家具業

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 区内では、明治以来、愛宕下から田村町にかけて、家具製造業が独自の発展をとげ、それが区内の「工商的な店」として、東京の一名物かのような地域になっていったことは、これまでいくつかの場所でのべた。芝区の家具業の特色をのべれば、店数よりも、店が集中して存在すること、注文による高級品の生産に限られていたことなどがあげられる。
 いま、昭和七年(一九三二)の芝区のこの地域における製材・木製品業は六二工場、従業員五〇三人があり、そのいずれもが従業員三〇人未満の小工場であった。地域的分布をみると、新橋四丁目・五丁目、田村町二丁目・三丁目・四丁目・五丁目とつづく特別の区域で、表通りはいうまでもなく、裏通りも椅子や洋ダンスが店先に一ぱいならべられていて、洋家具塗料の匂いが、その地域全体に漂うような雰囲気の場所で、さすがは芝の家具商の集中した場所と誰もが感ずる場所だった。
 この家具商たちの震災後の姿をみると表21のとおりである。
 

表21 大正14年現在木製品製造戸数, 職工数, 製品価額

 製造戸数職  工製 品 価 額 (円)
指 物挽 物箱・樽その他
全 市
芝 区
麻布区
赤坂区
1,371 
119
114
48
3,392
168
383
107

27,500
192,840
15,026

11,850
18,560


304,090
61,100
25,783

58,375
3,600
69,473

401,815
276,100
110,282