心身障害児・者の理解に関する調査集計結果
研究を始めるに当たり、研究前後の同一生徒の意識の変容について調査した。
Q1~Q4は、二・三年生の前年度との比較である。Q5・Q6は、本年度、直接交流を行った二年生を前年度と比較したものと、また、三年生については、直接交流を行った三年C組と直接交流を行わなかった三年A・B組と比較したものである。表中の数字は百分率を表している。
Q1 あなたは、身近に老人や病人がいたら、その世話や手助けを進んでしますか。
ア 思う イ ときどき思う ウ ほとんど思わない エ 思わない
Q2 あなたは、バスや電車の中で、老人や心身に障害のある人が近くにいたら、進んで席を譲りますか。
ア 譲る イ ときどき譲る ウ ほとんど譲らない エ 譲らない
Q3 あなたは、街の中で車いすの人が困っていたら、進んで手伝いますか。
ア 手伝う イ ときどき手伝う ウ ほとんど手伝わない エ 手伝わない
Q4 あなたは、心身の障害のある人をどのような気持ちで見ていますか。
① 心身に障害のある人は、希望をもって生きている。
ア 思う イ ときどき思う ウ ほとんど思わない エ 思わない
② 心身に障害のある人は、頑張って生きている。
ア 思う イ ときどき思う ウ ほとんど思わない エ 思わない
③ 心身に障害のある人と仲良くしたい。
ア 思う イ ときどき思う ウ ほとんど思わない エ 思わない
Q5 港養護学校について答えてください。
① あなたは、港養護学校がどこにあるか知っていますか。
ア 知っている イ 知らない
【平成6年度(2学年)】
【平成6年度(3学年)】
考察
実態調査及び意識調査の結果から生徒の意識の変容が明確になった。これは二年間の研究を通して、心身障害児・者への理解が進んだ結果と思われる。
Q1では、「身近に老人や病人がいたらその世話や手助けを進んでしますか」という質問では、「思う」と答えた生徒の割合が二一・七%、「ときどき思う」と答えた生徒は六二・五%、否定的な答えが一五・八%となっている。「思う」と答えた生徒の割合が少ないのは、本研究の趣旨からいうとやや残念に思うが、現実の生徒の家庭環境をみると、祖父母と同居している割合が非常に少ないことともかかわりがあるものと考えられる。本校の生徒のほとんどの家庭が核家族、つまり老人や病人と直接触れ合う機会が少ないために表れた結果と思われる。
Q2では、「譲る」と答えている生徒が四五・一%と高いが、これは実生活では老人や心身障害者に接する機会が少ないため、生徒にとっては実感のわかない質問で、答えづらかったのではないかと思われる。このことはQ3の結果にも表れている。
Q4の結果からは、総じて生徒たちの心身障害児・者に対する温かさが感じられる。
Q5は、直接交流の対象校である港養護学校についての質問である。
二学年の場合、直接交流を行わなかった平成五年度と、直接交流を行った平成六年度での結果が大きく変わっていることが分かる。本年度の調査時期が持久走大会後であったために、生徒は強い印象の基に答えた結果だと思われる。いかに直接交流による体験が大切であるかが分かる。このことは、同じ学年で直接交流をおこなった三年C組と、直接交流を行わなかった三年A・B組の結果からも明らかである。
〔略〕
(港南中学校研究紀要『人間尊重の意識を高める教育の推進』平六)
【付記】港区立港中学校における心身障害児理解推進活動生徒の意識調査は、平成五・六年度に心身障害児理解推進校として、「人間尊重の意識を高める教育の推進」を主題として研究に取り組んだ。健常児の中学校生徒と養護学校生徒との交流を進める中で、生徒の意識がどのように変容したのかを知る上で貴重な資料である。