区政民主化運動の発生

795 ~ 797 / 1465ページ
 昭和十八年に制定された都制の下で区は、営造物に関する事務と区長委任条項とよばれる各種の経済統制事務を中心とする事務を処理していた。区は、「もはや自治体というよりは都の出先機関そのものの姿を呈していた」(東京都制調査会『特別区の行政と政治』)のである。
 ところで、終戦によって醸成された民主化の気運は、当時の区会にも波及し都制の改革による区自治権確立の志向を自然発生的に生みだした。
 内務省が堀切内相のもとにようやく知事公選制の研究に着手した二十年十月、麹町区会は早くも、都制改革を求めた意見書を決議し、内務省、都当局など関係方面に送っている。この意見書は都長の公選制、警視庁の廃止などの他、都の区ならびに市町村を廃止して、都を三〇区に整理統合し区長の公選、区職員の公吏化、区自治権の確立を求めるものであった。さらに、翌十一月八日には、一三区会から成る自治革新各区会委員長会が開催され「区長ノ公選、区会ノ権限拡張、区政ノ確立」等を目的とする「各区連合会」の結成をみる。
 燎(りょう)原の火のごとく各区会に広がった区自治権の確立運動に、今日の港区の母体となった芝、麻布、赤坂三区の区会がいかに対応したかは、当時の区会議事録の散逸のために定かではない。しかし、二十一年二月に入ると、三五区会議長会は、会内に設けた「自治権拡張ニ関スル委員会」がまとめた左記の「都制改正案要綱案」を発表した。
 
  一、区会ノ権限ハ抽象的例示主義ヲ採リ区ノ法人格ヲ市町村制ニ準シ拡大強化ス
  二、都会ノ権限ハ具体的明示主義ヲ採リ府県制ニ準ス
   (イ) 各種学校、病院ノ経営、上下水道、電気事業、交通、運輸、道路橋梁、埠頭等 統一ヲ要スル事
     項等ヲ列挙スルコト
   (ロ) 帝都タル地位ヨリ生スル当然ノ事項
  三、警視庁ハ都ノ一部局タラシム
   右本委員会ハ決定セルヲ以テ此段及報告候也
    昭和二十一年二月八日
                         東京都三十五区議長会
                            自治権拡張ニ関スル委員長 藤野 衛