教員の結約と解約

明治十三年二月十日
                                    學 務 課
公立麻布小學校務委員ヨリ助教結約之儀別紙之通上申候條取調候處不都合之廉無之被存候間認可狀御下付相成可然乎此段相伺候也
 
 〔別紙〕
                           麻布區麻布櫻田町五十一番地士族
月給金四圓                             宮 本 直 温
目下公立麻布小學ニ於テ教員缺乏ノ處右之者教員志願ノ趣申出候ニ付當明治十三年二月十日ヨリ同年十一月十五日迄頭書ノ給額ヲ以テ結約仕度依之履歷書相添此段上申候也
  明治十三年二月
                               公立麻布小學校務委員
                                 笠井 太郎兵衞 印
                                 並 木 傳 七 印
                                 藤 田 武次郎 印
 東京府知事 松田 道之殿
前書之通相違無之ニ付致奥印候也
                         東京府麻布區長 前 田 利 充 印
 
     履歷書
                            麻布區麻布櫻田町五十一番地
                               士族 宮本直靖 長男
                                  宮 本 直 温
                                  萬延元年十月生
一明治五年五月ヨリ同八年三月マテ大阪府下豐島郡公立麻田小學ニ入校下等小學科卒業
一明治九年十月ヨリ同十一年六月マテ神奈川縣下愛甲郡公立厚木小學ニ教員勤務
一明治十一年七月ヨリ同十二年六月マテ神奈川縣下愛甲郡公立上依智小學ニ教員勤務
一明治十二年八月十日ヨリ同十三年七月二十日マテ本所區公立公惠小學助教結約之處都合ニ依リ償金之上解約
  明治十三年二月 日
                                右
                                 宮 本 直 温 印
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明治十三年二月十三日
                                    學 務 課
赤坂區公立青山小學分校江過般派出相成候内田知致授業上審査之上該校教員として委囑結約致し度段別紙之通申出候條訓導認可狀御付與相成可然哉此段相伺候也
 
 〔別紙〕
乙七九號
                                  内 田 知 致
右ハ去月九日青山小學假教員トシテ派出相成候ニ付實地授業上審査ノ上申出候儀可取計旨云々御通達之趣了承依而ハ別紙之通同校務委員ヨリ申出候條可然御取計有之度此段御回答旁申進候也
  明治十三年二月十二日
                                    赤坂區役所
 學務課御中
 
〔別紙〕
一ヶ月給料
                                 士族
一金五圓也                             内 田 知 致
                                  二十一年五ヶ月
右者當校公立青山小學江假教員トシテ派出ニ相成候ニ付實地授業上審査候處適當之者ニ有之候旨主宰教員ヨリ申出候間當二月ヨリ來七月迄前書金額ヲ以教員ニ委囑結約致度候條御認可被成下度依テ此段相伺候也
  明治十三年二月十二日
                            赤坂區公立青山小學
                               校務委員總代
                                 木 村 宗 三 印
                                 榊 原 粂治郎 印
                                 土 橋 惣 八 印
 東京府知事 松田 道之殿
前書之通相違無之候ニ付奥印候也
                            赤坂區長 堀 田 正 養 印
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明治十三年二月二十一日
                                    學 務 課
鞆繪小學訓導佐藤猪三郎義雙方熟議之上解約相成ニ付此段前下付相成候認可狀奉還別紙之通屆出候條呈一覽候也
 
 〔別紙〕
                                  佐 藤 猪三郎
右者公立鞆繪小學教員ニ明治十二年十一月一日ヨリ十四年一月十五日迄結約御認可相成居候處今般雙方熟議ノ上解約致シ候依之認可狀相添此段上申候也
  明治十三年二月十九日
                            公立鞆繪小學校務委員
                                 笠 井 庄兵衞 印
                                 並 木 傳 七 印
                                 藤 田 武次郎 印
 東京府知事 松田 道之殿
  前書申出通ニ付奥印致候也
                         東京府麻布區長 前 田 利 充 印

(都公文書館資料)


 
【付記】教育令期には、区町村の公立小学校の経費は、区町村費で賄われることとなり教員も区町村民の代表である校務委員が区町村民に代って、教員と自由に契約し、委嘱すべきものとされ、「結約」の制度ができた。