(三) 古墳時代の遺跡

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 古墳時代ということばは、かなり誤解を招きやすいと思うが、その文化の特徴とするところは、一般に稲作農耕が普遍化し、階級社会の発達がいちじるしく、支配者が死者の墓として巨大な墳丘をもつ、いわゆる古墳を盛んに築造した点にあって、五、六世紀を中心とした時代と考えられている。
【古墳時代遺跡の特色】 したがって、この時代の遺跡としては住居跡、村落跡、水田跡――最近ではしだいにその発見例を増しつつある――など、生活・生業関係のそれに加えて、土を盛って造った巨大な墓、すなわち古墳があり、なかでも古くから研究の対象が主として古墳に向けられていた事実に注意すべきであろう。
 港区内においても、この時代の遺跡・遺物が必ずしも多いとはいえないが、芝公園内の丸山古墳をはじめいくつかの古墳発見の報告がある。
 以下、既発見のそれらについて概要を述べるが、ただその前に注目すべき点を一言しておきたい。すなわち、港区内の古墳それ自体は、前述の丸山古墳をはじめとする約一〇基の芝公園古墳群や三田四丁目の亀塚などがあるが、まだこの時代の集落跡が発見され調査された例を聞かないことである。あるいは、それらの古墳を遺(のこ)した人々の居住地ないしは耕作地が低地帯にあって、早く市街地化したために破壊し尽されたのかもしれない。このことは、研究者にとっては重要な手がかりを失ったわけで遺憾にたえないしだいである。それはともかく港区内の古墳について、まず亀塚から記述を進めよう。