捕虫網でチョウを追いまわし、モチ竿でトンボを剌して遊んだのは、つい一〇年ほど前までの話であるが、現在のようにほとんどチョウやトンボが目にふれなくなったのは、ほんの数年前からに過ぎないことである。
しかし、ここ二~三年、ふたたびこれらが姿を見せはじめたのは、それだけ自然保護思想がゆきわたり、環境破壊の速度が低下したためかと思われる。今後、これらのものが絶滅してしまわないように注意してゆきたいものである。
また、人間の生活環境の変化に応じて、昆虫類にも消長がみられ、絶滅したり、逆に増えたりする例もかなり多い。絶滅した例ではカイコの原種と見られるクワコやタマムシ、それにシラミやヒトノミなどがあり、増えつつあるものにはアオマツムシがある。これは米国産の鳴虫で、高い木の梢にとまり、真夏から秋にかけてカン高い声で昼夜鳴き通している。
これなどは増えてもまだよかろうが、ゴキブリとナンキンムシの増加は、環境衛生の点でもあまり感心ができないことである。
そのほか、明治以降だけでも昆虫の生息には非常な消長があって、有益なものから害虫に至るまで、時に絶滅したり、またある時には異常発生をくりかえしたりしているのである。