港区における先史時代文化の発展を、どの程度まで明らかにし得ているかを細説するにあたっては、まずこんにちの時点において、わが国における先史時代の研究がどの程度の成果をあげているかを正確に認識しておく必要があることは言をまたないところであろう。もちろん、それらを詳述することは本稿の趣旨でもなく、その紙数にも余裕があるわけではないが、冒頭に触れたように、遠く先史時代においても、港区内に他の地域とはまったく異なった文化の存在や、発展のプロセスがあったとは考られないし、そのような事実の片鱗さえも窺い知ることができないのも当然といえるからである。そこでまず、わが国における先史時代の文化に関する考古学的研究の成果を略述することから本論にはいることとする。