港区社会教育委員会議
港区の社会教育行政を推進する指針とするため下記のとおり諮問する。
昭和四十四年八月十五日
東京都港区教育委員会
教育委員長 五味原 松太郎
記
諮問事項
「港区における社会教育の今後のあり方について」
答申期日
昭和四十四年十一月
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「港区おける社会教育の今後のあり方について」の答申について
昭和四十四年八月十五日付、四四港教社発第二二九号により諮問を受けたこの件について、調査検討の結果、別紙のとおり結論を得たので、ここに答申します。
昭和四十四年十二月九日
港区教育委員会
委員長 関 根 萬治郎殿
港区社会教育委員会議議長 塚 本 寿 一
港区社会教育委員 保 科 明 敏
ほか八名
目 次
一 序
二 港区の特性と港区における社会教育の目標
三 港区における社会教育の基本的問題
(一) 企画(プラン)の問題
(二) P・R方法の問題
(三) 実施段階の問題
イ 種々なる活動がどんな施設や機関を通して行なわれるか
ロ 指導者の問題
ハ 社会教育をすすめる場合の媒介団体の育成
四 成人教育、青少年教育、図書館をめぐる諸問題
(一) 成人教育
(二) 青少年教育
(三) 図 書 館
五 体育をめぐる諸問題
六 結 語〔別掲〕
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六 結 語
<教育の過程と社会教育の位置>〔略〕
<人間形成の過程と社会教育の意義>〔略〕
<現代の大都市>〔略〕
<社会教育の効果的な運営>
成人教育、青少年教育、図書館、それに体育を加えたこの四つの軸を中心に、港区における社会教育活動が運営されるが、どの領域においても、住民の期待や関心、それに生活態度を正しくとらえた上で、企画がなされ、十分なPRによって、効果的な社会教育の運営がなされるべきである。社会教育を以上のような角度でみるならば、次のような図を描くこともできる。
<社会教育の基本図式> |
<教育の過程>人間形成・社会的適応 | |||||
学校教育 | 家庭教育 | ||||
学校 | 社会教育 | 家庭 | |||
1 成人教育 | 2 青少年教育 | ||||
2 図書館 | 4 体育 | ||||
職 場 | |||||
地域社会 | 世 代 | ||||
都市化、産業社会化、情報社会化/個人の断片化、アトム化、疎外 <社会教育>人格形成、都市生活への適応、地域社会に対する理解と関心、社会的連帯感と市民意識 | |||||
社会教育の目標と方法、社会教育の普及 | |||||
社会教育の問題点 (1)企業の問題 (2)PR法の問題 (3)実施段階の問題 (イ)施設及び機関の問題 (ロ)リーダー及びリーダーシップの問題 (ハ)媒介団体の問題 | |||||
<社会教育に関連する諸団体> 地域組織、PTA、企業体、婦人団体、企業体や大学内の任意の協力団体 |
<社会教育の基本的問題>
ところでこの図を中心に考えれば、社会教育の問題点は、一、二、三、四の社会教育の四つの柱それぞれについておよそ三つの問題にまとめられる。(一)企画の問題、(二)PR方法の問題、(三)実施段階の問題、がそれである。この問題点は、いずれも学校、家庭、職場、それに地域社会、世代との関連で論じられるべきで、これらの背景にある状況は、都市化、産業社会化であり、個人の断片化、アトム化、疎外状況である。
企画については、住民の関心をひろくとらえ、知識、教養面の色彩をこくすることも考えられるべきである。体育の日常生活への浸透が可能となるようなプログラムの設定をおこなうこと。
PRについては、PTA・地域組織・企業体・企業主・各種団体を活用して、組織的、かつ効果的にPRをおこない住民の関心を喚起させること。
実施段階のイ施設、機関については、特に次の点が強調される。既存の施設の実態をとらえ、より以上の利用が可能となる方法を考える。開設の時間を延長したりすること、また、青年館をたんに青年たちだけの使用とせず、さらに広い活用の仕方を検討すること。
<学 校 開 放>
各種の社会教育の実施において学校開放が、共通の問題となってくる。そこで、この<学校開放>を港区としては真剣に考えるべきである。その場合、構造上の改善や、組織上の問題を十分に解決したうえで開放に進むべきである。
ロについては、行政機関においても、民間においても、リーダーの発見と育成を十分に心がけるべきであり、あわせてリーダーの役割、立場、研修などの問題も考慮すべきである。
ハについては、PTA、町内会、職場、それに各種の団体を活用して、社会教育の普及と積極的運営とを意図すべきである。社会教育の過程でうまれたグループの育成にも十分に配慮がなされるべきである。
以上社会教育の問題点についてのべ、社会教育活動の促進に必要と考えられる諸点を指摘してきたが、ここで以上と重複するところも含め、特に重要と思われる事項をまとめてみよう。
重要事項
◎ 社会教育の普及と浸透をはかるために、住民の生活態度を明らかにし、社会教育に対する住民の関心と期
待を正しくとらえるべきである。港区の特性を基礎とした港区独自の社会教育の目標と方法とが考案され
るべきである。
◎ 地域組織、PTA、婦人団体、その他の各種団体を社会教育の媒介団体として考慮し、さらに企業体の協力
を得て、社会教育のPR、社会教育の実施をさらに効果的に行なうべきである。
◎ 各種の媒介団体の中から、さらに一般住民の中から、社会教育のリーダーを発見し、養成すべきである。
地域組織の中に<社会教育推進委員>をもうけることも考えるべきである。ボランティアの養成は、社会教
育の発展のために急務である。
◎ 社会教育担当の区行政における職員を増員すべきである。また専門職(社会教育主事)の立場を確立し、そ
の役割にふさわしい地位と評価を与え、専門職を一層重視すべきであり、専門職の増員をあわせて考える
べきである。
◎ 社会教育関係の予算を増額し、今後、変動する都市社会においてますます重要な役割を果たす社会教育活
動の充実につとめるべきである。
◎ 地区体育館(小体育館)を増設し、体育の日常生活への浸透を考えるべきである。体育館建設に際しては、
専門家の意見を聴取し、十分に設備をととのえるべきである。
◎ 文化センターとしての図書館の意義に注目し、地区図書館の増設をはかるべきである。図書館の利用時間
や、図書館における各種の行事についてもさらに考慮が望まれる。
◎ 成人教育・青少年教育・図書館・体育、このいずれの領域においても、学校開放の問題が浮かび上る。港
区としては、この学校開放の問題を早急に正面からとりあげ、学校開放に努力し、社会教育の効果的活動
を期すべきである。その場合、学校の施設面での改善はもとより必要であるが、人員配置の点などについ
も十分な考慮がなされるべきである。
◎ 社会教育モデル地区の選定を考え、港区の社会教育の一層の振興をはかるべきである。
〔略〕
(港区教育委員会資料)
【付記】昭和四十四年五月に社会教育委員の会議が発足し、その最初の教育委員会の諮問に対する答申である。諮問から答申まで四か月と短期間であるのは珍しい。本答申はその後、本区における社会教育行政の指針となっている。特に学校開放について、早急に正面から取り組むことを提言していることは注目される。
ここには、答申目次と結語の一部を載せ内容の輪郭を示すことにした。
社会教育推進委員>学校開放>学 校 開 放>社会教育の基本的問題>社会教育の効果的な運営>現代の大都市>人間形成の過程と社会教育の意義>教育の過程と社会教育の位置>