(一) 地質時代の生物

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【東京層の生物】 港区の地形は、大別すると山の手の台地と下町(および谷すじ)の低地とに分けられるが、これを地質学的に見ると、第四紀洪積世後期に当たる第三間氷期に、古東京湾最後の姿だった武蔵野湾底に堆積した泥土や砂が、やや凝固しながら隆起して陸地と化したものが基盤となっており、前者はその上にさらに関東ロームがおおったまま浸食されずに残った部分であるのに対し、後者はその後襲来した第四氷期による海面低下によって、深く刻まれてできた谷が、氷期の終末とともに海没し、ふたたび海湾堆積物によって埋められた沖積地である。
 したがって、山の手の台地でも、下町の低地でも、それぞれ関東ローム層または沖積層の下部は共通したこの基盤、すなわち東京層と呼ばれる地層から成り立っていることになる。
 港区の生物の歴史も、このために東京層の発達した時代まで遡るのがせい一ぱいで、だいたい過去数万年前後から、せいぜい一〇万年たらずの短い年代にすぎないのは残念である。
 上野の台地から、愛宕山を経て、高輪台に至る、ほぼ南北の崖線を境に、西側が隆起したために早くから陸化し、一時森林も発達していたとみられるふしもある。
 ビルの基礎工事や、地下鉄の建設工事などで、よく掘り出される生物には、多くの寒地系の貝殻のほか、ナウマンゾウやクジラの骨格があるが、これらはいずれも東京層からの出土品で、当時(第三間氷期)は、現在よりも二~三度ほど気温が低かったことを物語っている。また、植物遺体や花粉分析でも、ヤナギ類やハンノキ類をはじめ、現在の温帯に所属する植物のものが多く含まれている点からも、このことが裏付けられている。