地方自治法改正反対運動

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【区長公選廃止を朝日、読売の二紙が報道】 神戸勧告が、いずれ法制化の道をたどることは、区側にも十分予想されたところである。勧告後、区側は自治権確立を求めて、各方面に活発な運動を続けた。このような状況下の二十七年三月一日、『朝日新聞』、『読売新聞』の二紙は、区長任命制を内容とする地方自治法改正案が、今次国会に提出されると報じた。
 
      三月一日 朝日新聞(朝刊)
   地方自治庁では東京都における二十三特別区の区長の公選制を廃止して都知事の任命制にすることとし、二十九日の臨時次官会議に地方自治法改正要綱を付議した。同改正案はおそくも来週の閣議にかけたうえ今国会に提出する予定であるが、特別区の区長の公選制廃止は、都と区の権限争いに終止符を打つとともに、最近問題となってきた都道府県知事の公選廃止の動きに拍車をかける点で注目され、また区側から強い反対運動が予想され、国会提案をめぐって政治問題化するものとみられる。
   臨時次官会議に提出された改正要綱は地方団体に対する政府の監督権強化、府県庁部局の縮小などを規定し、東京都制についても①都に市と同様の性格を与える②区の処理事務を法定する③都と区の協力関係を確立する、ことなどの大綱を示しているのは既報のとおりだがこの要綱に基づく同改正法律案では
   一 特別区の区長は都知事の任命制とする。
   二 区長を任命する場合は区議会の承認を必要とする。
  との具体的事項を規定している。
 
 特別区側にとって、この政府部内の動きは、まさに「寝耳に水」であった。報道の真偽を確認した特別区は、地方自治法改正絶対反対を唱え、内閣、各政党、都内選出国会議員に対し陳情を開始した。だが、三月二十日の閣議は、区長の都知事任命制、区固有事務の大幅な制限を骨子とした改正法案を決定した。
【区長任命制を骨子とする地自法改正案】 ところで、この時期、港区内においても、自治権確立特別委員会を中心として、改正反対署名運動や区民大会が開催された。また、区長・区議長らは、前述の陳情活動にあたった。
 さて、地方自治法改正法案は、第一三国会に上程され、衆院地方行政委員会において審議された。特別区側の運動は、主として地方行政委員会の委員に向けられた。また、自由党区議の間では、改正法案に抗議し集団脱党が議論された。このようななかで、都内選出自由党代議士会は、原田要一新宿区議会議長、和田義春文京区議会議長、宮内作蔵江東区議会議長の三氏に対し、改正案修正案を示し妥協を図った。それは、区長の任命について、都知事が区議会の同意を得て任命するとなっている改正案を、「都知事の同意をえて区議会がこれを選任する」と修正するものである。
 港区議会は、この修正案に対し他区と同様に、六月三日の本会議において「憲法の条項に抵触するもの」との反対決議を行なった。だが、この修正案は、まず衆議院地方行政委員会において議決され、続いて、改正案修正案は、衆参両院を通過した。かくて、特別区の自治権を大幅に制約した地方自治法改正法は、二十七年八月十五日に公布されたのである。