また諮問に際し,「港区における区民のスポーツ振興を図るための基本的考え方及びその施策の具体的な方策・内容」に関しても答申に含めるよう求められた。
ところで,今年誕生した子どもが小学校を卒業する頃,人類は21世紀に突入する。いま我々は20世紀の証人として,人類の生存環境という視点から今世紀を省みる時,それは人類至福を目指した高度科学技術文明社会の出現と,一方,その副産物として人間の原郷でもある自然環境の破壊という,まさに,人間の“偉大と悲惨”を苛酷なまでに示した世紀であったと言えよう。また日本は,今世紀のこうした特徴を象徴的に表現する数少ない国の一つであることは誰しも認めるところであろう。
さて,現代人の生活は,高度科学技術を駆使した「情報化社公」や「管理化社会」,さらに“無人化の思想”を背景とした「代行化社会」(省力)に組み込まれ,心身の健康は我々の予想を超えて蝕まれているという。また,その回復の場として最も相応しい「自然」も,とくに都市においては著しく減少し,かつ空間的にも遠いものとなっている。心身の健康保持と増進に,体育・スポーツのもたらす多大な効用は周知の通りである。わが港区は,巨大都市“東京”の中心区でもあるところから,その特性にたったスポーツ振興の諸施策にこれまでも鋭意努力してきたが,種々の改善すべき課題が未だ残されているところである。
そこで本会議は,さきの諮問を受け,さらに港区の世論調査等でも区民から強く求められているスポーツに関する施策の充実,一方,時代の進展に伴う情報化,高齢化,国際化等の急激な社会状況の変化に対応した区民スポーツに関する施策の充実,またこうした現状をめぐる諸問題や,いま21世紀の到来を目前にして,余暇時間の増大,加速度的に進行していく高齢化,都心区としての定住人口の減少等々を,スポーツ活動における様々な課題として踏まえ,「港区体育指導委員協議会」,「港区スポーツ運営協議会」委員の方々との意見交換なども行い,かつこれらを基本に,現状認識や区民の多種多様な希望や要請を根底とし,長期的な展望をも含めて検討審議してきた結果,以下答申する。
平成元年6月23日
港区社会教育委員の会議
港区社会教育委員の会議