芝区の対応

801 ~ 802 / 1465ページ
 芝区の井手光治区長は、右議案にかかる区会を二十二年一月八日に招集した。だが、単独区を志向する芝区会は、僅か一日の議事をもって三区統合のための議案を否決した。同日の『東京都芝区会会議録(臨時会)第一号』は、議事の模様を次のように記している。
 
   一 日程第一 区ノ区域ノ整理統合ニ付テ
   区長(井手光治)ヨリ提案理由ノ説明アリタル後矢田直三君上木長君田中孝君古沢六太郎君ヨリ各々原案賛成ニ関スル発言アリタル後直チニ採決ニ入り起立ニヨル表決ノ結果原案賛成四名ノ少数ニ対シ原案反対十八名ノ多数ヲ以テ原案ハ否決トナリタリ
 
 このように芝区会は、多数をもって統合議案を否決し、さらに三区統合案に代わって芝区は独立の区として麻布・赤坂二区の統合を要求した次の意見書を採択し都長官に送付した。

旧芝区役所

【芝区会の意見書】
    意見書
  芝区ハ独立区トシ凹凸是正ニヨリ他区所属地域ヲ芝区ニ編入ノ上此際速カニ区域ノ整備ヲ行フヲ妥当ナリト認ム
  理由
  東京都長官ハ東京都芝区麻布区赤坂区ヲ廃止シテ新区ヲ結成スヘシトノ案ヲ本区会ニ発案セラレタルモ我芝区ハ人口面積負担力ニ於テ当局ノ示セル一区ノ標準ニ達シ居リ一面三区統合ハ必スシモ三区々民ノ幸福ヲ増進スルモノトハ思惟セラレズ依テ右発案ノ範囲内ニ於テ勘考スル時芝区ハ独立セシメ麻布・赤坂両区ヲ以テ一区トスルコトガ最モ妥当ナリト信ス
  故ニ此際速カニ隣接区トノ凹凸ヲ是正調整シ復興ニ伴フ地区ノ整備ヲ断行セラレンコトヲ望ム
  右区会ノ決議ヲ経テ意見書提出候也
   昭和二十二年一月八日
          東京都芝区会議長 徳安 実蔵
   東京都長官 安井誠一郎 殿