(七) 戸惑う法知識

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 昭和二十一年十一月三日に公布され、翌二十二年五月三日に施行された「日本国憲法」、いわゆる「新憲法」は、主権在民を軸とした全面改定を意味した憲法であった。そしてそれにともなって、さまざまな法律が新しく制定され施行されていった。
 当然のこととして、その細部に通じない、またははじめての体験のため、この憲法に戸惑う人びとが、あちこちで頭をかかえる風景を現出させた。『港区政ニュース』(昭和二十三年十一月十日号)の「区民の声」欄にも、さまざまな問いが寄せられた。たとえば、次のような問いもそのひとつであった。
 
  〔問〕 私共二人は、恋愛結婚をして既に男の子が生まれていますが、私が長女、夫が長男のため入籍できず、そのため子供も庶子となっておりますが、来月また出産の身で、聞くところによると庶子もなくなって、非嫡出子として届ける外ないとのことですが、新民法で何とか方法はないものでしょうか。(芝 一女性より)
   〔答〕 新民法では長男と長女とでも結婚ができますから早速婚姻届を出して下さい。なお、夫婦の称する氏はいずれでも良く、また婚姻届によって庶子であった子供も嫡出子となります。(戸籍課)
  〔問〕 知人から頼まれて、養女として籍だけ入れてある娘が今度他家の長男と結婚しましたが、私どもは、子供が一人あるきりで、財産としては二五坪の現在私どもが住んでいる家だけしかありません。私が死ぬと、この建物も、その養女と私の長男が平等に分けることになるのでしょうか、そうなると弱年の長男に申訳けないと悩んでいます。(六五歳の老人より)
   〔答〕 養女もまた嫡出子と同様に分け前にあずかるのですから、できることなら事情を話して、今のうち離縁して置くか、またはあなたは全財産の二分の一を遺言で自由に処分でき、残りは妻子(養女を含む)が皆で分けることになりますから、そのいずれかの方法をとる必要があります。遺言書は、公証人の手で作るのが一番確実ですが、自筆証書でも差支えなく、遺言執行者は定めなくとも、家事審判所が選任してくれます。(戸籍課)