区域整理委員会の答申

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 さて、区域整理委員会では、都の二二区案に対し、主として統合対象区委員から、行政区域の変更により戸籍、税務、配給その他種々の行政に混乱をきたす恐れがある、区域の拡大によって行政上の目が末端まで届かなくなる、といった異論が提出された。だが、同委員会は、十一月二十七日、改正なった都制の下での区自治権強化のために区域の再編は不可欠であるとして諮問案を承認し、十二月九日に都長官に次の答申書を提出した。
 
      区の整理統合についての答申
  一、東京都の区は都の可及的迅速なる戦後復興と区の自治権拡張を企図し、この際これを適当に整理統合
   すること。
  二、統合する区の具体的内容は東京都当局が、委員会において提示した参考案の二十二区案を適当と認め
   る。
   附帯希望条項
   一 区の境界に不適当のものがあるので著しい凹凸は区の統合実施に引続き適当に是正するため速やか
     にこれが委員会を組織すること。
   二 区の自治権を拡充した区が、真に自治団体として名実を備え得るよう法制的にも行政的にも最善の
     努力を払われたい。
    昭和二十一年十二月九日
                       東京都区域整理委員会 委員長 安井 誠一郎
  東京都長官 安井誠一郎 殿
 
 この答申を受けて都は、当初の構想どおり三五区を二二区に整理統合することを決定した。この結果、芝・麻布・赤坂の三区は、新区として統合されることとなったのである。
 けれども、芝区は区域整理委員会の審議過程において単独区を主張し、都案に反対の意向を表明していた。一方、麻布、赤坂の二区も、新区が芝区中心の区となることを危惧し、早くから統合案に難色を示していた。
 ところで、都制第百四十一条は、区の廃置分合とそれにともなう財産処分は、関係区会の議決を経て内務大臣の許可を得て決めねばならないと定めていた。それゆえに、都の芝・麻布・赤坂の三区統合計画は、三区会の強硬な反対論の前に同意を得ることができず、難航をみることとなったのである。