(二) 地域と商業――「江戸・商人名前カード」から――

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 近世の政治経済文化の中心地である江戸の商業活動については、一部の業種を除いて、実際にいかなるものであったかを詳細に知ることは、資料的な限定もあって、いまのところ極めて困難である。この点は、江戸市中の城南地域を形成する港区地域についても同様と考えられる。
【『江戸商人名前一覧』】 本稿では、もろもろの資料的な限定を配慮にいれながら、まず手始めに『三井文庫論叢・第六号』所収になる「江戸商人名前一覧――江戸時代後期を中心とした――」の作製過程において、その基礎的な材料となった江戸商人名前カード(三井文庫蔵)約四万枚のうちから、現在の港区にあたる地域に居住するすべての商人たちを選出、採集整理することを試みた。この『名前一覧』の作製過程と出典、およびその利用の詳細については、前掲書に付記されている作製者田中康雄氏の解説を参照されたい。
 これら厖大なカードに記載されている商人名前は、主として江戸時代後期を中心にするものであるが、その出典によって若干の時間的な幅がある。この時代的な限定、あるいは名前の重複を避けるため、また、厖大ゆえにできるだけ繁雑を避けるために、まことに遺憾ではあるが、結局本稿が最終的に利用したのは、いわゆる旧幕引継書類(国立国会図書館蔵)の一部分をなす『諸問屋名前帳』に採録されている商人名前に限ることになった。これによって、何よりもまず港区地域の商人・商店の存在を確認することから始めた。
【『諸問屋名前帳』】 『諸問屋名前帳』に収録されている商人名前の実数は、この『名前一覧』全体の半数以上を数え、その業種もかなり網羅的であり、出典のなかでも最も詳しい資料となっている。そして、そこに記載されている情報の一切をカード化したのが、商人名前カードである。その内容としては、商人名前あるいは屋号、住所、相続譲渡、転宅、改名、居住状況とその変更等々が記録されている。なお、この資料の成立年代は、各冊により若干の相違をみるが、諸問屋再興時の嘉永四年(一八五一)三月から、嘉永七年四月までとみられる。
 ただ、ここに収録されている商人たちの多くは、その帳名のとおりある一定の経済規模を維持し、また問屋株を所持した者たちとの限定を必要とする。すなわち、これらの商人たちのなかには、業種によって小売商を兼ねる者もかなりあったと考えられるが、多くは一般庶民の消費生活に直結した小売商人とは考えにくい商人たちである。
【株仲間】 このように、江戸の商業活動とは、ほぼこの株仲間(商人あるいは手工業者の同業組合)の盛衰によるといっても過言ではない。時代と業種にもよるが、一般に江戸の商人は、問屋、仲買、卸売、小売とに峻別される。問屋のなかには、貨物を荷主から購入して、損益を負担して仲買に売り渡す普通問屋と、荷主に委託されて口銭を取って貨物を仲買に売りさばくものとがあり、それぞれで株仲間を組織していた。また、仲買は小売商の注文に応じて、問屋より買入れて、注文主に売りさばく場合と、逆に自分から見込んで問屋より買入れて小売商人に売り渡す場合もあった。そして、これら問屋の動静が、幕府の経済政策と相まって長く江戸市中の商業活動を左右することになった。
【幕府と問屋】 江戸の問屋は、すでに慶長、元和のころに発生をみるが、それが組織だったものになるのは、元禄七年(一六九四)大坂からの商品貨物を取り扱う江戸の荷主たちによって結成された十組組合、菱垣廻船積仲間組合が成立した時点であろう。当初は問屋の経済独占を警戒していた幕府も次第に問屋の存在意義を認めるところとなり、遂には逆に問屋を通じて江戸市中の経済統制に利用するまでになる。享保六年(一七二一)十一月、幕府は町触れを出して諸問屋組合の名簿を提出させ、問屋を公認するところとなり、これにたいして問屋側は冥加金の上納などの義務を負った。そしてこれを機に幕府の保護をうけ、独占的な市場支配権を獲得した商業資本としての問屋は江戸市中の繁栄を担う経済上の実力者としての地位についた。こうしたところから蔵前の札差や豪商の豪華で贅沢な生活は、華かな江戸文化の創造にも繋がったといえよう。
【水野忠邦の改革】 しかし、天保改革を推進した老中水野忠邦は、物価引下げのための方策として、江戸市中の経済を独占的に握る株仲間制度に着目し、その市場における保護と特権の廃止を決意、株仲間の停止を宣した。ところが、江戸市中の経済は、すでにこれら商業資本=問屋に多くを依存しており、仲間組合の解散、株鑑札の撤廃、冥加金の停止などは、かえって市中の経済秩序を混乱に陥れることになった。
 すなわち、商取引の定律は乱れ、商人の信用も失墜、小売商人も職を失い、物価は下がることなく、なお不安定のままに、かえって江戸市中の経済状況は混沌としてしまった。ここに再度問屋の復活をもって、江戸市中、ひいては幕府の経済復興が建議され、嘉永四年(一八五一)三月、幕府は問屋再興を令達したのである。そして、ここに再興された組合は約八二業種に及び、本稿の利用した「商人名前カード」の根本資料となった『諸問屋名前帳』が作成されることになる。問屋再興により、組合加入は随意となり、業種とともに、その実数も急増している。また、相続や譲渡、移転なども以前に増して激しくなり、その状況は結局、明治維新まで続いている。
 以上のような資料的な限定と性質を考慮にいれながら、「商人名前カード」を利用して『名前帳』に記載されている諸問屋を現在の港区地域の範囲において採集整理してみたのが以下につづく表30である。
 
 
 ここでは港区地域をさらにブロックごとに分け、その上で各町ごとに諸問屋の居住状況をみたが、その区分は文政の『町方書上』に従った。また、業種については江戸市中全体では八二種に及ぶが、港区地域だけでは、その数も限定される。本稿では右表作成上の便宜から港区地域に二軒以上見出せる業種について、そのすべてを採録することとしたが、結果は右表のように三〇種に類別できた。このようにして同表は、町ごと、あるいはブロックごとに諸問屋の存在状況をとらえ、さらに業種別にしてその相関をみることにした。なお、付属的に諸問屋の居住状況を家守(家主)、家持、地借、店借の四つの分類で付記しておいたが、さらに、その状況を業種別に現わしたのが表31である。この点も業種の性格との関連、およびその規模などの関連において参考にされた。
 

表31 業種別・居住状況

     居住
       形態

業 種
(a)
家守
(家主)
(b)
家持
(c)
地借
(d)
店借
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
地廻米穀問屋屋屋問
脇店八ヶ所組米屋
舂米屋
味噌問屋
地廻り塩問屋
茶問屋
下り鰹節問屋
豆腐触次世話人
肴問屋
竹木炭薪問屋
炭薪問屋
炭薪仲買
両替屋
紺屋
地廻水油問屋
水油仲買
魚油問屋
地掛蠟燭問屋
地漉紙仲買
堀留組畳表荒物問屋
住吉組荒問屋
小間物問屋
雛屋
団扇問屋
地本双紙問屋
版木屋
鋳物師
樽職人
人宿
六組飛脚問屋
3
3
60



1

8
3
6
174
13
12

1


3
1



1
1



25
7
24
14
53
3




12
3
5
92
42
3
1

1

2


1


1



26
9
21
16
27
11

2


5
10
9
72
66

1
1

4
8
2
4
4
3
5
2
1
1

17
7
5
5
251
4
2

1
6
25
4
8
344
6
63


1
4
7



2
1
11
12
1
7
64
59
53
38
391
18
2
2
2
6
50
20
28
682
127
78
2
2
2
8
20
3
4
5
5
7
15
13
2
7
132
82
3222922998931,806

(注) 三〇業種のうち記載のあるもののみを収録した。


 
 「商人名前カード」および『名前帳』に記載されている情報は、江戸市中の商人たちの実態や活動状況を知るうえで、その利用の方法によってさらに多様な利用上の可能性をもつと考えられる。本稿では、紙面の都合上、そのためのひとつの試みとして、江戸の城南にあたる港区地域に限った商人たちの分布状況の検討のみに止めた。
 近世江戸の商業活動は、町人たち(商人と手工業者)を中心にかなり隆盛になっており、いわゆる商業流通圏も漸次拡大している。しかしまた、当時の商業活動は、なお何らかの形で地縁的であり、地域との密接な関わりをもっていたと考えられる。すなわち、商業的な立地条件ともいうべき各町々の地域的な特徴が、どのような種類の商業との結びつきをもつか、あるいはまた、その相互関係の特徴を知ることは、この地域全体の商業活動を把握するためのひとつの大きな前提となろう。以下、本稿では芝浦と呼称されてきた海岸線、汐留川や新堀川に沿った河岸場一帯、この地域と外界とを結ぶいくつかの街道と、そこに至る地域内の主な道路など、商業活動の主要な条件となるものに従って、町々と商業の結びつきを具体的に概観してみた。なお、表30・表31を基本とするが、その欠落部分を多少とも補うために、やや時代を遡るが、文政七年刊『江戸買物独案内』および『名前帳』とほぼ同時代の『江戸名物酒飯手引草』(嘉永元年刊)を参照し、表32を作成した。また、これには『江戸図鑑綱目』(元禄二年刊)および『七十五日』(天明七年刊)などからも採録して参考に供しておいた。
 

表32 『江戸買物独案内』その他にみる商店の業種と品目

町名(町名主名)および業種・品目出典
▶兼房町(兼房甚次郎)
 吾妻餅・嶋林次郎
 御川御菓子屋・鯉屋・和泉掾橘重長
 御膳生蕎麦・砂場安兵エ
▶善右エ門町(広瀬平八郎)
 京御菓子所・肥州産・福嶋屋播磨大掾
▶久保町(伊藤惣右エ門)
 外科・坂養庵法眼
 表具師・中尾道久
 家伝・順気剤・堺屋太兵エ
 金花煎・ぢのめうやく・調合所・堺屋平次郎
 御鼻紙袋・御煙草入所・万袋物・大坂屋勘助
 御膳やまと寿し・翁屋勘七
 会席即席御料理・清水桜伝兵エ
▶太左エ門町(伊藤惣右エ門)
 水油仲買・三文字屋善兵エ
 茗荷寿し・福本治郎兵エ
▶備前町(彦十郎)
 刀鍛冶・出雲大掾・藤原吉武
 越後国室野村・洞泉寺かけかったんご・丹波屋嘉兵エ
 家伝妙方かっけ・はれ病・あづき薬・勢州長嶋藩永井玄厚
 信州更料そば・増田
▶和泉町(井上勘助)
 京御菓子所・鯉屋織部
 銘酒滝水・四方久兵エ(味噌問屋)
▶本郷六丁目代地
 会席即席御料理・清水屋善治郎
▶芝口一丁目西側
 名物御茶漬所・えしまや
▶二葉町(兼房甚次郎)
 御菓子所・亀沢屋
 御菓子所・市原
 御菓子所・丸屋
 諸国銘茶肆・青風軒・中屋南之助
 竹皮問屋・大和屋喜兵エ
 御宮水戸御用御菓子司・鈴木若狭掾・藤原吉次
 即席御料理・増田屋善右エ門
▶芝口一丁目(深野長兵エ)
 本屋・彦兵エ
 御菓子所・虎屋
 末広酒・菊屋長左エ門
 蕨縄問屋・越後屋幸治郎
 下傘問屋・越後證幸治郎
 畳表問屋・越後屋幸治郎
 呉服太物所・松坂屋八助
 醤油酢問屋・矢野屋喜兵エ
 瀬戸物問屋・吉嶋屋市兵エ
   〃   松屋治郎兵エ
 会席即席御料理・綿屋惣吉
 小松寿し・伝治郎
▶芝口二丁目(〃)
 御菓子製所・清兵エ改メ蟹屋半次郎
 御膳・御寿し・伊賀屋万吉
 会席即席御料理・伊勢屋源七
 江戸前・御蒲焼・尾張屋宇兵エ
▶芝口三丁目(〃)
 医師・土岐格菴
 能小鼓・幸五郎兵エ
 歯磨・兼康友玄
 書物所・丸屋徳右エ門
 諸国銘茶問屋・松岡堂・伊勢屋嘉兵エ
 即席御料理・宇治里
 白菊そば・出世庵市五郎
 御膳・生蕎麦・大坂屋市五郎
▶源助町(長谷川次郎右エ門)
 能脇師・高安彦太良
 能笛・長命吉右エ門
 〃  長命清左エ門
 狂言師・大蔵弥太郎
 とくさ餅ほか・近江屋半七
 即席御料理・福山金八
▶露月町(山崎源八)
 鰻御蒲焼所・大和田兼吉
 即席御料理・泉屋庄左エ門
 江戸前・御蒲焼・富沢斧三郎
▶柴井町(志村八兵エ)
 糸物問屋・御柄糸御下緒・中屋弥兵エ
 竹皮問屋・伊勢屋平七
 唐和薬種十組問屋・大坂屋六兵エ
 蘭方・美白香弘所・中屋弥兵エ
 土産物・風呂敷所・中屋弥兵エ
 御伽羅之油・京都紅白粉・竹下山城掾
 真製艾・尾張屋金右エ門
 即席会席御料理・近江屋又兵エ
 即席御料理・伊兵エ
 小松寿し・常治郎
▶新銭座町(益田弥兵エ)
 能小鼓・宝生新九良
▶宇田川町(益田孫兵エ)
 伽羅屋・林法喜
 能太夫・今春八左エ門
  〃 ・大蔵庄左エ門
 江戸流本栗醴酒所・大黒屋新兵エ
 なにはめいぶつ御膳御鮓所・亀屋九右エ門
 地本問屋・若松屋与四郎
 御銘茶問屋・南竜軒・金子藤兵エ
 紙問屋・越前屋源兵エ
 尾州御用・御煙管師・藤田屋弥左エ門
 御糸・硝子細工所・千地屋藤内
 白粉紅問屋・丁子屋文蔵
 釘鉄銅物問屋・角屋与兵エ
 家伝・延寿返魂丹・越前屋源兵エ
 墨筆硯問屋・東書堂・摂津国屋藤兵エ
 御伽羅之油・丁子屋文蔵
 瀬戸物問屋・尾張屋加左エ門
 御膳あいおい鮓・高砂屋太助
 御膳生蕎麦・大村松五郎
▶三島町(大久保藤兵エ)
 漬物類・文字屋
 御胡麻油揚所・尾張屋嘉左エ門
 地本問屋・喜霍堂・佐野屋喜兵エ
 地本問屋・若狭屋与市
 地本問屋・甘泉堂・和泉屋市兵エ
 諸国銘茶問屋・竜草軒・海老屋吉之助
 紙煙草入問屋・大坂屋伊助
 御袋物類数品・御煙草入・村田屋弥七
 唐御菓子所・御酒菜・文字屋新右エ門
 尾州御用・硝子細工司・小山弥兵エ
 硝子細工所・紅毛油絵師・蘭画斎・雛屋弥助
▶神明町(植山孫右エ門)
 花の露・林喜左エ門
 乗篭細工・大谷屋作右エ門
 塗物問屋・西村屋清八
  〃   奈良屋幸之助
 乾物おろし・山田屋久兵エ
 会席即席御料理・車屋安兵エ
 江戸前御蒲焼・平野屋安五郎
 長門寿し・江戸屋治三郎
 御菓子・大山場本挽物類品々・ひめたや忠蔵
 喜世留渡世・柳屋清兵エ
▶神明門前町
 能小鼓・大蔵長左エ門
 能太鼓・高安三太郎
 能太鼓・今春又二郎
 万糸組物所・増田屋安兵エ
 糸細工いろいろ・硝子細工・百千陸奥大掾
 扇問屋・近江屋清兵エ
 会席即席御料理・宇の里九右エ門
 陰陽師・菊川伯耆
 本屋・中野左太郎
 根元・大ぶつもち・多国屋清右エ門
 御名酒所・御薬酒所・梅田製
 刃金燧・升屋三郎兵エ
 常盤麩・越後や五兵エ
 書物問屋・泉栄堂・和泉屋吉兵エ
 書物問屋・小酉堂・和泉屋新八
 万打物鉄物・名古屋久治郎
 御紙子問屋・江戸一家・伊勢屋吉右エ門
 筆墨硯問屋・五雲堂・播磨屋徳兵エ
 筆墨硯所・高木土泉
 万袋物所・鶴嘴屋千蔵
 御伽羅之油・御花の露・花露屋
 唐木細工・御琴三味線師・菊岡若狭掾・藤原正重
 江戸地張御煙管師・柳屋清兵エ
 唐物類・紅毛物品々・美濃屋又七
 御料理・御好次第仕出シ寄合・車屋万兵エ
 書物問屋・尚古堂・岡田屋嘉七
▶七軒町
 蠟燭問屋・橘屋庄次郎
 御煙管所・大黒左一
 会席即席御料理・平野屋庄兵エ
▶片門前一丁目(大久保藤兵エ)
 唐木細工・御琴三絃師・亀屋忠八
▶片門前二丁目(〃)
 京御菓子司・虎屋和泉掾
▶中門前(大久保藤兵エ)
 狂言師・脇本佐左兵エ
▶浜松町一丁目(大場惣十郎)
 鍋釜問屋・釜屋権右エ門
 御菓子所・二葉屋伊勢掾
 瀬戸物問屋・松坂屋長右エ門
 御膳生蕎麦・千秋庵
▶浜松町二丁目(〃)
 御伽羅之油・近江屋忠兵エ
 御料理御茶屋・室屋
  〃    三河屋
▶浜松町三丁目(〃)
 諸国銘茶所・巴東軒・越後屋治郎右エ門・弥八
 江戸前御蒲焼・尾張屋
▶浜松町四丁目(〃)
 瀬戸物問屋・伏見屋九右エ門
 足袋股引所・ねつみや嘉七
▶西の久保
 医師・平賀玄純法眼
 〃  吉田長達
 〃  正賀玄純法眼
 京丸山かるやき・ながい長兵エ
 御菓子製所・壺屋出羽掾・藤原兼英
 延寿長光丸・御眉下地・壺屋出羽掾
 乾物類・下総屋清兵エ
 糸物類・万糸組物類・万屋六兵エ
▶新下谷町
 御しゃうじん・今井儀左エ門製
 御結納御所・伊勢屋金兵エ
 嵯峨御所御用・御菓子所・福本越前掾・藤原忠光
 水戸御用御弓師・加藤万吉
▶天徳時門前町(又左エ門)
 御膳・手打生蕎麦所・小倉平兵エ
 即席御料理・鹿嶋屋
 江戸前御蒲焼・栗本
 名物あなご・相模屋
▶神谷町(林藤兵工)
 即席御料理・宮川
 春日寿し・木村屋惣次郎
 御膳生蕎麦・加賀屋
▶普門院門前
 極製御薬艾・吉野屋小兵エ
▶虎の門外
 御菓子店・住吉屋
  〃   江並屋越江
  〃   桜田丁・虎屋
 手打蕎麦・みなと屋
▶金杉通一丁目(内田勘右エ門)
 御料理御茶漬・伊勢屋喜八
 御膳生蕎麦・竹島長蔵
▶ 〃 二丁目(〃)
 即席御料理・三河屋伝吉
 江戸前御蒲焼・海老屋鉄五郎
 岩戸寿し・松屋安吉
▶ 〃 三丁目(〃)
 くわい中・しらみうせ薬・なべ屋源兵エ
 富士寿し・駿河屋久太郎
▶西応寺町(中野助三郎)
 真製艾・尾張屋金次郎
 陰陽師・喜多川相一
▶本芝二丁目(内田八郎右エ門)
 都寿し・十一屋与八
 御膳生蕎麦・三河屋仁三郎
▶ 〃三丁目(〃)
 明樽問屋・徳嶋屋加七
▶ 〃四丁目(〃)
 御膳生蕎麦・清好庵小兵エ
▶田町二丁目(高橋庄次郎)
 陰陽師・佐藤伝之道
▶ 〃三丁目(〃)
 諸国銘茶所・東竜軒・大和屋徳兵エ
 陰陽師・水上仙竜
▶ 〃四丁目(〃)
 延寿反魂丹・さかいや長兵エ
 御料理御茶漬・橋本儀兵エ
 白菊そば・上総屋
 陰陽師・金丸弥門
▶ 〃五丁目(〃)
 鍋釜問屋・釜屋添八
▶田町六丁目(〃)
 畳表問屋・松屋吉兵エ
▶ 〃七丁目(〃)
 和漢筆墨硯石所・文化堂・中村文右エ門
▶ 〃八丁目(〃)
 足袋股引所・佐野屋吉兵エ
▶ 〃九丁目(〃)
 紙問屋・万屋甚兵エ
 下り傘問屋・碇屋市郎兵エ
  〃    万屋甚兵エ
 水油仲買・万屋甚兵エ
 線香問屋・万屋甚兵エ
 即席御料理・伊勢屋鉄五郎
▶同朋町(西田藤八)
 江戸前御蒲焼・尾張屋藤兵エ
 末広そば・越後屋庄之助
▶松本町(浦口清左エ門)
 御膳生蕎麦・丸屋
  〃    松屋
 明樽問屋・大口屋金兵エ
▶新網町代地
 水油問屋・荒木屋伊三郎
 呉服太物所・あら木伊兵エ
 陰陽師・真田伝蔵
▶三田一丁目
 新玉寿し・二葉屋
▶ 〃二丁目
 水油問屋・伊勢屋徳三郎
 更科そば・春日野
▶ 〃三丁目
 吉野寿し・上総屋平吉
 菊寿し・菊屋豊次郎
▶三田台町(増嶋惣左エ門・老沼庄助)
 刀鍛冶・越前住・宇田国次
▶車町(岩井四郎右エ門)
 会席即席御料理・尾張屋喜八
  〃      山口半七
  〃      花波屋重五郎
  〃      中屋彦兵エ
  〃      泉屋長吉
 即席御料理・万屋清八
  〃    石沢清吉
 浦しまそば・岡田屋寅吉
 御膳生蕎麦・亀屋
▶白金台町六丁目(柳下甚右エ門)
 根元唐豆腐乾・美濃屋吉兵エ
▶元赤坂町
 せんへい色々・三好屋侈瀉
 御袋物所・御鼻紙入・鍵屋利兵エ
 鰻御蒲焼・巴屋吉左エ門
 江戸前御蒲焼・深川屋喜兵エ
 長内寿し・出雲屋亀吉
 御膳生蕎麦・福寿庵宇兵エ
▶表伝馬町
 御菓子店・ゑひす屋
 乾物類卸・御膳海苔・丸屋十兵エ
 蠟問屋・出雲屋弥太夫
 紀州御用御筆師・小法師兵史
 瀬戸物問屋・河内屋利助
▶表伝馬町一丁目(吉沢主計・小宮善右エ門・高野利右エ門)
 手打蕎麦・上総屋市右エ門
 御膳まき古もち・御重詁・菊屋喜住
 唐菓子品々・巻せんべい・小池敦製
 御印判師・長楽斎・芝山与兵エ
 御茶問屋・松栄軒・松坂屋伝兵エ
 諸国御銘茶所・千寿軒・近江屋五兵エ
 御鼻紙入・御煙草入・三河屋長兵エ
 醤油酢問屋・天川屋兵四郎
 会席即席御料理・山の井清兵エ
 即席御料理・梅本久蔵
  〃    丸屋長右エ門
 御膳生蕎麦・曻雲亭宇兵エ
▶表伝馬町二丁目(〃)
 御膳干饂飩・干そば・山形屋近江
 御菓子店・山形屋近江
 名代御鮓所・吉野屋藤右エ門
 御伽罹之油・小間物類品々・近江屋嘉右エ門
▶裏伝馬町一丁目(村木四郎兵エ・堀江惣左エ門)
 三色干うんどん・切そば品々・山中屋又兵エ
 名酒品々・万屋善兵エ
▶田町二丁目(〃)
 塗物問屋・近江屋九兵エ
▶田町三丁目(〃)
 小児薬洪宝丸・笹屋与兵エ
 水戸御用御弓師・上村弥兵エ
▶田町四丁目(〃)
 御菓子所・近江屋幸七
 御菓子所・海老屋大和
 手打蕎麦・松葉屋半四郎
 しっほく味噌・桑田屋製
▶田町五丁目(〃)
 瓢簞寿し・角近江屋伊之助
▶一ッ木町(秋元八郎左エ門)
 巻せんべい・中嶋屋惣兵エ
 あまさけ・浅草海苔・植木屋惣七
 御菓子製所・鈴木若狭掾・藤原保豊
 扇問屋・泉屋角之丞
▶芝御霊屋御掃除屋敷代地
 即席御料理・森川屋重右エ門
  〃    八百勘
 江戸前御蒲焼・岩附屋喜三郎
 初音寿し・万屋作次郎
 御膳生蕎麦・能登屋安兵エ
▶氷川門前
 江戸前御蒲焼・宮下・藤屋武助
 鳴戸寿し・宮下・大坂屋金次郎
▶赤坂溜池端
 唐物屋・善兵エ
▶善光寺門前町(吉兵エ)
 麵縁干そは切・桔梗屋善兵エ
▶御手大工町(沢木七左エ門)
 京御菓子所・三升屋六右エ門
▶麻布谷町(米良太左エ門)
 手打蕎麦・上総屋
▶麻布市兵エ町(黒沢市兵エ)
 将碁・伊藤宗看
 〃  大橋宗与
 御菓子所・あさひの・山城屋儀兵エ
 本方竜王調血湯・大阪屋徳兵エ
 御伽罹之油・鹿嶋屋佐兵エ
 蒲焼所・新井伝吉
▶飯倉二丁目(会田兵庫)
 紙問屋・万屋小兵エ
 下り傘問屋・万屋永助
 水油仲買・遠州屋吉左エ門
  〃   万屋亀二郎
▶飯倉三丁目(〃)
 文房記具・蠟石品々・福養堂市郎兵エ
 小間物袋物処・田毎屋弥右エ門
 扇問屋・駿河屋新兵エ
 筆墨硯問屋・対山堂・松田屋善右エ門
 即席会席御料理・涵月亭・松坂屋喜三郎
▶飯倉四丁目(会田兵庫)
 蠟問屋・駿河屋専右エ門
 御乗物師・岡田屋弥兵エ
▶飯倉五丁目(〃)
 あけぼの餐・京橋屋幸助
 塗物問屋・紀伊国屋楠太郎
▶狸穴町(〃)
 草履問屋・越後屋藤右エ門
▶永坂町(〃)
 御膳信州更科蕎麦所・布屋太兵エ
 更科生そば・布袋屋太兵エ
▶南日ヶ窪町(安藤次郎右エ門)
 御菓子所・鳥居坂・三浦屋
▶坂下町(嶋田又左エ門)
 御らさ梅所・漬物類品々・三河屋正種
 即席御料理・伊勢屋重兵エ
▶飯倉新町
 諸病妙振出・大坂屋九兵エ
▶本村町(嶋田又左エ門)
 御菓子所・やなきや
 御膳干うんとん・天真寺前・ふじや平兵エ
▶四ノ橋
 蒲焼・尾張屋藤兵エ
 江戸前御蒲焼・尾張屋藤兵エ

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(注) 出典は次の略字で示した。
 図‥『江戸図鑑綱目』(元禄2年)  続‥『続江戸砂子』(享保20年)
 七十五‥『七十五日』(天明7年)  案‥『江戸買物独案内』(文政25年)
 備‥『御府内備考』(文政12年)  草‥『江戸名物酒飯手引草』(嘉永元年)
 なお町名の下のかっこ書きは町名主名である。