(二) 豊島郡と荏原郡

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【豊島・荏原郡の郷】 律令制下の郡の下には里が置かれ、五〇戸をもって一里となし、三~四〇里を郡となしたが、里は、霊亀元年(七一五)の式により郷に改制されている(『出雲国風土記』)。二三区地域の大部分を覆うとされる豊島郡と荏原郡は、『和名類聚抄』によると、次の郷を各々統轄している。
 
  豊島郡止志末
   日頭比乃度 占方宇良加太 荒墓安良波加 湯島由之万 広岡 余戸 駅家
  荏原郡江波良
   蒲(〓)田加万太 田本多毛止 満田上音下訓 荏原江波良 覚志加久之 御(美)田三多 木田木多
   桜田佐久良太 駅家
 
 なお、余戸は一郷五〇戸に満たず、郷名を付すに及ばなかったもの、駅家は、諸道に置いて官使の人馬の継立てを行ない、郷と同じ行政区画をなしたものをいう。この二郡を令制の一郷五〇戸で単純計算を試みると、五郷一余戸一駅家の豊島郡が三〇〇余戸、八郷一駅家の荏原郡が四五〇戸前後ということになるであろう。
【各郷の現在地比定】 これらの郷が各々現在のどの地域に該当するかは、諸説があるところだが、ここでは『日本地理志料』の説を掲げよう。
 
  豊島郡 日頭(小日向、小石川、牛込、市谷、金杉、関口、音羽、高田、雑司谷、池袋) 占方(舟方、尾久、町屋、三河島、箕輪、金杉、山谷、山宿、橋場、今戸、浅草) 荒墓(新堀、谷中、上野、下谷、根岸、坂本、田端、中里) 湯島(駿河台、神田、根津、駒込、染井、巣鴨) 広岡(上練間、下練間、上石神井、下石神井、関、中村、田中、谷原) 余戸(柏木、大久保、戸塚、角筈、幡谷、代代木) 駅家(豊島、王子、滝野川、梶原、上板橋、下板橋、十条、稲付、神谷、赤羽根、岩淵、袋、蓮沼)
  荏原郡 蒲田(蒲田、大森、女塚、小林、御園、町屋、蓮沼、堤方、徳持、市倉、久原) 田本(鵜木、峰、沼部) 満田(古川、道塚、原、安方、今泉、矢口) 荏原(中延、小山、戸越、桐谷、南品川、碑文谷、石川、池上、雪谷) 覚志(麹谷、羽田、萩中、下袋、雑色、八幡塚、高畑) 御田(上高輪、下高輪、北品川、大崎、高輪台、今里、白金、白金台、永峰、谷山、小山) 木田(赤堤、代田、若林、馬引沢、奥沢、太子堂、三宿、池尻、上中下目黒) 桜田(芝、麻布、麹町、四谷、赤坂、青山、飯倉、原宿、今井、隠田、千駄谷) 駅家(大井、不入斗、新井宿、馬込、蛇窪、居木橋)
 
 諸説により多少の異同はあるが、これによる限りは、港区地域は、ほぼ荏原郡の御田・桜田両郷の内とみることができよう。