3.港区のスポーツ振興と課題

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 これまで述べてきたように,わが国の高度経済成長や日進月歩と言うに相応しい技術革新等による社会・経済環境の変化は,我々の生活に対して多大な恩恵を与えると同時に,多くの課題も生み出した。こうした状況の中で,職場における週休二日制の普及並びに家庭にまで及んできたオートメーション化により,飛躍的に増加した余暇時間をどう活用するかが,区民にとって,また行政にとっても重要な課題のひとつとなった。
 国際化が一層進む中で,まさに区民として定住している多様な生活意識をもった諸外国籍の人々,生きがいや考え方が千差万別の区民,区内の各企業・事業所で働いてはいるが地域やスポーツへの関心度が大きく異なっている昼間人口,さらには人口の高齢化や核家族化の著しい進行等々わが港区は,極めてバラエティに富んでいる。従って,単にスポーツ施設の整備をするだけでは行政の所期の目的を達成することができないであろう。
 スポーツの振興は,単なる健康維持や人的交流だけに止まらず,民間スポーツクラブ等の健康産業では望めない地域社会の育成やまちづくりといった大きな課題をも包含していると考えられることから,多様な区民の要求に応えることが可能な方策を樹立する必要があることは言うまでもない。
 また,これらの方策が区民の健康増進や地域の活性化に有効に機能するためには,スポーツが区民生活の一部として無理なく溶けこんでしまう,いわゆる“スポーツの日常化”が必要である。
 生涯教育としてのスポーツ振興を推進する場合,各世代の行動範囲についての考慮も必要である。若い世代の人々にとっても,多くの移動時間が必要となるとスポーツ活動は長続きしにくく,スポーツの日常化を妨げることにもなりかねない。しかし,それ以上に児童や高齢者に対しては,より身近な場所で活動できるよう特段の配慮が求められる。また,場所とともに活動時間帯についても配慮し,夜間の利用拡大も図らねばならないと考える。
 スポーツ活動を通して健康増進やまちづくりを望むためには,現実に即した視点での対処が必要である。実際に,健康に不安を持つ人や地域に新しい連帯を求めるひとが増えつつあると言われている今日,区民の各ライフステージに応じたスポーツ振興のための条件整備が,現時点における区政の急務となっている。
 地域の連帯感の稀薄化が叫ばれて久しい。しかし,近年「地域祭り」や「コミュニティ・フェスティバル」が各地で興され始めてきた。そうした背景には,地域住民の協力と連帯が大きな要因となっている。かつての「お祭り」のような連帯ではなく,何か別の要素の連帯感が生まれつつあるように思われる。この新しい動きをより深めていくためには年齢や性別を超え,また国際化の進む中で外国人も含めたスポーツ事業や活動を計画し,参加の機会を増やしていく必要がある。そのためには,それらの事業や活動が生活圏内で展開されるようなプログラムを用意することが重要である。