(1) 研究課題 |
年度 | 中心課題 | 中学校部会課題 |
平成 元年度 | 児童・生徒の健全育成を目指す生活指導の充実 | 区内中学生の問題行動とその考察 |
二年度 | 生徒理解を深め問題行動を未然に防ぐ指導体制の確立 | |
三年度 | 問題行動を未然に防ぎ、児童・生徒にとって魅力ある学校生活を築く指導体制の確立 | |
四年度 | 問題行動を未然に防ぎ、児童・生徒にとって魅力ある学校生活を築く指導体制の確立 ―外部諸機関・地域との連携の進め方― | |
五年度 六年度 | 登校拒否生徒にかかわる指導体制の確立 ―学校が心の居場所になっているか― |
(2) 平成六年度実践事例
A 「生徒と教師がかかわりをもつための工夫」
本校では登校拒否生徒が生まれることを未然に防ぐための工夫として、一学期と二学期(今年度は六月と
十一月)に各十日程度、四十五分短縮授業にして生み出した時間を利用し、教育相談期間を設けている。こ
の教育相談は各担任がクラスの全生徒を対象にして行う個人面談であり、次のような良い点があると考えら
れる。
(1) 非行の防止
この教育相談を開始する前に、各教科担当から一人一人の生徒の授業中の様子や、部活動・クラブ活動
の顧問から課外活動での様子など、担任の見えないところでの生徒の情報を集め、生徒の行動を多面的に
把握することにより、非行が原因でおこる登校拒否を未然に防ぐことに役立てている。
(2) いじめの把握
この教育相談を開始する前に、いじめに関する調査を行い、いじめを早い段階で把握し、いじめによる
登校拒否を未然に防ぐことに役立てている。
(3) 生徒の個人的な悩みの解消
この教育相談を開始する前に、学校生活や家庭生活における調査を行い、生徒の学習面・生活面におけ
る悩みを把握し、個人的な悩みによる登校拒否を未然に防ぐことに役立てている。
上記以外にも多くの利点が考えられるが、なによりも、教育相談時点で問題があるなしにかかわらず、すべての生徒と面談することによって、普段教師に対して積極的なかかわりをもちたがらない生徒、いわゆる「目立たない生徒」とも話すことができて、表に出にくい問題や登校拒否の原因を早く察知することができ、実際に問題になることを未然に防ぐことができている。
また、この教育相談以外でも、毎日の生活のなかで実践されていることとして、一日の反省や翌日の教科連絡を書かせるためのノートに、生徒の個人的な悩みや担任教師への相談事を書かせて、毎日担任がそれを点検し、必要に応じて悩みに対するコメントや質問に対する返事を書き、返却するようにしている。
いずれにしても、上記の実践に共通することは、限られた時間のなかで、できるだけ多くの生徒とコミュニケーションを図る機会をつくろうとしていることである。面接を行うにしても文章で対話するにしても、教師側は生徒が相談に来るのを待つのではなく、能動的に教師から生徒へ歩み寄り、膝を折って視線を合わせて生徒を理解することで、個々の悩みや問題もいも早く察知することができ、登校拒否やその他の問題行動も未然に防ぐことができるのではないかと考えている。
B 「生徒の心の動きをくみ取る指導」
(1) 日常の指導
①教育相談カードを各教室に置き、何か相談したいことがあれば、そのカードに記入し、職員室前のポス
トに入れる。(全校生徒対象)
②個人面談を、三年生対象に、六~七月、各クラス担任が実施した。
(生活上の悩み、勉強の仕方、将来について、夏休みの過ごし方など)
③保健室において、治療のかたわら、精神的な悩みに関する相談がなされ、各クラス担任と連携をとると
ともに、時に応じて、相談にのることができる教員が協力する。
④昼休みの教室巡回を心掛け、生徒の休み時間の過ごし方や人間関係などを把握する。
一人でぽつんとしている生徒などの実態がわかることがある。
様々な形で、かつ、自然に生徒と触れ合う機会となる。
⑤登校拒否生徒宅を定期的に訪問し、学校生活の様子を伝えたり、生活状況を把握しながら、再登校の
きっかけとなるよう刺激を与えたり、勇気付けたりする。
(2) 考察
①ただ教室相談カードを置くだけでは、なかなか効果は期待できず、効果を上げるには、その下地をつく
る必要がある。例えば、ある時期に全校で一斉に教育相談を実施するのもよいと考えられる。
②面談を設定すると、普段相談しづらいことなどでも、比較的スムースに出しやすい。
③保健室での相談は、担任に相談しづらいことでも、心を開いて話し易いので有効である。
④普段から生徒とあらゆる場面で接触をもつことが大切で、何気ない会話の中から生活の様子をくみ取る
ことができたり、また、不自然な行動や大人の前で変に繕った行動などに気付くこともある。生徒たち
には、大人にはわからない、自分たちだけの子供社会が存在しているが、そんな中から、いじめや仲間
はずれの兆候が発見されれば、生徒指導に大いに役立つことになる。
(3) まとめ
学校における教育活動をスムーズに進めるには、生徒一人一人の生活状況を把握するとともに、平素より
信頼関係を築いておくことが大切であり、それが、とりもなおさず、登校拒否生徒を減少させることにつな
がると考えている。
(『港区学校間生活指導連絡協議会紀要』平成元~六)
【付記】港区学校間生活指導連絡協議会は各校の生活指導主任によって構成され、児童・生徒の発達課題や心情・能力・特性等について研究協議し、区立小・中学校の生活指導の充実を図ることを目的として発足したものである。