(1) 哺乳類と鳥類

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【絶滅した動物】 江戸時代以来、驚異的発展を続けている港区であるが、かつては人口も少なく、広い自然が至るところに多く残されていた時代が長く続いたことは事実であって、当時は各種の動物が至るところで遊びたわむれ合っていたものであった。
 これは、かつての東京層や有楽町層から出土する骨格などをはじめ、周辺各地で発掘された縄文、弥生などの遺跡に含まれたシカ、イノシシ、ノウサギのような骨や、各種の鳥類、魚類、貝類などの遺骸からも推定できることであって、港区内の各地でもこれらの狩猟によって生活を営むに足りるほどの獲物が生息していたことを物語っているのである。
 その後、どのような経過をたどったか、の記録はないが、採りつくしによって絶滅してしまった動物や鳥類も、あるいは存在していたかも知れないが、そのほとんどは死に絶えてしまった、と考えるよりも、江戸の拡大、発展による開発に追われて、武蔵野の奥深くに逃げ込むことによって姿を消してしまったのだ、と考えるほうが自然である。
 それでもまだ、徳川三〇〇年の江戸幕府時代には、少々郊外に出れば鷹狩りも可能なほど動物類は生息していたものである。したがってこのころまでは、港区内にも相当数の動物が見られたはずである。
【カワウソとノウサギ】 明治に入ったころにも、まだそれらの動物が生息していた、との記録が残されているが、なかでも赤坂見付の水辺に多くのカワウソがいたことはよく知られ、溜池が埋め立てられて市電の軌道が敷設された後にまで生息が確認されている。また、昭和初期までノウサギが青山墓地や神宮外苑をはじめ、麻布一連隊の敷地内や麻布十番で捕えられたりしていたのに、これらもいつの間にか姿を消してしまった。続いてイタチも、かつての港区内では、至るところで見られたのに、戦時中に青山墓地で捕えられたのが最後になったようである。
【タヌキ】 大形哺乳動物で最後まで残っていたのはタヌキで、昭和二十四年夏に、白金台の自然教育園で二頭が確認されているが、この二頭が野良犬に食い殺されて以来、港区内ではまったく見られなくなったのは残念である。キツネは明治末期に絶滅してしまった。
【現存の哺乳類】 現在、港区内に生息する哺乳類は、ネズミが数種とコウモリ、モグラ、リスの少数種がある。あとは野犬と野良猫が夥しい。しかし、時おり住宅地や社寺などで、タヌキが発見されることがあるところを見ると、あるいは港区内にはまだタヌキが生息しているのかも知れないが、これらは恐らく飼育中のものが逃げ出したものか、それが野生化したものではないかと思われる。
【現存の鳥類】 鳥類は港区内には比較的多く生息しており、留鳥と渡り鳥を合わせると六〇種にも及ぶが、これは都心区としては異例ともいえることである。しかし、港区内で繁殖している鳥、となると激減し、せいぜい一〇種ほどになってしまう。また最近では、飼い鳥が逃げ出して野生化し、区内で繁殖している例もあり、しかも逆にふえる傾向にあるのは、植物と同様に都市環境の変化に対して適応性の強いものが外国産の種類に多いからであろう。
 キジも港区内では、よく見つかるが、これは皇居、東宮御所、明治神宮あたりから飛来したものと見てよく、港区内には定住していないのではないかと思われる。