教育庁社会教育部と港、千代田、中央及び新宿の各区共催の成人学校開校式は、十月十七日(火木組)十八日(水金組)両日何れも午後六時より桜川小学校講堂において盛大に開かれた。各科とも約五十名程度応募見込のところ、当日会場において申込者が殺到し、洋裁、英語等は定員の二倍、三倍という盛況振りに受付はじめ関係者に嬉しい悲鳴をあげさせたが、式後それぞれの教室において各講師より最初の授業を真剣な態度で聴講、六週間にわたる教養向上の第一歩を踏み出した。つゞいて第二回の授業日には何れも人員が増加し、英語等はついに二百名を突破する勢で、一般社会人が如何に教養の向上を求めて、こうした機会を切望していたかということを十分偲ばせた。関係者一同その熱心さに応えて「十分な成果を得ていただきたいもの」と、その御世話に懸命の努力をしている。
生徒数は開校当日で延三百七十五名、男百五十三名、女二百二十二名で住所並びに勤務先の地区別は港三百二十名、中央二十七名、千代田十二名、新宿十七名となつており、科目別では英語百四十二名、洋裁九十六名、経済六十三名、音楽五十五名、育児十九名で年齢層は十八歳より三十歳までが圧倒的だが、それ以上の方も相当数にのぼり、最高年齢は七十二歳のおじいさんで英会話の級に若いものに負けない元気をみせている。職業別は何といつても勤め人が多いが洋裁、育児等は家庭人が三分の二を占め、赤ちゃんを負ぶつた姿も交る中に男子の受講者もあり、ほゝえましい光景をみせている。
(『港区政ニュース』昭二五・一〇)
第五回港区成人学校開設案内
―余暇を生かしたおとなの楽しい勉強室
新時代の教養、皆様の成人学校へ―
一 期 間 青年学級コース(六十時間)六十時間聴講の方には修了証書を差上げます。
昭和二十八年十一月十六日-昭和二十九年三月二十六日
午後六時~八時
成人学校コース(二十時間)二十時間聴講の方には修了証書を差上げます。
昭和二十八年十一月十六日―昭和二十八年十二月十七日
午後六時~八時
二 会 場 第一会場 神明小学校
(国電…浜松町 都電…浜松町下車)
第二会場 麻布小学校(都電…飯倉片町(郵政省前)下車)
第三会場 檜町小学校
(都電…山王下 新坂町下車)
三 聴講料 無料(但し実習教材の実費をいただくことがあります。)
四 申 込 港区教育委員会社会教育課
(港区役所・芝公園六号地
電話芝(四三)四一五一―四)又は会場にて受付
五 締 切 定員になり次第(一科目五十名)
港区教育委員会
主 催{港 区 役 所
都 教 育 庁
時間割 (午後6時~8時) |
会場 | コース | 曜日 | 科 目 | 内 容 |
神明小学校 (第1会場) | 青 年 学 級 | 月、水 | 速記 | 初歩より |
火、木 | 音楽 | 鑑賞とコーラス | ||
成 人 学 校 | 月、水 | 高速度手編物(スピード使用) | 手ほどきよりセーター完成まで(機械の用意あり) | |
火、木 | 自動車理論 | 構造と法規 | ||
麻布小学校 (第2会場) | 成 人 学 校 | 月、水 | 美しい話しことばの研究 | 正しいことばの使い方 |
日本人形の造り方 | 手ほどきより人形完成まで | |||
火、木 | 新しいペン習字と毛筆 | すぐに役立つ実用習字 | ||
デツサン | 石膏より人体まで | |||
檜町小学校 (第3会場) | 成 人 学 校 | 月、水 | 栄養惣菜料理 | 献立と実習 |
謄写技術 | きれいな謄写、正しい筆耕 | |||
火、木 | 家庭染色法 | 趣味と実用の染色 | ||
美 容 研 究 | 誰もが生かせる健康を中心とした美容 |
(『港区政ニュース』昭二八・一一)
成人学校の評価表
利用者の半数は二十代
趣味教養の向上を希望
昨年十一月十六日から一ヶ月にわたつて開催した、第五回港区成人学校の結果が区教育委員会から発表されました。
これによると最初の入校希望者は三百六十三名、男八十名女二百八十三名で、女性が七七%と圧倒的に多かつたのですが、実際の入校者は希望者の八九%、三百二十三名でその中無事修了証書を貰つたのは半数の百五十七名にすぎませんでした。それでも皆勤者が九十四名もあつたことは主催者側として喜ばしいことでした。
この入校者の職業別並びに年令層の構成は次の通りで最低十四才、最高五十四才という数字が出ており、やはり二十代のビジネスガールに最も人気があつたようです。
会社員八十五名 (二三%)
官公吏七十一名 (一九%)
教員十六名 (四・五%)
自家営業二十五名 (七%)
学生三十一名 (九%)
看護婦六名 (一・五%)
工員八名 (二・五%)
社会事業八名 (二・五%)
無職四十五名 (三九%)
主婦三十九名 (一六%)
不明二十九名 (八%)
年令層
十代四十六名 (一二%)
二十代百七十一名(四七%)
三十代六十四名 (一九%)
四十代三十二名 (九%)
五十代四名 (一%)
不 明四十六名 (一二%)
又この成人学校に対しての遠慮ない批評や、希望条件などを聴くため、受講者に匿名で評価表を出していただきましたが、これによつて受講生は何を望んでいるかという点について、いろいろと参考になる点が多いので、その主なものをお知らせします。
まず成人学校の開校について何で知つたかという問に対しては、ポスターによるもの二七%、知人から聞いたもの二二%、新聞が二〇%、ラジオが一六%で、この宣伝の徹底については三割近くが不充分であるとして、もつと周知宣伝を希望しています。
あなたの選んだ科目は有効か、という問に対しては八六%がよかつたと答えて、大体満足されたようですが開設の時期については六三%が、余り適当でないとされ、常時開設を望む、又寒くて辛かつたなどの感想もありました。
教授内容や、方法については非常に適切だつたと答えた人六五%、適切だつたと答えた人二七%、即ち九二%が良かつたとされ、教師の人格や、熱心さをたゝえている人もあります。
又どういう目的で、この科目を選んだかという問には職業技術習得のためと、趣味教養の向上にという答が一番多く、前者は「自動車理論と法規」「謄写技術」「人形の作り方」「機械編物」等に、後者は「習字」「デツサン」「美容」等の科目を選んだ人に見られました。
次に成人学校に取上げてほしい問題の重点としては、趣味教養の向上をというのが六四%で最も多く、回答者の半数が若い女性である点から見て当然で、ほかに職業技術をが二一%、生活科学をの声が一五%あります。
希望科目もこの傾向と同様に、時事問題、法律、演劇史、彫刻、文学、バレー等の趣味教養の向上のためのものが多く、電気通信、工学、ラジオ組立、タイプ、造花等は職業技術習得を希望する人の選んだ科目でした。そのほか、和服の着方を習いたいというのも時代の傾向をよく表わしています。感想として、「精神統一を得た」、「期待以上に有効」、「自分の環境と違つた新しい空気に触れ、有意義だつた」等の感謝の言葉も多かつた一方、
「もつと時間を有効に、」「期間が短かい」「教材不足」等々、数々のお叱りもあり、教育委員会ではこれらの資料を基にして、今後の成人学校や青年学級等の運営を、よりよき方に展開しようとしておりますから今後とも皆様の御協力をお願いいたします。
(『港区政ニュース』昭二九・二)
【付記】昭和二十五年十月港区において初めて成人学校が開設された。それ以後、盛況裏に推移したが、その評価について調査をした結果である。成人学校は、その後、婦人大学と統合、次でレディスセミナーと名称を変えて今日に至っている。