笄小学校促進学級の設置

   吾校の促進學級ノ豫定
・學級編制  二年生ヨリ十二名、三年生ヨリ八名、計二十名
・擔任訓導  岡本嘉之助
・教室    從來ノ應接室ヲ用フ
・豫算    訓導給 一人分平均額
       住宅料  仝 月額四圓
       備品費  百五拾參圓四拾銭
       消耗品費 壹百圓
・學級ノ名稱 促進學級
・促進學級擔任者講習  九月十一日ヨリ林町小學校ニ於テ行ハル校長及岡本訓導出席ス
・促進學級ニ對スル豫算 右促進學級ヲ設クルニツキ其經費トシテ本校備品費及消耗品費ニ追加ノ旨區ノ通知
            アリタリ
・學級兒童ノ選擇
  學級兒童ノ選擇ハ學力考査、精神検査、身體檢査ノ三ヲ行ヒソレラノ成績ヲ考慮シテ決定スルコトトセリ
  第一、學力考査 大正十一年九月下旬施行
  算術ニ於イテハ二學年ニハ一學年ノ二學期、三學期、二學年ノ二學年ノ一學期ノ三期ニ分カチ各期ヨリ形
  式算ハ十題應用問題五題計四十五題ヲ課シ、形式算ハ一題一點應用問題ハ二點滿點ヲ六十點トシテ課シ、
  三學年ニハ二學年ノ二學期、三學期、三學年ノ一學期ノ三期ニ分チ各期ノ提出題數及ビ採點法ハ二學年ト
  仝一ニセリ
  讀方ニ於テハ二學年ニハ算術ト仝ジク三期ニ分チ各期ニ於テ書キ取九、漢字讀方八、解釋三、計六十題ヲ
  課シ各題ニ一點宛ヲ採點セリ 三學年ニ於テハ算術ト仝ジク三期ニ分チ各期ニ於テ書取リ八、漢字一、讀
  方八、解釋四、計六十題ヲ課シ各題ニ一點宛ノ採點セリ
  考査問題別紙ノ通リ  〔略〕
  其結果左ノ兒童ヲ學級兒童ノ候補者トス  〔略〕
 
促進學級編制ニツキテ
一、明十四日ヨリ促進學級ヲ編制致シマス
一、促進學級児童ハ別紙ノ通リデス
一、兒童ハ十三日ヲ最後トシ普通學級ノ籍ヨリ御除キ下サレタシ
一、明細簿・學籍簿ハ促進學級擔任ニ御渡シ下サレタシ十三日晝ノ時間ニ
一、促進學級ノ兒童ハ十四日ニハ全部午前八時迄ニ出校スルヤウ御申付下サレタシ
一、十四日ニハ齒科ノ身體檢査コレアルニツキ身體ヲ清潔ニシテ殊ニ口腔ヲ清潔ニスルヤウ御申付ケ下サレタシ
一、左ノ學科ハ元ノ學年ニ返シテ御教授ヲ願度考ニ付其可能不可能ヲ關係者間ニテ御打合セ下サレタシ
  三學年  唱歌  體操  圖畫  手工
  二學年  唱歌  大正  修身
  關係學年擔任者
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拜啓 秋冷漸く加り候所益々御清祥奉慶賀候 陳者御子樣    殿
促進學級編入の儀につき小生より御話申上度儀有之候につき來る十月十九日午前九時當校に御光來下され度く待上候
 大正十一年十月十八日
                       東京市笄尋常小學校長 小田島 省 三
保護者殿
 
秋冷漸く加り候所益々御清祥慶賀候 陳者御子樣    殿御教養の儀につき小生直接御相談申上度義有之候につき御多用中恐縮に候へども來る十月  日午前  時當校に御光来下され度願上候 貴下御差支の節には代理の方にても宜しく候
同日時御出校御差支の節には御來校の日時御示し下され度候
                          笄尋常小學校長 小田島 省 三
  大正十一年  月  日
 保護者殿
 
拝啓 促進學級編制の義につき過日御來校を乞ひ御話申上候所其後心理考査の結果御子樣より尚先に編入すべき必要の者生じ候ため此度の編制には御子樣を加はへざることと相なり候條不惠御了承下され度右のみ申上候 草々
  大正十一年十月十八日
                       東京市笄尋常小學校長 小田島 省 三
     殿

(笄小学校資料 大十一)


 
【付記】笄小学校においては、明治四十三年の「本校教育の梗概」の中に優劣等児取扱法として、特に長期欠席の為教科の遅れる者、身体虚弱の者、生理上心理上に著しく欠陥のある者に対して特別教授の方法を計画実施している。大正十一年十月には促進学級(補助学級)を設置した。笄小学校でその際に、促進学級対象児童の選出にあたっての十分な研究のもとに、児童や保護者への対応した記録である。特に港区地域には、特別学級編制に関する資料は少ない。