表20は、内藤昌が推計した江戸の住区種別人口密度である。武家人口とともに多少過大評価されていると思われるが、それにしても町人地では人口密度が一平方キロ・メートルにつき六万人を超える過密ぶりである。江戸人口の半数を占める町人が、わずか一六%の居住面積のところへ押し込められていたのだから当然であるが、江戸時代後半の江戸町人の居住環境がいかに劣悪であったか容易に想像がつくであろう。
表20 江戸の人口密度
住区種別 | 概算人口 | 面積(明 治2年) | 人口密度 |
武家地 寺社地 町人地 | 人 65万 5万 60万 | km2 38.653 8.799 8.913 | 人/km2 16,816 5,682 67,317 |
総 計 | 130万 | 56.365 | 23,064 |
(注) 内藤昌『江戸と江戸城』より引用。
港区地域の人口密度は、かりに町人人口を九~一〇万人、町人地を旧三区(芝・麻布・赤坂)の一〇%とすると、一平方キロメートルあたり五万四、〇〇〇~六万〇、〇〇〇人となる。武家屋敷や寺社地の比率が高く、しかも若干の農地も混在していた港区地域は緑も比較的多く、江戸全体の平均水準より、居住環境はやや良好だったといえるだろう。