【大正時代のタクシーとバス】 東京に最初のタクシーができたのは、太田黒元雄氏によると、大正のはじめだったらしい。
「ただしそれは僅かに二台で、新橋駅と上野駅の間だけしか運転しなかった。そして料金はたしか一円四十銭ではなかったかと思っている。大正六年頃には、いろいろな名称のタクシーが現われはじめた。しかし、それは大概停車場を根拠地にしていて、往きだけしか客を乗せなかった。従って、市中でタクシーを見掛けて手を挙げても十中八、九は車を止めようともしないで、一目散に根拠地へ帰って行くのであった。」(太田黒元雄「自動車雑記」『セルパン』十一年二月号)
なお、乗合自動車(バス)は大正八年(一九一九)に東京市街自動車が創業され、同年三月に上野――新橋間の運行が開始された。