港区情緒障害学級設置に関する報告

昭和五七年三月二三日
東京都港区教育委員会
 教育長 稲 葉   茂殿
                            港区心身障害教育推進協議会
                               会長 若 山 秋三郎
   港区における区立中学校情緒障害学級のあり方について
 昭和五六年九月三〇日付五六港教学第四八四号により諮問のあった標記について、別紙のとおり報告します。
   港区における区立中学校情緒障害学級のあり方について
  本協議会は、課題解明のため全体会六回、他区の情緒障害学級見学会、起草委員会を持って調査検討を行
 い成案を得たので、その結果を報告書としてまとめ答申する。
  本協議会は、本区における情緒障害教育が一層充実されるために、この答申にそって適切な措置を講ぜら
 れるよう期待する。
一 現状と問題点
 1 情緒障害については、現在のところ共通した概念がもたれていない。
   心因性のものから脳器質の障害まで、非常に幅広い症状を含めて言われている。
   こうした障害の多様化に対応した適切な指導を行うには、情緒障害教育の内容・方法の面で今後とも検
  討すべき課題が多い。
 2 本区の中学校には、情緒障害学級は設置されていない。このため、小学校の情緒障害児の中学校進学後
  の受け入れの点で組織的な指導体制が不備な状況になっている。
   一方、中学校においては、進学後の生徒の著しい心身の発達に伴い、障害の内容・範囲が小学校とくら
  べて一層複雑になることから、その対応のあり方も多様化している。
   こうしたことから、中学校の情緒障害学級のあり方についての検討に当たっては、特に慎重な配慮が必
  要である。
二 具体的方策
  本協議会は、一の「現状と問題点」を踏まえ、さらに先に答申のあった「港区心身障害教育に関する報
 告」(昭和五十三年三月、港区心身障害教育検討委員会)の意向を尊重し、以下のごとく提言する。
  情緒障害生徒の実態は、その心身の発達に伴い、障害の状態が複雑、多様であり、その対応については、
 将来の展望に立ってその役割を果す学級の設置が望まれる。
  設置に当たっては、問題点を更に調査した上で、以下の計画にそって設置する必要がある。
 1 学級設置規模について
   小学校における情緒障害学級数及び対象生徒数の想定等から、当面一学級とすることが適当である。
 2 指導形態・方法等について
  (1) 当面、通級制により、障害の状態の変化に応じた弾力的な指導や多様な実態に適切に対応すること
    が望ましい。
  (2) 指導方法に当たっては、在籍学級・区立教育センター及び家庭と密接な連携による有機的な指導形
    態を確立することが望ましい。
  (3) 設置に当たっては、障害の程度に応じた教育効果をあげるため、余裕をもった設備規模で計画され
    たい。
  (4) 設置場所については、中学校に併設し、指導の効果、充実を考えて区立教育センター・小学校設置
    校との関連等を充分に考慮して適当な位置を選定されたい。
  (5) 施設の概要等は、別途検討されたい。
  (6) 学級等の呼び名については、慎重な配慮をする必要がある。

(港区教育委員会資料 昭五七)


 
【付記】区立中学校に情緒障害学級を設置する必要性について種々検討し他区の状況を調査の上、答申をまとめたものである。教育センター・小学校の情緒障害学級との関連などを十分配慮の上、位置、設備規模、学級の名称等に慎重な配慮が必要である旨を述べている。