児童会館の建設

  児童会館建設について=お知らせとおねがい
 
 港区芝公園の一角にある子供の遊び場で、戦後農園となつたり、いまはまた雑草の生い繁つてゐる特設児童遊園地に(御成門電停側)新日本の希望を浴びて児童会館が建設されてゐることを御存知でしようか!この建設は、東京で初めてのこころみとして、児童諸君え贈られるものであります。
 児童会館は、子供たちに健全な遊びを与え、その生活をたのしく、ゆたかにしてゆくために、次のような内容と事業をもちます。
○会館の大きさ
 木造二階建     延百六十三坪三五
  1 図 書 室(二階)  四十八坪八七五(児童図書備付)
  2 集 会 室(一階) 百十四坪四七五(舞台、映写室設備)
○ここで催すもの
  A 映画会、音樂会、児童演劇、舞踊、紙芝居、人形劇、児童文化講座、児童作品展等
  B 子供会、子供クラブ、教室の延長として利用、児童指導者、
PTAのための会場等
○誰が児童会館を建てるか!
 この会館は、元築地に住んでゐた婦人で故人となられた佐川ことさんが、日本の子供たちのお役にたつようにと云い遺した金二百万円の資金で、東京都民生局児童課が、東京朝日新聞社と相談して計画の上、港区役所とも話しあつて児童会館を此の地に建てることに決めたのです。この建物を皆さんの力で、新しい日本の文化を築いてゆくために、有効に御利用下さい。
 ただそのまえに皆さんの御父様、御母様に特にお願いがあるのです。そのお願いは、この建物の建設に御力添えをして戴きたいのであります。
 会館は、十月の初めに完成する運びとなつたのですが、建築費の一部と設備費に金百五十万円程費用が足りないのです。
 そこで取りあえず学童諸君の御協力を得るために学校側とP・T・A、の代表者の方々に御打合せした結果、学童一人について金二十円以上の御寄附をお願いすることになつたのであります。
 それだけではまだ予定額に達しませんので、会館の経営に当る財団法人東京都児童福祉協会が主体となつて港区内外各方面の御援助を御願い申しあげるようになると存じますが、東京に初めて建てられる児童会館を港区の皆樣が、主としてこれを御利用になる港区の学童諸君のために、力を合せて建設して戴くという意味で、是非御協力を御願いいたします。
                           東京都港区長 井 出 光 治
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   御 願 ひ
 
 表記の様な計画が本区の芝公園の一角に出現しつゝあります。子供達はこの会館の竣工を今か々々と待ちあぐんで居ります。
 然し今工事が一寸行なやんでおります、然し関係者は一層の努力を続け一日も早く子供達の喜びを見たいと懸命です。
 本区の学童を持つ家庭として、少しでもこの計画に賛成し協力しようと区内の小学校、中学校の校長先生始めPTAの会長さん方全員の相談できまりました。
 本校のPTAの委員会でもこの事に賛成し、出来るだけの資金を集めて寄附することに相談が決定して、皆様方に御寄附を願ふことになりました。
 どうか 右の趣旨を御諒解の上、応分の御協力を切に切にお願ひ致します。
 そして児童福祉法、施行の東京都が着手した最初のこの大事業が港区に建設される名誉も、私達子供達の幸福を願つて是非完成出来る様、祈りたいと思ひます。
  昭和二十三年十二月七日
                    東京都港区立鞆絵小学校長 関     巽
                       ともえPTA会長   牧野内 武 人
  保 護 者 殿

(鞆絵小学校資料)


 
【付記】最初の児童館建設についてのお知らせとおねがいには、あて先が書かれていないが、内容からみて区民各位を対象としたものと思われる。