赤坂小学校の養護教育

   補助學級
一、大正十一年六月當時の校長宮内與三郎氏の盡力によりて計畫せられ、鈴木留三郎訓導專ら其の創設凖備に
  かゝり中心集合制をとることに定め、赤坂區内各校より兒童總數二十名を募集し、同年七月一日一學級を
  編制し授業を開始せり。
二、昭和三年一學級を増設し促進學級とす。
  卽ち補助學級を二部制とし、第一部には二年以上の低能兒童を收容し、第二部には、二年以上の劣等兒童
  を收容せり。
三、現在は第一部には二年以上の劣等兒童、第二部には四年以上の劣等兒童を收容す。
四、收容兒童の選定
   (一) 知能檢査      (二) 學力檢査
   (三) 身體檢査      (四) 環境調査等により選定す
 
    保 健 學 級
一、昭和十年五月二十二日第二學年單式學級を創設し養護學級と稱す
二、昭和十三年四月より二年三年兒童を收容する複式學級とす。
三、昭和十六年四月より赤坂國民學校養護學級と稱す。
四、昭和十七年四月より赤坂國民學校保健學級と改稱す。
五、收容兒童の選定
   (一)第一學年末に於て全兒童の健康調査を行う。
   (二)定期身體檢査の結果身體虚弱にして、要養護と認められたるもの。
   (三)其の他身體虚弱にして擔任訓導及び家庭に於て特に希望せるもの。
   (四)東京市衞生技師及び本校校醫の再檢査等に依り選定す。
 
    養護施設の槪要
一 身體檢査
本校の特に重視して行って居る項目である。每年春に行う定期身體檢査の他左の如き檢査を隨時行う。
・不具兒童檢査、精神檢査、眼疾檢査、其他の傳染病檢査、口腔檢査、就學、卒業等の豫備檢査、體力調
 査、夏季施設參宮旅行等の參加兒童の身體檢査、寄生蟲檢査等。
・健康調査(結核調査)精密なる調査を行って發病の豫防と早期發見による治病の万全を期す。
二 健康相談
種々なる調査の結果は其の都度檢査醫出席のもとに父兄會を開き健康相談に應じる。其他隨時に校醫、養護婦、擔任訓導等によって行う。
三 治療矯正に關する施設
・眼疾治療 輕微なものは校醫指導のもとに養護婦が手當をなし、比較的重いものは校醫が治療をなしてい
 る。更に手術を行するものは眼科の専門醫に委託して手術を受けしめているが、その結果は良好で家庭の注
 意と相まって眼疾の著しい減少をみている。(最近五年間に二四%より九%に減少)
・歯科治療 歯疾は咀嚼を阻害し榮養を害うと云う意味から、虚弱兒童と貧困家庭の兒童の治療を第一にし餘
 力を六歳臼歯の治療其他にそそいで居る。
・凍傷治療 〇・二のクレゾール温湯中に局部を約五分間浸し清水にて洗い、其の後にカンフルワセリン其の
 他を塗擦せしめて居るが其の成績はなかなか良好である。
・寄生蟲驅除 糞便檢査の結果寄生蟲卵保有者にセメン錠を投與して、その駆除に努めている。(昭和五年卵
 保有率十六%より年々減少昨年は六・九%)
・救急處置
・吃音矯正講習等
四 虚弱兒童に關する施設
・特別監察 諸調査の結果要注意の兒童については體温測定、體重測定、每月の特別診査等を行い兒童個々の
 身體狀況に應じた養護と鍛練が行われる樣、學習、體操、作業等の指導に留意する。
・給 食 兒童の榮養の確保と偏食矯正其の他食事の正しい習慣の涵養に資する爲に、保健學級兒童に對して
 榮養協會調理の辨當と學校調理の味噌汁を給している。
 其他一般虚弱兒には區費で肝油を給與している。
・養護學級 身體虚弱兒の爲の保健學級と精神薄弱其の他により特別養護を要する者の爲の補助學級とが設置
 されている。收容兒童の選定は何れも精密なる健康調査と精神檢査によって行われる。指導の目標は收容中
 の兒童の健康の保全は勿論であるが、健康への正しい習慣の要請と意志の錬磨によって將來の健康を確保す
 ることにある。
・養護學園の利用 特別要養護の兒童の一部は東京府、東京市等で經營している林間或いは海濱の養護學園に
 入園せしめ學業を受けしめつゝ健康の増進を圖っている。本校では昨年の四月より本年十月までに二十六名
 の兒童を入園せしめている。
五 健康教育と衞生訓練
 擔任訓導の絕えざる指導の他に榮養週間、結核豫防、齲齒豫防、視力保全、體力増强等の健民運動に呼應し、それらの週間を利用して講話、映畫、掲示等によって衞生思想の發達をはかり、體育運動によって心身の鍛練に努めている。衞生訓練としては日光浴、乾布摩擦、洗手、含嗽、咀嚼、口腔内清掃等の訓練を行う他に、本年度の訓練事項として六月を清掃訓練十一月を食事指導に當て、更に一年間を通じての訓練事項として姿勢を擧げて全校一丸となって正しい姿勢の保持に努めている。其の他すべて體驗を通じて健康生活の實踐に導くという意味から訓練に重きをおいている。
六 校舍の清掃と教室内の衞生狀況
 本校は木造校舍であり改築後既に二十五年を經ているので、校舍の清掃には特に意を用いている。特に昨年よりは職員兒童が協力して羽目板、ガラス戸、昇降口等の特別清掃に努めている。
 教室内の衞生狀況に就いては今春市衞生試驗所の調査の結果、濕度が稍々不良であった他は炭素量、飛塵量照度一人當り床面積同空氣量共良の成績であった。

(赤坂小学校『記念誌』昭一七)