昭和十一年四月七日
東京府知事 横 山 助 成
帝室林野局長官殿
盛岡町御料地使用許可願ノ件
去ル四月二十五日付東京市本村尋常小學校ヨリ同校兒童養護教育ノ目的ヲ以テ東京市麻布區所在盛岡町御料地ノ一部使用ヲ願ヒ出候處右ハ曩ニ高松宮殿下ヨリ皇太子殿下御誕生奉祝記念建設敷地トシテ東京府ニ御下賜被遊タル御料地ニ建物竣工ノ上ハ御下賜ノ際ノ御條件モ有之候ニヨリ敷地ノ一部ヲ同校ニ對シ使用セシムル豫定ニ付何卒今般出願ノ件御許可有之樣御取扱ヒ相成度及御願候也
願 書
本校ノ虚弱兒童及精神薄弱兒童養護教育ノ目的ヲ以テ東京市麻布區盛岡町所在東京府小國民道場敷地内ニ其ノ施設ヲ爲シ教育ノ效果ヲ收メ居リ候處先般道場ノ建築ニ着手シ工事中危險ナルガ故一時有栖川宮記念公園ヲ養護教育地ト致シ候ヘ共入園者多數ノ時ニハ教育上支障ヲ來ス事モ有之就テハ盛岡御料地ノ一部使用ヲ願ヒ別紙ノ通リノ施設ヲ爲シ一層養護教育ノ效果ヲ擧ゲ度尚又御料地内ノ桑葉ヲ拝領シ全校一致協力ニ依ル養蠶作業ヲナシ以テ感恩奉謝ノ至情ヲ捧グル實踐ノ指導ヲ行ヒ小國民指導精神ノ顯揚ニ努メ度念願ニ御座候、小國民道場竣工後ハ東京府ニ於テ從前通リ本校養護教育ノ施設ヲ許可スルコトヽ相成居候間、本年十二月二十五日限リ盛岡町御料地内、南西隅約八百坪ノ使用御許可被下度及御願候也
昭和十一年四月二十 日
東京市本村尋常小學校長 對 馬 敬吾郎 印
帝室林野局長 三矢 宮松殿
〔別紙〕
盛岡町御料地内 養護施設
一 擔任及收容兒童數
養護學級(身體虚弱兒) | 一年 | 男 八名 | 稻 葉 一 彥 |
女 一三名 | |||
同 | 二年 | 男 一二名 | 佐 藤 四 郎 |
女 一一名 | |||
補助學級(精神薄弱兒) | 男 一〇名 | 村 中 兼 松 | |
女 九名 | |||
計 | 六三名 |
一 施設
(イ) 天幕 學習室(二間ニ三間ノモノ)
物 置(高サ二間ノ方錐形ノモノ)
(ロ) 教室内備品
折畳式机、小黒板、教卓、大卓子、椅子等
(ハ) 湯沸所
簡單ナル土竈ヲ設ケ中食時ノ湯沸ヲ行フ
(ニ) 便 所
一間ニ半間ノ簀ヲモツテ圍ヒタル男女小便所二ヶ所ヲ作ル
本校兒童養護教育ノ目的ヲ以テ東京市麻布區所在盛岡町御料地ノ一部使用ノ願書ヲ帝室林野局長官ニ提出致シ候處林野局ニ於テハ東京府小國民道場竣工後ハ同敷地内ニ本村小學校ノ養護教育施設ヲ許可スル旨ヲ確メタル上御詮議下サルコトヽ相成候間右御證明被下度及御願候也
昭和十一年五月四日
東京市本村尋常小學校長 對 馬 敬吾郎
東京府知事 横山 助成殿
監第五七四ノ三號
東京市本村尋常小學校長 對 馬 敬吾郎
本年四月二十七日願出ニ係ル盛岡町御料地内土地面積約七百八十坪ノ使用並ニ桑葉下付ノ件許可致候條左記事項ハ特ニ嚴守相成度
昭和十一年五月十五日
帝室林野局長官 印
記
一 土地ノ使用ハ本年十二月二十五日限ト心得ラルヘク從テ爾後其ノ使用繼續ノ義ハ一切出願セサルコト
二 使用地上ノ施設物件等ハ使用期限内ニ總テ之ヲ撤去シ土地ヲ原狀ニ復シテ返地スルコト
三 桑葉採取ノ場合ヲ除キ兒童ハ勿論其ノ父兄等ヲシテ使用許可地域外ニ出テサル樣取締ルヘキコト
四 特ニ火氣ニ注意シ且使用地上ノ樹木ハ之ヲ損傷セサルコト
五 桑葉ハ使用許可地域内又ハ其ノ附近ノ分ニ付採取スルコト
(本村小学校資料 昭一一)
【付記】本村尋常小学校の養護学級(虚弱児)及び補助学級(精薄児)が、麻布区盛岡町御料地の一部を借用するために東京府知事と帝室林野局長に宛てた許可願と回答文書である。