【歳入歳出の伸びの変動】

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 昭和四十~四十九年度において、港区の財政規模も二三区全体についてみたのと同様に、次第に拡大率を高めてきた(表42・43)。すなわち、歳入歳出の対前年度増加率は四十四年度に一段と上昇し、さらに、四十六・四十七年度と続けて大幅に増大した。そして、四十八年度に急落があったのち、四十九年度に名目的には六〇%というきわめて大きな伸びを示した。この四十七年度以降の増減率の激しい変動が、二三区平均と比べて港区の目立った特徴である。
 

表42 歳入決算額の対前年度増減率(港区)

区 分昭和
41
年度
424344454647484950
総 額
 特別区税
 国庫支出金
 都支出金
 区 債
11.6
8.0
10.1
135.5

9.8
15.6
16.6
△ 3.5

12.6
9.7
8.9
3.6
皆増
15.6
10.4
21.7
70.9

15.8
19.6
20.2
54.5

20.5
20.4
16.4
△11.0
皆増
29.8
23.9
38.8
59.7
376.7
12.1
10.2
48.2
△18.8
△ 9.6
59.5
27.5
35.2
5.1
472.2
△17.5
△ 1.8
30.7
11.7
△67.3

(注) 普通会計。


 

表43 歳出決算額の対前年度増減率(港区)

区分昭和
41
年度
424344454647484950
総 額
 人件費
 物件費
 扶助費
 普通建設事業費
12.3
11.5
11.5
6.0
40.6
10.7
17.0
3.2
10.3
24.7
10.4
15.9
5.0
11.1
1.9
17.7
18.3
12.6
23.5
30.2
14.4
17.3
8.2
28.4
3.7
22.7
18.9
16.4
9.7
38.8
29.3
25.3
12.5
35.4
25.8
9.6
23.1
18.7
63.6
△ 3.1
63.5
27.2
22.3
32.3
174.9
△17.8
35.8
18.4
43.6
△71.7
 総務費
 民生費
 土木建築費
 教育費
4.9
15.3
21.2
25.1
5.8
△ 3.2
18.9
39.1
21.3
29.6
16.8
△ 6.2
8.3
5.6
34.7
25.6
13.8
39.9
3.8
7.9
20.5
22.5
43.4
14.1
87.0
32.9
△21.8
24.0
9.3
26.1
5.3
5.7
94.3
28.4
199.4
42.5
△33.7
23.9
△60.0
△17.1

(注) 普通会計。


 
【高い人件費と扶助費の伸び】 港区の場合も、四十四年度以降、だいたいにおいて人件費と扶助費の増加率が高く、物件費のそれは低い。とくに、扶助費は四十四年度と四十七・四十八年度には二三区平均を上回る大きな伸びをしめしている。四十四・四十五年度は生活保護、保育関係の扶助費が、また、四十七・四十八年度は生活保護、老人医療費関係のそれが高かったことによる。港区の四十八年度の老人医療費の増加率はとくに大きく、これが扶助費の伸びを非常に高いものにしている。これにたいして、港区の人件費の増加率は二三区平均に比べると概して低い。これは人口増減率の相違を反映するものであろう。
【変動の大きい建設事業費の伸び】 これらの経費と比べて、また、二三区の平均と比較しても、港区の普通建設事業費の増減率の変動はきわめて大きい。港区の歳出総額の伸びに二三区平均と若干異なる特徴があらわれているのは、主としてこのためである。たとえば、港区の四十六・四十七・四十九年度の歳出総額の伸びは、二三区平均をかなり上回っているが、これは普通建設事業費の伸びが高かったことによるものであり(四十七年度は扶助費の伸びの影響も大きいが)、逆に四十八年度は扶助費の増加率がきわめて大きかったにもかかわらず、普通建設事業費が前年度よりも減少したために、歳出総額の伸びは低くおさえられた。
 このように、普通建設事業費の伸びの変動が激しいのは、地元との話合いの難航、起債の許可の遅れ、工事用資材不足などのためでもある。
【多額の繰越しの影響】 これらの影響について、具体的にみてみると、四十六年度の決算では、教育用地購入にかかわる特別区債八億五、八〇〇万円が自治省の許可事務の遅れから未発行となり、同用地購入費九億五、四三九万円が四十七年度へ繰り越された。つづいて、四十七年度にも、同じく許可事務の遅れから教育用地購入にかかわる区債七億七、六〇〇万円が未発行となって、同用地購入費八億六、三六七万円が四十八年度へ繰り越された。
 このように毎年ほぼ同額が繰り越されていけば、支出の増減に与える影響は少ないが、四十八年度には、公園用地購入にかかわる区債三四億二、五〇〇万円と教育用地購入にかかわる区債一〇億一、五〇〇万円が、いずれも自治省の許可事務の遅れから未発行となり、これを財源とする港区開発公社業務委託金一一億二、八〇〇万円および公園予定地購入費三四億二、五〇〇万円が四十九年度への繰越しとなった。またこの年度には、都に委託した保育園等建設委託工事が、工事施行にあたって地元との話合いがつかなかったため着手できず、設計委託費を除く工事費の大部分が繰り越されたほか、教育センター建設、赤羽小学校・桜川小学校校舎改築、港中学校校舎増築、総合体育館建設等が物価高騰、工事用資材不足の影響で工事が遅れ、翌年度へ繰り越された。四十八年度の普通建設事業費が前年度よりも減少し、土木建築費、教育費の増加率が低いのは、このように前年度の繰越しを大幅に上回る繰越しのためである。また、四十九年度は、四十八年度からこのように多額の繰越しを受けたことが主な原因で、二三区平均をはるかに上回る財政規模の膨張をみたのである。