笄小学校の研究教授

教授ハ一般ノ技術ナリ其ノ方法宜シキヲ得ルト否トニヨリテ兒童教育ニ影響スルコト多大ナリ故ニ教授ノ方法ヲ精密ニ研究シ教材ヲ的確ニ精細ニ兒童ニ會得セシムルコトヲ教育者ノ重大ナル任務ナリトス此ニ於テカ研究教授ノ必要ヲ生ズ本校ニ於ケル研究教授ノ方法ハ左ノ如シ
  (一)、研究教授ノ種類
 1 同學年ノ研究教授
 2 近接學年研究教授
 3 一般學級ノ研究教授
 4 研究部ノ研究教授
 5 特殊研究者ノ研究教授
 6 校長ノ示範教授
  (二)、方法
 1 教科目ノ撰定ハ校長ノ指定、學年會ノ撰定、
   調査部ノ撰定ハ特殊研究者志望ニヨル
 2 教按ハ教授者ノ作製ニヨル場合ト學年會、研究部等ニ於テ作製スル場合トアリ
 3 實際教授ノ際ハ一般職員參觀ノ場合、同學年ノミノ場合、近接學年ノミノ場合等アリ
 4 授業後批評會ヲ行フヲ本體トスレドモ時ニ略スコトアリ且批評者モ前項ノ各場合ニヨリ全部ト一部トニ分ルルナリ
 5 研究ノ結果ハ記錄シ置キテ參考ニ資ス
  (三)、成績
 1 職員ガ教授ニ對シテ研究的態度ニ出ヅルニ至リシコト
 2 全校ノ教授ヲ統一セシムルコト
 3 教授ノ方法一般ニ向上セルヲ認ム
 4 研究ノ際ニハ各自ノ抱懷セル意見ヲ忌憚ナク吐露シ以テ研究ヲ意味アルモノトナシ得ルコト
 5 從ツテ反駁的批評ガ如何ニ劇シクトモ決シテ感情ヲ害スル等ノ事ヲ全然除キ得テ職員ハ研究ノタメニ奮勵スル傾向ヲ生ゼリ

(笄小学校『本校教育之梗概』明四三)