港区立肢体不自由学級設置に関する報告

昭和五五年七月一六日
東京都港区教育委員会
 教育長 稲 葉   茂殿
                           港区心身障害教育推進協議会
                               会長 廣 瀬   久
   昭和五六年度以降における区立小・中学校肢体不自由学級のあり方について
 昭和五五年二月二三日付五四港教学第七一四号により諮問のあった標記について、別紙のとおり答申します。
Ⅰ 肢体不自由学級設置のための基本的な考え方
  心身障害学級は、学校教育法第七十五条に基づき、小学校、中学校に置くことができるとされている。
 従って、心身障害学級を設置することについては、各地方自治体の実状に応じた独自の判断で対応してきた
 わけである。
  本区においても、昭和三十一年に精神薄弱学級を設置して以来、必要に応じて、障害別に設置し、整備に
 努めてきたところであるが、肢体不自由学級については、種々の状況から暫定的な措置のまま今日に致って
 いる。
  しかし、近年、心身障害学級在籍児童・生徒の障害の状態が多様化及び重度・重複化の傾向が著しくなっ
 てきた中で、都立養護学校(肢体不自由)が港区の近在に設置されていないことから、現行の小・中学校の肢
 体不自由学級の整備改善をすみやかにはかる必要がある。
  本協議会は、こうした社会的背景と港区の実態を踏まえ、さらに、先に答申のあった、「港区心身障害教
 育に関する報告」(昭和五十三年三月、東京都港区心身障害教育検討委員会)の趣旨を尊重し、具体的方策を
 検討した。
Ⅱ 肢体不自由学級設置のための具体的方策
  本協議会は、Iの基本的な考え方に基づき、以下のごとく提言する。
 一 学級設置規模について
   肢体不自由学級を設置するに当たっての規模は、本区の対象児童・生徒数の年度別推移の想定に基づ
   き、小学校二学級、中学校一学級とすることが適当である。
 二 設置形態について
  (1) 肢体不自由学級を設置するに当たっての形態には、次の二つの方式が考えられる。
   ① 小学校及び中学校の肢体不自由学級を、小学校又は中学校の何れかにまとめて設置する方法――併置統合方式
   ② 小学校及び中学校のそれぞれに設置する方法――分散方式
   この二つの方式を比較検討した結果、本区の肢体不自由学級を設置するに当たっての形態は、併置統合
   方式とすることが望ましい。
  (2) 併置統合方式が望ましいとしたことの理由は次のとおりである。
   ① 小・中学校の九年間を見通した教育を行うことができる。
   ② 多数の教職員により、多様で弾力的な対応が可能となる。
   ③ 障害の程度、特性等に応じ、一人ひとりに即したきめのこまかい学習指導、機能訓練を行うことができる。
   ④ 障害の程度、特性等を配慮した適切な学習集団を作ることが可能となる。
   ⑤ 多数の児童・生徒の触れあいの中で、経験領域が拡大され、心身の発達が期待できる。
   ⑥ 教職員相互の研修効果が期待できる。
   ⑦ 望ましい施設設備の整備が容易である。
  (3) 併置統合方式で設置するに当たっては、次の点に特に留意する必要がある
   ① 普通学級と交流しやすいような配慮をすること。
   ② 通学方法・時間について適切な配慮をすること。
   ③ 保護者及び関係者の理解が得られるような配慮をすること。
  なお、二つの方式の比較検討の中で、交流実施の面と、早期開設が可能という二つについては、分散方式
 の方が有利であるとの意見も出たが、総合的な教育効果の判断、設置場所(校)とのかかわり等から、併置統
 合方式の方が望ましいとしたものである。
三 設置場所について
  肢体不自由学級を設置する場所の選定に当たっては、区立小・中学校の校地内とすることが望ましい。
  ただし、この際、次の点に留意する必要がある。
  ① 必要なスペースを確保できること。
  ② すみやかに着工できること。
  ③ 大型バスの乗り入れが可能であること。
四 施設設備について
  肢体不自由学級を設置するに当たっての施設設備については、他区の肢体不自由学級の施設規模及び「東
 京都心身障害教育に関する報告」(昭和五十年八月、東京都心身障害教育検討委員会)の中の、「心身障害学
 級の施設設備基準」を参考にして、併置統合方式とした場合に必要な「施設設備規模」を別表のとおり策定
 した。
五 設置時期について
  肢体不自由学級を設置するに当たっての時期については、現行学級が暫定的措置として置かれていること
 から、可及的すみやかな時期に設置することが必要である。
 
別表
肢体不自由学級施設設備規模(3学級規模)
部  門  別部屋数面  積備       考



普 通 教 室460×4=240m2トイレ,手洗を含む
特 別 教 室370×3=210m2準備室を含む
教  材  室150m2 
小   計8500m2 





プレイルーム1100m2 
機能訓練室1100m2 
生活訓練室180m2 
水治訓練室150m2浴室を兼ねる シャワーを含む
小   計4330m2 





職  員  室160m2応接室を含む
保 健 室150m2 
相談室兼会議室130m2 
給食調理室160m2 
主  事  室120m2 
更衣室兼休憩室150m2 
小   計6270m2 
そ  の  他 330m2廊下,倉庫,玄関等
合 計(校舎面積) 1,430m22階建の場合,建築面積800m2


運  動  場 500m2 
車     庫 100m2 
プ  ー  ル 300m2プールサイドを含む
敷 地 面 積 2,800m22階建の場合1,800m2

(港区教育委員会資料 昭55)


 
【付記】昭和31年に精神薄弱学級を設置してから以降肢体不自由児については、暫定的な措置がとられたままであったが本答申では、小・中学校に肢体不自由児学級を設置すること、また、その施設・設備の規模等について必要な改善をもとめている。