区内の商店

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 いま左に昭和六年(一九三一)現在の商店数を一括表示して、その業種別分布をうかがうことにより、本区商業の特色をとり出してみよう。
【昭和六年の区内商店数】 昭和六年十一月におこなわれた商業調査の結果によると、当時の市内には総計八万四六二八軒の商店があった。このうち芝区に六二一七店、麻布区に二四九四店、そして赤坂区に一六二八店が分布し(表19)、三区あわせて一万三三九店となり、全市の約一二%をしめていた商店数を既述の明治十五年(一八八二)商店数と比較してみると、芝区二・一倍、麻布区二・四倍、赤坂区一・八倍といずれも増加を示している。増加は、主としてこれら商店街の拡大にともなう小売商店の増加にもとづくといってよかろう。
 

表19 業態別経営組織別商店数 昭和6.11.15

芝 区麻布区赤坂区


個 人
法 人
316
74
390
30
11
41
39
9
48


個 人
法 人
4,936
68
5,004
2,197
26
2,223
1,380
18
1,398


個 人
法 人
740
83
823
219
11
230
165
17
182


個 人
法 人
5,992
225
6,217
2,446
48
2,494
1,584
44
1,628

 
【昭和六年三区業種・業態別商店数】 表19の統計によると、経営組織において法人店は、芝区に二二五店、麻布区に四八店、赤坂区に四四店をかぞえるにすぎず、全商店のうちで法人店のしめる割合がはなはだ低い。これは、付近居住者を顧客として商業をいとなむ比較的小規模経営の商店が区内の大半を占めていたことを示している。次にこれを業態・業種別に表示してみると、ここにも本区商業の特性がよくみとめられる(表20)。
 

表20 業種別および業態別商店数
align="left" width="50%"

業     種芝       区麻   布   区赤   坂   区
卸 売小 売卸小売卸 売小 売卸小売卸 売小 売卸小売
 総数
穀類粉類
蔬菜果物類
豆腐類
魚介藻類
鳥獣肉類
酒類調味料清涼飲料
菓子麺麭類
緑茶
その他飲食料品

肥料
燃料及び工業油脂
木材筏
石材煉瓦瓦土管セメント
建具家具指物類
畳畳表筵荒物
陶磁器硝子品
金属材料金属器具
皮革擬革其他製品
織物被服
絲綿編物組物
紙紙製品文房具
玩具運動具遊戯品
小間物洋品類
履物雨具類
薬品染料顔料化粧品
度量衡科学的機械
楽器時計貴金属
電気瓦斯機械器具
機械車輛農具船具
古物
新聞図書雑誌其他
其他物品
百貨店
390
6
6
2
10
3
21
26

12
7

13
8
12
7
13
8
32
4
22
4
16
4
9
7
14
3

69
24
13
1
17

5,004
251
245
69
193
79
277
731
37
563
6

179
52
24
135
130
80
123
12
304
75
106
44
147
320
158
102

99
169
55
52
185

823
30
6
15
10
27
50
62
11
35
5
1
41
27
12
26
33
20
49
9
18
10
24
17
10
12
31
13

64
61
12
13
61

6,217
287
257
86
213
109
348
819
48
610
18
1
233
87
48
168
176
108
204
25
344
89
146
65
169
339
203
115

232
254
80
66
263

41


2
1

3
4
1
2
2
1
1



1


1


1
1

2
4


6
4
4



2,223
130
109
41
108
54
126
322
16
270
4

85
9
7
10
57
26
53
9
69
36
53
17
59
169
73
45

37
72
35
32
89
1
230
6
3
1
5
10
17
45
2
14
5

6
6
2

7
6
10
3

4
8
4
3
12
9
6

6
9
8
8
9

2,494
136
112
44
114
64
146
371
19
286
11
1
92
15
9
10
65
32
63
13
69
40
62
22
62
183
86
51

49
85
47
40
98

48





3
7

3
2




2


2

3

2

1
3
7
1

1
4
2
1
4

1,398
64
82
20
72
30
70
179
11
173
2

42
2
5
21
38
24
25
5
52
27
32
18
49
98
44
37

23
38
17
21
76

182
6
2
3
3
12
8
30
1
13
2

7
3

3
6
3
4
2
3
1
7
1
2
6
12
4

3
13
5
7
10

1,628
60
84
23
75
42
81
216
12
189
6

49
5
5
26
44
27
31
7
58
28
41
19
52
107
62
42

27
55
24
29
90


 
【業種別店数】 表20により業種別に店数をみていくと、芝区では菓子パン店がもっとも多くて八一九店、ついでその他食料品店六一〇店、以下一〇〇店以上をかぞえた業種をあげてみると、穀類粉類・蔬菜果物類・魚介藻類・鳥獣肉類・酒調味料類・燃料・建具家具・畳・陶磁器・金属材料・織物被服・紙文具・小間物洋品・履物雨具・薬品化粧品・精密機械・電気ガス器具・機械車輌などにわたった、金属材料・機械車輌など本区工業の特色ある部門に関係して発達した商業をのぞいて、いずれもごく日常の消費物資の小売販売であり、それが芝区の地域的特性をなしていた。これは麻布・赤坂両区の商業にも共通した性格である。麻布区で店数一〇〇軒以上をかぞえたのは、穀類粉類・蔬菜果物・魚介藻・酒味噌醤油・菓子パン・その他食品・履物雨具の各業種であり、赤坂区では、菓子パン・その他食料品・履物雨具の三業種にすぎなかった。三区に根をおろした商店が、日用の飲食料品と身廻品を小売する業種にかぎられていたことがよくわかる。これは住民のかなり多くが、値がさの張るもの、贈答品あるいは特別の誂(あつら)え物を中心部の商業地で買うようになったためである。本区内に開業した商店で、中心商業地に移転し、あるいは支店をそこへ進出させるものがかなりあり、とくに有名菓子店・飲食料品店にこの例が多くみうけられたのは、やはりこのためといえる。