起があった。
 かなり突込んだ意見交換が行われたが、港南中の大越先生は、「自分たちは教育者なのだ、教師としてもっともっと力をつけなければならない」と力強い発言を。
 この部会に出席した稲葉教育長は、最後に、「学校、家庭、地域がお互いの交流をはかり、教育の在り様について論議し、どの子供も自分たちの子だと考え、育てていってほしい」旨、挨拶をした。

(『ひろば』 昭和五七・三)


 
昭和六十三年度中学校学区別生活指導協議会開催される
 一、はじめに
 中学校学区別生活指導協議会は「中学校区の幼児・児童・生徒の生活指導上の諸問題について、学校と地域・関係諸機関とで情報交換を行って問題点を確認し合い、その施策を協議する。」という目的があります。この目的に沿って、昭和63年度中学校学区別生活指導協議会が十一会場に分かれて、開催されました。
 
 二、各学校区本年度テーマ
  六月二十三日(木)
御成門中…変りゆく地域の子どもの生活について
港南中……児童・生徒の実態と非行の防止対策について
城南中……学校と地域の協力による子どもの健全育成について
高陵中……子ども達の生活指導上の問題について
  六月二十七日(月)
芝浜中……小・中学校と地域との連携について
港 中……豊かな人間性を育てる環境教育
高松中……学校内外の児童・生徒の状況について
青山中……学校・家庭における児童・生徒の健全育成について
  六月三十日(木)
朝日中……小・中学校と地域団体との連携について
三河台中…家庭と子供について
赤坂中……きまり・校則について(地域の連携を図る)
 テーマの特色は「学校と地域・家庭との連携によって、非行防止・生活指導上の問題解決に資する。きまり・校則の見直しにおいても連携を図る。」とまとめられ、「地域との連携」が色濃く打ち出されました。
 
 三、協議会の内容
 各学校区20~30名程の方が出席され、○協議会長のあいさつ ○区教委関係者あいさつ○出席者自己紹介 ○情報交換・協議 ○まとめ(閉会のあいさつ)という次第で進行しました。
 ①情報交換の内容
 ○小・中学校から
 小学校は基本的生活習慣の育成に力を入れている。中学校は発達段階に応じた指導を行っている。一部には指導に困難を感じる事もある。小・中学校ともに価値観の多様化で、家庭との連携がとりにくい。各校において、きまり校則の見直しを進めている等が報告されました。
 ○地域・保護司等から
 区内の急激な都市化は、子どもを見守りにくい状況を生み出している。深夜スーパー、ゲーム・センター、ビル陰等でたむろし、初期非行の実態もあること。この子たちにどう声をかけ、どう指導していくか難しい点がある。地域での行事紹介、これらの諸行事に中学生の参加が少ない等の悩み。反対に、声をかけることで、中学生の行動を改めさせた例も発表されました。
 ○警察から
 青少年非行は第二のピークの昭和56年以降、急減する傾向か見られない。都内での青少年補導の事例。都市化、国際化によって発生している犯罪事例。補導された子の家庭との連携がとりにくい。等の情報提供がありました。
 ② 施策の協議
 多くの学校区では情報交換の中で、施策について触れられました。時間の制約等もあって、明快な施策とまではいきませんでした。しかし、情報交換の中で、学校・家庭・地域、それに関係諸機関が連携をとり合うことの大切さが再確認されました。
 
 四、まとめ
 かつて、子どもは「地域の宝」として、時には温かく、時には厳しく育まれました。「隣りは何をする人ぞ」の意識を変えていく必要に迫られています。ある学校区では、毎朝、地域の清掃を続ける人々の姿が登校する生徒に好ましい影響を与えているとの報告があった事を添えて、まとめといたします。

(『ひろば』昭六三・七)


 
【付記】昭和五十七年度に発足した中学校学区別非行対策部会は、昭和六十二年度より中学校学区別生活指導協議会と名称を変えた。