(2) 区画整理

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 震災前の東京は、市街の宅地割りから区画の形に至るまで、実に不規則で、初めて人を訪ねて場所を探しても、地番が飛んでいたりして、容易にその人の家が見当たらず、時間を空費することが少なくなかった。何といっても封建時代からの市街をそのまま近代都市に利用して、表通りだけを新しい装いにかえていったので、一つの区画の表側は欧米に劣らない近代建築らしい建物が並んでいても、一歩その区画の内側、裏通りに足をふみ入れると、狭い路地がいくつもいくつも次の往来へ通りぬけられるようになっており、路地の両側に並んだ家は光りも当たらないような薄暗い家が向かいあっていて、鉢植の草花などを愛好する一種独特の雰囲気をもっていたものだった。それが、この大震火災ですべて失われてしまった。
 これが、震災後の復興区画整理の結果、通りぬけられた狭い路地がまったくなくなって、焼失した地域についていえば、面目一新した近代都市に変貌し、整然とした新時代の生活と活動に適した市街に生まれ変わった。