【二三区の歳入歳出の推移】

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 このような各区の相違をいちおう別にして、まず、昭和三十~三十九年度における二三区全体の歳入歳出の構成比の推移をみると、表18・19・20のとおりである。
 

表18 歳入決算額の構成比(23区)

区 分昭和
30年度
313233343536373839
特別区税
交付金
都支出金
雑収入
繰越金
その他
合 計
53.3
7.2
19.4
6.8
8.1
5.2
100.0
55.6
9.0
14.4
6.6
9.6
4.8
100.0
51.2
7.9
17.9
6.3
11.4
5.3
100.0
46.0
10.3
22.8
5.6
9.1
6.2
100.0
46.4
9.3
24.5
6.3
8.1
5.4
100.0
44.3
9.0
25.7
6.1
9.3
5.6
100.0
45.4
12.0
19.7
6.5
9.9
6.5
100.0
55.4
9.7
12.4
4.7
10.4
7.4
100.0
61.4
10.3
7.1
4.8
9.0
7.4
100.0
65.9
10.7
5.2
7.3
8.2
2.7
100.0

(注) 普通会計。


 

表19 性質別歳出決算額の構成比(23区)

区 分昭和
30
年度
313233343536373839
人件費
物件費
普通建設事業費
納付金
その他
合 計
38.0
16.5
26.1
5.7
13.7
100.0
40.0
16.4
23.1
6.8
13.7
100.0
33.7
13.0
28.9
10.3
14.1
100.0
30.2
13.9
37.1
8.3
10.5
100.0
32.4
14.9
33.7
8.0
11.0
100.0
31.5
13.2
37.5
7.1
10.7
100.0
29.9
13.5
37.7
5.0
13.9
100.0
27.1
13.2
39.8
6.9
13.0
100.0
29.2
13.6
35.3
7.9
14.0
100.0
30.1
14.1
34.8
7.7
13.3
100.0

(注) 普通会計。


 

表20 目的別歳出決算額の構成比(23区)

区 分昭和
30年度
3132333435363738
区役所費
土木費
教育費
民生事業費
納付金
その他
合 計
26.1
10.4
43.3
2.1
5.7
12.4
100.0
25.8
10.8
42.5
2.4
6.5
12.0
100.0
24.5
9.9
45.1
1.8
10.1
8.6
100.0
23.7
9.9
47.9
2.1
8.3
8.1
100.0
24.4
9.7
47.9
2.1
7.9
8.0
100.0
23.6
10.2
48.8
1.4
7.1
8.9
100.0
23.5
15.7
43.1
2.0
5.0
10.7
100.0
23.3
16.8
41.6
2.9
6.9
8.5
100.0
24.0
17.8
37.5
3.9
7.9
8.9
100.0

(注) 普通会計。


 
 歳入総額は、この一〇年間に約四・七倍に拡大している。歳入のなかで伸びが大きいのは、区税の五・八倍、交付金の七倍で、前者の歳入構成比は三十年度の五三%から三十九年度の六六%へと増大し、後者のそれも、同じ期間に七%から一一%へと上昇している。これにたいして、都支出金の構成比は、三十年度の一九%から三十九年度には五%に減少した。
 もっとも、この期間の前半と後半とではかなり異なった傾向が認められる。すなわち、三十~三十五年度においては、区税の比重は次第に低下し、反対に都支出金のそれが上昇している。これにたいして、三十六~三十九年度になると、区税の比重は急速に上昇しはじめ、逆に都支出金の比重は大幅に低下する。ただし、交付金の比重はこの期間を通じて増減はあるものの、はっきりした傾向は認められない。
【区民税の課税方式の改正】 昭和三十七年度における区民税の比重の大幅な増大は、区民税の課税方式の改正によるものである。それまで区民税は所得税を課税標準としていたが、三十七年度以降は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額および山林所得金額を課税標準とすることとされた。また、この期間の後半に都支出金の比重がいちじるしく低下しているのは、学校建設費の一部や義務教育費私費負担軽減のための経費にたいする都支出金が交付金に振り替えられたためである。その結果、三十六年度には、都支出金と交付金の比重は入れ替わった。
【二三区の歳出 伸びが大きい建設事業費】 次に、二三区全体の歳出総額の伸びをみると、三十~三十九年度に約四・七倍で、歳入のそれと同じである。歳出のなかでは、性質別分類でみて人件費の伸びがこの一〇年間に約三・七倍、物件費のそれが四・一倍であるのにたいして、普通建設事業費の伸びが六・三倍と目立って大きい。このような伸びの相違を反映して、人件費の歳入構成比は三十年度の三八%から三十九年度には三〇%へ、物件費のそれは一七%から一四%へと低下し、逆に普通建設事業費の比重は、二六%から三五%へと大幅に増大している(表19)。三十二年度までは人件費が最大の費目であったのが、三十三年度以降は普通建設事業費がこれに代わった。普通建設事業費の伸びが大きいのは、次にのべるような事務事業の区への移譲と人口増加にともなう公共施設の整備の必要のためであった。
【土木費の比重の増大】 また、歳出の目的別分類をみると、昭和三十~三十八年度に、総額が四倍に増大しているなかで、区役所費が三・七倍、土木費が六・九倍、教育費が三・五倍、民生事業費が七・五倍、納付金が五・六倍の伸びを示している。これに対応して、この期間に、区役所費、教育費の比重は低下し、土木費、民生事業費、納付金の比重は上昇した(表20)。
 しかし、この期間を通じてこの傾向が一貫して続いていたわけではない。土木費の比重は三十五年度までは一〇%前後であったのが、三十六年度にいっきょに一六%に上昇し、それ以降も若干増大している。民生事業費の比重の増大がはじまるのも三十六年度以降である。これにたいして、教育費の比重は三十~三十五年度にはむしろ増大傾向にあり、それが減少に転じたのは三十六年度からである。また、納付金の比重には、この期間をとおして、それほどはっきりした傾向が認められない。
【事務移管の影響】 このように、三十六年度を境に、土木費と民生事業費の比重が大幅に上昇したのは、三十六年度から、保育園、普通河川、排水場、延長一、五〇〇メートル以下の都道の維持管理が区に移管された結果である。また、教育費の比重の低下は、これらの経費の比重の増大と、前年度の三十五年度がベビーブーム児童の中学入学時にあたって支出が多かったことによるものであろう。
【各区の特徴】 もちろん、これらの全般的な傾向は、区によってあらわれ方が異なってくる。昭和三十七~三十九年度における各区の性質別歳出構成比は表21のとおりである。投資的経費の比重が高いのは、中央、世田谷、渋谷、中野、北、荒川、板橋、練馬、足立、葛飾、江戸川の各区で、概して人口増加率の高い周辺区である。
 

表21 区別・性質別歳出決算額の構成比

区 分昭和37年度3839
千代田
中 央

新 宿
文 京
台 東
墨 田
江 東
品 川
目 黒
大 田
世田谷
渋 谷
中 野
杉 並
豊 島

荒 川
板 橋
練 馬
足 立
葛 飾
江戸川
合 計
33
34
(33)27
(30)30
(33)30
43
33
29
(30)29
(28)24
(30)26
(25)21
(24)20
30
(30)23
33
30
30
26
22
23
26
28
(29)28
29
35
(33)27
(39)38
(39)36
15
35
30
(41)39
(37)31
(42)35
(52)44
(51)43
41
(43)32
34
47
45
52
57
50
48
52
(43)40
38
31
(34)46
(30)32
(28)34
42
32
41
(29)32
(35)45
(28)39
(23)35
(24)37
29
(27)45
33
23
25
22
21
27
26
20
(28)32
33
31
28
30
31
43
36
32
33
26
28
23
17
28
22
35
35
34
34
27
28
34
32
29
37
40
26
31
32
16
27
31
34
24
29
37
52
40
35
34
40
38
29
51
42
33
45
35
30
29
46
39
37
41
37
37
33
50
43
40
31
32
43
31
25
28
37
22
30
33
23
35
34
30
28
29
33
40
40
35
33
24
26
24
22
32
23
36
37
34
34
28
30
33
34
30
34
47
25
32
25
20
27
29
32
30
34
33
57
42
32
35
35
32
33
47
38
38
30
35
32
23
47
39
42
40
33
36
35
46
40
43
21
26
45
29
28
34
33
25
32
29
26
35

(注) 1. 人は人件費,投は投資的経費,他はその他の経費である。
 2. 数字は歳出総額にたいする各経費の百分比である。
 3. 昭和37年度の( )内の数字は納付金を除いた場合の百分比である。
 4. 東京都政調査会『特別区の行政と政治1970』242~4ページの表より作成。


 
 いま、三十九年度の目的別歳出構成比(表22)をとって、これと比較してみると、これらの周辺区で投資的経費の比重が高いのは、教育費、つまり小・中学校の建設費が多いためであることがわかる。これらの区では道路橋りょう費等の土木費の比重が高いところも多い。これにたいして、中央区で投資的経費の比重が高いのは、道路橋りょう費の比重が高いためであり、渋谷区の場合は総務費の比重が高いことがその原因であって、これらの区では教育費の比重はそれほど大きくない。周辺区における人口急増が、これらの区で、小・中学校の建設を中心とする投資的経費の増大をひき起こしていることが明らかである。
 

表22 昭和39年度区別・目的別歳出決算額の構成比

区 分総務費民生費土木費(道路橋梁費)教育費(小・中学校費)納付金その他合計
千代田
中 央

新 宿
文 京
台 東
墨 田
江 東
品 川
目 黒
大 田
世田谷
渋 谷
中 野
杉 並
豊 島

荒 川
板 橋
練 馬
足 立
葛 飾
江戸川
合 計
20
22
20
21
20
26
23
25
18
25
18
17
51
27
13
20
23
25
20
19
16
13
15
21
4
4
8
7
5
4
7
6
4
14
4
7
6
6
5
8
7
6
5
7
5
5
4
6
35
43
15
19
15
19
27
26
29
15
19
21
13
18
23
19
25
14
26
26
24
31
32
23
29
40
10
14
13
14
17
16
24
11
13
15
10
14
17
11
19
10
21
20
12
18
18
16
32
23
27
37
37
38
39
36
40
28
39
28
25
42
29
47
39
50
44
43
50
47
44
37
18
14
18
26
27
21
24
28
29
19
24
22
19
35
16
30
31
40
33
32
43
38
33
27


23
8
16



5
14
16
22


26








8
9
8
7
8
7
13
4
7
4
4
4
5
5
7
4
6
6
5
5
5
5
4
5
5
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100

(注) 東京都政調査会『特別区の行政と政治1970』249ページ。


 
【納付区の歳出】 この時期の港区の歳出構成比の特徴は、他の区と比較して、この投資的経費の比重が低く、逆に「人件費および投資的経費」以外の経費の比重がきわめて高いということである(表21)。ほかに、これと同じような特徴を示している区は、文京、台東、目黒、大田、世田谷、杉並などの区である。これらの区に共通していることは、台東区を除いて、いずれも特別区納付金の納付区であるということである。これらの区の「その他の経費」のなかには、この納付金が含まれているため、その比重が高くなっているのである。したがって、実質的な歳出を比較する場合には、この額を差し引いたほうがよい。
 三十七年度の歳出について、納付金を除いて、各経費の構成比を算出すると、表21のカッコ内のようになる。しかし、このような操作をしたあとで比較してみても、港区の歳出は投資的経費の比重が相対的にやや低く、逆に人件費、その他の経費の比重が若干高いということができる。これは、この時期に港区の建設事業が一段落したことを示すものであろう。なお、二三区のなかでは、台東区の投資的経費の比重の低さと、人件費、その他の経費の比重の高さが、とくに目立っている。
【各区の区税収入の相違】 まえに、区税の比重が三十七年度以降、急速に上昇しはじめたことをのべたが、各区の区税収入にはどのような相違がみられるか。表23は三十九年度における区税の歳入構成比と区民一人当たり負担額を算出したものである。一人当たり負担額の高いのは、千代田、港、中央であり、低いのは足立、荒川、葛飾で最高と最低の間には約四・六倍の開きがある。また、区税の歳入構成比が高いのは、世田谷、杉並、港で、低いのは足立、江戸川、葛飾である。最高の世田谷が八四%であるのにたいして、最低の足立は三四・八%である。このような財政力の不均衡を是正するために、納付金の吸い上げと交付金の交付がなされているが、港区の場合、三十九年度の納付金は八億九、九二七万円で、区税収入三二億四、七五五万円の二七・七%にたっしている。また、これは港区歳出総額の二三%にあたる。
 

表23 昭和39年度特別区税の構成比と1人当たりの額

区 分歳入
構成比
区民1人
当りの額
千代田
中 央

新 宿
文 京
台 東
墨 田
江 東
品 川
目 黒
大 田
世田谷
渋 谷
中 野
杉 並
豊 島

荒 川
板 橋
練 馬
足 立
葛 飾
江戸川
合 計
67.3%
49.9 
79.5 
76.1 
74.0 
69.6 
64.4 
49.2 
77.0 
72.7 
76.9 
84.0 
72.1 
73.3 
81.9 
73.3 
61.7 
39.1 
55.8 
64.1 
34.8 
38.9 
38.7 
65.9 
15,066円
10,814 
12,893 
7,466 
8,804 
7,107 
5,264 
4,376 
6,341 
9,497 
7,729 
9,455 
9,815 
6,769 
9,246 
5,744 
4,406 
3,743 
4,334 
5,972 
3,283 
3,785 
4,086 
6,794 

(注) 東京都政調査会『特別区の行政と政治1970』247ページ。


 
【特別会計】 ここでは、特別区の一般会計を中心にみてきたが、区にはそのほかに若干の特別会計がある。そのうち、もっとも主要なものは、国民健康保険事業会計である。区は、昭和三十四年から国民健康保険事業を一斉に開始した。財源は、国庫支出金(事務費負担金、療養給付費負担金、調整交付金など)、保険料、都交付金などで、都交付金の支出は二三区独自の制度である。
【執行委任額】 また、区には区の予算のほかに、都から執行を委任されている経費があり、これが多額にのぼっていることをまえに指摘したが、この期間を通じて、執行委任額の比重は徐々に低下している。すなわち、昭和三十五年度までは執行委任額が区会計の歳出額の三分の二程度を占めていたのが、三十七~三十九年度には前者は後者の半分程度になっている(表24)。しかし、区の事務のほぼ三分の一が区の予算外の仕事で、区議会の審議も受けないという状況はまだ正常とはいえないであろう。
 

表24 区歳出額と都執行委任額の比率

昭和
年度
区歳
出額
都執行
委任額
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
54%
53 
57 
58 
57 
59 
63 
66 
68 
67 
46%
47 
43 
42 
43 
41 
37 
34 
32 
33 

(注) 『東京都財政史』下巻,774ページ。