一、昭和十五年十月八日(秋季運動會當日)芝區擔當視学(志波末吉氏)より十月十五日第六部共同視察の件につき電話あり。
二、仝十月九日零時四十五分より仝三時迄當應接室に於て教務會開催共同視察に對處する方針並に準備につき協議す。
三、仝十月十日午後二時四十分より仝三時半迄臨時職員會開催、教務會にて協議せし件につき校長より大略左
の箇條につき説明あり。
イ、運動會最中、志波視學より共同視察の件につき電話あり。
ロ、志波視學との打合せ、並に志波視學よりの速逹便の内容につき說明、教務會にて協議せしものと大體に
於て一致してゐたこと。
ハ、視學は野口(修身、職業指導)宮本(圖画、手工)後藤(國語)志波(国語)の四人なること。
ニ、當日の行事
1 朝禮
2 授業 全職員
第一時――校長案内
第二時――自由參観
3 校長の學校經營說明――凡そ三十分
4 出席首席と視學、校長首席の懇談
5 晝食 (凡そ一時間)
6 視察打合(この間學校職員は授業)
7 第三時に特殊施設例へば集團訓練又は晝食時の食事行事の樣子を視察する立案のこと
8 午後二時より四時迄講評並に座談會
◎ 第7項は、集團訓練と決定し左のことを行ふ
1 ラジオ體操第三
2 歩及走
3 分列行進
◎ 尚朝の行事は
1 宮城遙拜
3 朝禮
2 國旗掲揚
4 ラジオ體操、第一、二 第一はレコード 第二は號令にて
ホ 白金、神應、御田の首席に案内すること。
白金及御田は當日運動會のため、愛宕高等及赤羽校の首席參觀と決定す。
ヘ 學校沿革 或は學校經營要項準備のこと。
本校施設槪覽提出に決定す。
ト 職員出勤は午前七時二十分とす。
チ 準備すべき諸帳簿
學校要覽 學籍簿(補助簿 考査簿
出席簿(四月より九月分まで)
學級日誌、宿直日誌、看護日誌
身體檢査票(職員、兒童)
教案、打合簿
備品臺帳、會計一切のもの
細目―學年別纏め置くこと
リ 研究物あらばこの際纏めて印刷發表すること。
ヌ 校舍内外の清掃
ル 教室廊下等の環境整理をなすこと。
ヲ 第一時の教授科目は隨意なるも第二時の科目は、視學擔當の科目を選ぶこと。
昭和十五年十月十一日(金)
志波視學來校・講評左の如し(要項卽記)
1 設備に關して
イ 設備が良く兒童は幸福である。運動場は狹いが、設備を十分生したい。
例えば 背面黒板 使ひ方がまち/\である。
掲 示 板 使って生きる。上手に使ふやう。
用 具 置場。
廻 轉 窓 温度との關係考慮のこと。(本日は良し)
人を生かすのが教育であるが設備は大なる關係影響がある。
ロ 如何なる教室にするか(人柄が教室を作る)
教室は兒童生徒の根據である。
低學年 子供らしい樂しい雰圍氣を。
高學年 學習、總體の道場。
ハ 圖畫、手工、書方の總體を十分掲示すること。特に手工の作品が教室にない。
ニ 學校としての統一を表はす校訓或は級訓必要。
ホ 必要なものが必要な所にあるべきこと。
例えば 箒、雜巾、空籠、掛圖の紐の長さ
意志の通りに動くものは物である。物を支配出來ぬ者は人間を指導することは困難である。
・整理された教室がそれ自體が躾である。
2 用具に關して
イ 机の高さ。 四月始めに兒童の身體に合せしも學年の半過ぎであるから十分出來だけ留意すること。
3 姿勢について
書方の時は立派であるが筆記の時良くない。
姿勢と脊柱、近視との關係について。
4 教授に關して
イ 說明、讀書の從來の形式、所謂教授本位の説明教授が多かった。
児童の生活に卽した豐かな生活でありたい。
出來る限り郵便物を蒐集し觀察せしめて教授の充實を圖るべきである。
ロ 兒童と教授との關係
ハ 豐冨に持てる教室といふ氣分―絕えざる研究努力が望ましい。
良い學校としての例―馬込尋高の手工教室
集團訓練 ―桃園第二
ニ 「教室の注意が物に行屆いてゐるか」を常に留意すること。
ホ 時間の使用法につき綴方、書取、等の檢閱は後に延ばすことなく卽時になすこと。
ヘ 國民學校案中の綜合教授についての質問につき應答說明あり。
〔略〕
十月十二日(土) 〔略〕
十月十三日(日)
朝より校長を始めとし職員の大部分(男職員全部)女職員(竹村、近藤、松藤、後藤、廣島)出勤準備し午後十
時解散。
主たる役割次の如し
1 教室掲示用訓練要目清書 井草訓導
四・五・六年 自治・公正(特別教室も同じ)
三年 自分の事は自分で
二年 じぶんのことはじぶんで
一年 ジブンノコトハジブンデ
2 時間割印刷 淺沼訓導
3 訓練要目印刷 南部、詫摩〃
4 作法細目印刷 入江〃
5 職員名簿、首席名簿 石田〃
6 教室配置圖 有野〃
7 槪覽訂正 南部〃
8 要目の額取付 中島、梶谷、東福寺、重澤〃
9 其の他の諸準備 出勤全職員
10 高橋(理科)小澤(圖畫)梶谷(手工)東福寺(唱歌)竹村(裁縫)
各特別教室整理、準備、内間(體操場其の他校具)
11 總指揮 校長、佐藤訓導
十月十四日(月) 〔略〕
十月十五日(火)
朝より小雨、朝禮なし 兒童を教室に入らせた。
七時十五分志波視學來校 七時半には視察員並に參觀者席全部揃ふ。
第一、二時授業豫定の通り。
第三時、雨益々烈しく降り集團訓練を繰下げ四時限の教科目の授業をなす。
第四時、雨やみ濡れた校庭に於て全部裸足にて集團訓練をなす。
1 朝禮
2 集團訓練
ラジオ體操 第一、レコード 第二 號令
歩及走 三年以下 四年以上
分列行進
午後、視學、首席懇談
帳簿類 檢閱、視學打合せ
午後二時四分より圖書室に於て、講評並に座談會開催、同四時半終了。
職員室に於て本日の感想發表會並に反省會開催す。
校長より 學校經營に關して視學に話された略要のお話しあり、
本日の結果は一般に良かったがこれに滿足せず尚一層の努力を望むの訓辭あり。
佐藤訓導より 參觀三首席の批評傳逹あり。
各訓導より 感想發表。
午後八時終了
參觀首席批評〔略〕
(三光小学校資料 昭一五)
【付記】学校視察を受けた教職員の姿勢が記録されている。三光学校は視学と芝区内の学校より推薦された首席訓導三名による共同視察を受けた。事前に、設備・用具・児童と教授との関係・当日準備する事等について指導を受け、日曜日も全職員出勤し準備に当たった。