地価高騰や業務立地化が著しい都心の港区において,スポーツ施設の新たな確保の難しさは,理解できる。しかし,厳しい環境であるからこそ,スポーツ活動の場がより一層求められるのであり,お台場運動広場の廃止が間近に迫っている現在,スポーツ施設の整備を行政の最優先課題と位置付けるべきである。
ア 新たなスポーツ施設の確保
① 地域スポーツ施設
港区スポーツセンターから遠い地域には積極的に土地を確保し,地下部分を含めた建物の重層化により,外国人も加えたより多くの区民が多目的に利用できるスポーツ施設の建設を検討すべきである。
また,区民が身近な場所でスポーツが楽しめるようにするため区立施設の建設に際しては,小体育館や体育館兼用ホールの併設を検討すべきである。
新たなスポーツ施設は,単にスポーツができるだけでなく,利用者の交流やグループ活動ができる場の整備も必要である。
② 公共用地・公共施設の活用
土地の有効活用を図るため,既存施設の空間利用等についても積極的に取り組むべきである。
例えば,既に利用している芝浦水処理センターの覆蓋上部や給水所・プール・テニスコートの上部立体利用も可能と考える。
また,公園等の地下利用の施設配置も検討してみてはどうであろうか。
③ 郊外運動施設
区内において,十分な規模をもつ運動施設を確保することは困難であることから,日帰り可能な場所に運動施設を建設する必要がある。
施設には,公式競技が可能なスペースを確保し,野球・テニス等需要の多い種目の設備をできるだけ配置する。
なお,ミーティングや研修・宿泊が可能な施設を備えることが望ましい。
④ 野外活動施設
都市化が進み,自然に接する機会が減少しつつある区民が,自然の中でキャンプやハイキング等野外スポーツを楽しむ機会をもつ意義は大きい。
施設は,四季を通じて楽しめる自然豊かな場所を選定し,青少年だけでなく家族単位でも滞在し,活動できるようにする配慮が必要である。そこでは,スポーツ活動だけでなく,芸術・文化活動や山村交流等も可能であることが望ましい。
イ 既存施設の活用
① 学校施設
学校施設は,日常生活圏では区民の最も身近な施設といえる。こうした区民の身近にある施設を,今後我々は地域スポーツ振興の活動拠点としていくべきと考える。
学校行事など支障のない範囲内で,学校施設を地域の団体・個人を対象として,放課後や休日・夜間に運動場(校庭),体育館をスポーツ活動に開放することは,学校教育と地域とのつながりを強めることになろう。
開放に当たっては,利用手続きの簡素化や地域の実情に応じたスポーツ活動ができるよう学校や地域の協力が得られやすい組織づくりが必要である。
また,学校施設については,可能な限り地域に開放しやすいよう設備改善を進める必要がある。とりわけ,地域の拠点となる学校については,地域体育館として活用可能な設備の充実やプールの温水化・夜間開放用の照明設備など積極的な施設整備が必要である。
② 民間等のスポーツ施設
現在,テニスコートについては,一部民間施設の区民開放が行われているが,今後企業や官公署にも働きかけ企業等のもつ体育館やグラウンドの一般開放や,区の事業としても使用できるよう積極的な協力要請が必要と考える。
なお,区内には区立の小中学校以外に国・都立や私立の大学・高校も多く,それらの有しているスポーツ施設の区民開放についても積極的に働きかけていくべきである。
③ 公園・道路等
公園・道路等については,それぞれ法的規制を含め利用についての制限があろう。しかし,競技種目等は無理としても,健康維持のための公園での活動や日曜日等に遊戯道路として一定時間を交通規制してローラースケートやスケートボードなどの場としての道路の活用も可能ではないか。
また,ジョギングやサイクリング等に適している特定の道路については,さらに利用しやすいよう整備を行うことを,関係機関に対し強く働きかける必要がある。
④ 施設の利用改善
最近のスポーツ施設の利用層は,拡大・多様化しており,誰でもいつでも利用できる施設の充実が求められている。新たな施設の開設とともに,既存のスポーツ施設については,通年開館や開館時間の延長などの有効活用が望まれるところである。これらは,現在の行政による管理では実現には多大の困難があると考える。目前に通40時間労働時代の到来が予想される今日,スポーツ公社等の設置による弾力的な運営が可能となる方策を検討すべきである。
また,施設には利用者の交流ができる場やエレベーターの設置,段差の解消等障害者への配慮も必要である。