【昭和二十三・二十四年度歳入】

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 昭和二十三・二十四年度になると、港区の歳入に占める特別区税の比重は大幅に増大し、ほぼ三分の二を占めるようになった。二三区平均についても、同様の傾向が認められるが、その内容は港区の場合とかなり異なっている(表2、表3)。二三区平均では、この特別区税の比重の増大の原因が独立税と配付税の比重の増大であるのにたいして、港区では、とくに都税附加税の比重の増大がその原因となっている。
【伸び率の高い都税附加税】 都税附加税は当初、地租附加税、家屋税附加税の二附加税であったのが、二十二年十二月に不動産取得税附加税と原動機附加税が追加された。また、本税の税率の引上げも行なわれ、二十三年度には、従来、賃貸価格の一〇〇分の一二であった地租、一〇〇分の二一であった家屋税がそれぞれ一〇〇分の一〇〇、一〇〇分の一二五に引き上げられ、さらに二十四年度にはそれぞれ一〇〇分の二五〇に引き上げられた。
 もちろん、課税客体や課税標準の増加の影響もあるが、その結果、二十三・二十四年度の附加税収入は、二三区全体で二十二年度のそれぞれ七・六倍、一五・五倍に増大している。港区の場合、その伸びはさらに大きく、二十三年度は七・四倍、二十四年度は一七・四倍にもなっている。地租附加税や家屋税附加税は地域偏在性がいちじるしかったので、その不均衡を緩和するために、特定の区にたいしては附加税率を制限するという措置もとられていた。港区にたいしては、この制限はなかったが、港区はこれらの税収入が相対的に多い区であった。
【相対的に低い独立税の伸び】 これにたいして、独立税の伸びは、二十二年度を基準にして、二三区平均が二十三年度四・五倍、二十四年度九・二倍であるのに、港区は四・二倍、五・三倍と若干低い。人口の伸びは、二十二~二十四年度に二三区で一・二倍、港区で一・三倍でほとんど変わらない。では、なぜ港区の独立税の伸びはそれほど大きくなかったのか。これは、主として独立税の中心である特別区民税の賦課方式によるものと考えられる。すなわち、特別区民税の賦課税額は、東京都特別区税条例で、各区共通の平均賦課額にその区の特別区民税納税義務者を乗じた額を超えることができないと定められていたからである。平均賦課額は、二十二年度の八五円から、二十三年度は三一三円に引き上げられた。
【特別区民税の配分方法】 この区民税の賦課税額は一定の基準によって各納税義務者へと配分された。港区では、この配分は次のようにして行なわれた。
 
   東京都が徴収いたしますところの都民税、それは納税義務者一人当り平均額が区民税と同額の三百十三円でありますので、区民税の平均三百十三円を均等割によるもの、家屋賃貸価格によるもの及び所得金額によるものに配分する方法につきましてもこれは都民税の配分方法に順応いたしまして同様の方法を用いることが適当でもあり、且又簡単明瞭であるのでありますが、都民税の平均三百十三円は都下全体の平均でありますので、都民税の課率をそのままに適用いたしますことは各区における租税負担の階級構成の差異によりまして、或る区においてはその平均三百十三円の制限を超過し、又或る区においてはそれに不足を生ずるという結果に相成るわけであります。即ち区民税の平均賦課額は各区いずれも平均三百十三円ではありますが、これを均等割、家屋賃貸価格割、所得金額割によって配分いたしました場合には、区の租税負担の階級構成によりまして一般に家屋の賃貸価格が高く、所得金額が多いところにおきましては均等割による部分が少なく、逆に家屋の賃貸価格が低く、所得金額が割合に少ないという区におきましては均等割による部分が多くなるということになるのであります。……
   そこで本区の場合におきましては都民税の課率をそのままに適用いたしますと、総額におきまして二千百八十九万四千十円となりますので、結局平均三百十三円の限度を超えまして五百五十三万四千三百七十円が制限超過となるのであります。これは本区の納税義務者の家屋賃貸価格及び所得金額が二十三区の平均よりも高いということになるわけです。そこで平均三百十三円の限度によりますと本区の特別区民税は総計が一千六百三十六万一千四百四十九円と見積られますので、その範囲において均等割によるもの、家屋の賃貸価格によるもの及び所得金額によるものの配分を調整することが必要であります。この調整の方針といたしましては都民税の賦課率に順応しながら低額の所得者若しくは勤労階級の負担軽減を考慮いたしまして、均等割においては都の標準よりも二十円を減額し、少額の家屋賃貸価格の者即ち五百円未満の者につきましては都民税に比較いたしまして十円乃至五十円を減額し、又所得金額によるものにつきましても同様に所得の階級毎に三割五分三厘を引下げまして区民税負担の軽減と均分化を図ったものでございます。(昭和二十三年十月十一日・区議会における助役の説明)
 
【区民税の賦課方式の問題点】 区民税の総額が決められていたことは、港区のような区の場合、一面では低所得者の負担軽減を考慮する余裕を与えられることになったが、他面では、税収の伸びをおさえ、また、他区住民との間に負担の不均衡をもたらす結果になった。しかし、附加税の伸びが大きいため、区税の収入は大幅に増大し、調整財源である配付税の比重は、二三区平均とくらべるときわめて少なかった。
【昭和二十三・二十四年度歳出】 昭和二十三・二十四年度の港区の歳出も二十二年度と同様、約九割が区役所費と教育費で占められているが(表4)、区役所費の比重が若干低下し、その分だけ教育費の比重が増大している。二十三年度当初予算の提案説明で、区長は「特に教育、厚生等の事務事業及び区役所第一線機関たる出張所の整備拡充に」重点をおいたとのべている。二十四年度予算の重点も「教育に関する施設及び第一線機関たる出張所の拡充整備」であった。なお、二十四年度予算では、消防団費および衛生費は、これらの事務が都に移管されたため、計上されていない。
 

表4 歳出決算額の構成比(港区)

区 分昭和
22年度
2324
議会費
区役所費
土木費
教育費
文化体育費
衛生費
厚生事業費
産業経済費
選挙費
財産費
諸支出金
 合 計
4.1
66.8
0.1
22.8
0.1
0.0
1.5
0.1
0.8
0.0
3.8
100.0
4.9
55.5
0.1
32.7
0.2
0.0
2.0
0.1
1.1
0.1
3.2
100.0
4.3
49.1
2.6
37.7
0.5

1.3
0.3
0.8
0.2
3.2
100.0

(注) 一般会計。


 
【たびたびの追加更正】 このような方針で当初予算は編成されたが、二十二年度の場合と同様、当初から確実な財源見通しが立たなかったので、区税の増収見込、都支出金の交付決定、寄付の申込、給与水準の改定、物件費の高騰等に応じて、たびたび追加更正された。その結果、二十三・二十四年度の最終予算は当初予算のそれぞれ三・四倍、一・六倍に膨れ上がっている。
【都支出金の交付の遅れ】 なかでも都支出金の交付の遅れは区財政運営の大きな支障となった。二十三年度の場合をみると、当初予算ゼロ、補正第一号(五月)四〇万八、〇〇〇円、補正第五号(十月)一、〇一四万九、〇〇〇円、補正第六号(十二月)一、五九二万九、〇〇〇円、補正第七号(一月)一、八四三万五、〇〇〇円、補正第八号(二月)三、三二〇万三、〇〇〇円、補正第九号(三月)三、六八三万一、〇〇〇円となっている。一月になっても、全額のやっと半分しか交付決定されていない。そのうえ、この都支出金が最終予算で総額の二六%を占めているのである。これでは、区の計画的な財政運営が困難となるのは当然で、区議会でも、予算が「天降り的」であって、区の自主性が乏しいことが、しばしば問題とされた。
【区議会で多額の寄付を問題視】 二十三・二十四年度においても、学校施設や出張所の整備のために多額の寄付が充当された。とくに二十三年度は多く、歳入の二・六%にもたっした。このような状況のもとで、都の財政責任を追及する声も高まった。二十四年三月、区議会は、「学校建設、校具費の多額を父兄の寄付に仰ぐ現状はさらでだに生活難の折柄益々都民の負担を大ならしめるものである」として、「義務教育費の都予算額に関する意見書」を都教育委員会に提出することを決めた。そのなかで、次のように、区民の負担はもはや限度にたっしているとのべている。
 
   六三制実施以来新制中学は殆んど小学校に併設しているが、戦災復興の進捗と共に逐次人口の増加に伴い学童生徒の増大を見今や新制中学は逐次新設を行わざれば生徒を収容し得ない状況に立至っている。一方小学校又児童の増加に伴い戦災校の如きは二部授業若しくは他校へ分置するも尚収容に困難を来している状況であるが、これら収容の為の学校新設、教室増設に要する建設費交付金は所要経費の半にも達せず已むなくこれを父兄の寄附に仰がなければならぬ実情であるが、国民生活は益々窮迫化している現在この負担は最早限度に達しているところである。建設費校具費を増額し以て都民負担の軽減を図られたい。
 
【令達予算】 最後に、都から執行を委任された令達予算をみておこう。
 昭和二十四年度の執行委任額は表5のとおりで、区歳出決算額の約一・三倍である。また、令達予算のなかでは、教育費がもっとも大きく、民生事業費がその半分、労働費がその四分の一の比重となっている。
 

表5 昭和24年度執行委任額

区 分都経済区経済A/B
(%)
執行委任
額(A)
構成比歳出決算
額(B)
構成比
教育費
土木費
民生事業費
労働費
保健衛生費
清掃事業費
産業経済費
その他
 合 計
115,573
21,301
58,379
31,184
23
30
143
36,811
263,444
43.9
8.1
22.2
11.8
0.0
0.0
0.1
14.0
100.0
79,307
5,378
2,608



584
119,663
207,540
38.2
2.6
1.3



0.3
57.7
100.0
145.7
396.1
2,238.5



24.5
30.8
126.9