【性質別歳出構成比の変化】

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 性質別にみると(表44)、物件費、補助費等の比重の低下、扶助費の比重の上昇が目立っている。補助費等の比重の急減は、特別区納付金の比重の低下にともなうものである。扶助費の漸増は、前にのべたように、福祉施策の拡充によるもので、全国的な傾向であるが、港区の比重は二三区平均(表38)に比べるとかなり低い。これは生活保護費等の支出が、港区は相対的に少ないためであろう。
 人件費と普通建設事業費の二大経費はともに三〇%前後の比重を占めているが、人件費の比重がインフレ激化の四十八・四十九年度を除き、比較的緩かな変動を示しているのにたいして、普通建設事業費の比重は、前にのべたような事情で、かなり激しく増減している。また、公債費の比重は四十四年度以降、次第に上昇しはじめている。
【目的別歳出構成比の変化】 目的別歳出構成比の推移(表45)では、総務費の比重が四十六年度までは一六%前後であったのが、四十七年度以降二〇%を超えるようになったこと、民生費の比重も後半に漸増していること、逆に教育費の比重はむしろ前半のほうが高かったこと、土木建築費の比重は変動が大きいこと、そして特別区納付金の比重は、この期間に大幅に低下したことなどの特徴を見出すことができる。
 このうち、総務費の比重の増大が主として開発公社業務委託や庁舎建設用地購入によるものであることは前にのべた。民生費の比重の増大の原因についてもすでに説明したが、この比重は扶助費の場合と同様、二三区平均よりは若干低い。また、土木建築費や教育費の比重の変動も、前述の普通建設事業費のそれから理解することができよう。
【歳入構成比の変化】 このような歳出構成に対応する歳入構成は、表46のように推移した。四十七年度以降、区税の比重が減少し六〇%を割るようになるが、国庫支出金の比重が若干上昇し、区債の比重が大幅に増大している。これと似た傾向は二三区全体についても認めることができた(表41)。ただ、二三区平均と比べて港区では、区税の比重がなおかなり高いこと、その結果、普通交付金を受け取っていないこと(特別交付金のみ)、また、前述の民生費、扶助費の比重とも関連するが、国庫支出金の比重が低いことなどの特徴がみられる。
 

表46 歳入決算額の構成比(港区)

区  分昭和
40
年度
414243444546474849
特別区税
特別区交付金
国庫支出金
都支出金
諸 収 入
繰 越 金
区   債
そ の 他
合  計
74.8
0.0
4.0
1.9
4.7
5.0

9.6
100.0
72.3
0.7
3.9
4.0
6.0
6.2

6.9
100.0
76.2
1.0
4.1
3.5
5.4
5.8

4.0
100.0
74.3
0.9
4.0
3.2
5.4
4.9
1.4
5.9
100.0
70.9
0.9
4.2
4.8
8.3
6.4

4.5
100.0
73.2
0.2
4.3
6.3
7.1
4.9

4.0
100.0
73.2
0.2
4.2
4.7
6.6
5.6
1.7
3.8
100.0
69.8
0.2
4.5
5.8
4.4
3.1
6.1
6.1
100.0
68.6
0.4
6.0
4.2
4.2
3.8
4.9
7.9
100.0
54.9
0.3
5.1
2.8
4.1
4.1
17.7
11.0
100.0

(注) 普通会計。


 
【高い区民一人当たりの区民税】 港区の区税の比重が高いのは、区民に高額所得者が多いためで、たとえば、四十八年度の区民一人当たりの区民税は約三万七、〇〇〇円で、二三区平均の約一万七、〇〇〇円の二倍以上、足立区の約九、〇〇〇円の四倍にあたる。
【港区の重点施策】 では、港区では、このような財政構造の変化のなかで、どのような施策が重点的に追求されてきたであろうか。
【昭和四十~四十五年度】 地方自治法の一部改正によって、従来から懸案であった民生・土木事業など区民と密接な関係のある事業が区に移譲された昭和四十年度の港区の主要施策は、次の四本の柱からなっていた。
 
(一) 義務教育施設・環境の整備ならびにPTA経費の負担の軽減
(二) 道路、公園、街路灯などの土木関係施設の整備・充実
(三) 民生安定および社会福祉ならびに児童福祉の増進
(四) 中小企業の振興
 
 四十一年度の主要施策もこれとほぼ同じであるが、(二)の道路、公園の次に「児童遊園」が入り、その最後に「ならびに交通安全対策」が追加された。
 四十二年度には、(一)が「教育施設および環境の整備と幼児教育の充実」と変わり、(二)が「交通安全対策の強化、道路・公園・児童遊園・街路灯など土木関係施設の整備充実」となり、「交通安全対策」がはじめに置かれた。また、(五)として、「窓口事務改善、事務の能率化と住民サービスの向上」が加えられた。
 四十三年度の主要施策では、前年度までの(二)が「交通安全対策の強化、交通安全施設の充実整備と交通安全教育の普及」と改められて、施策の第一に置かれた。
 四十四年度には、前年度の(一)の次に、新たに(二)として「区民生活環境の浄化・改善」が付け加わり、従来の(五)が削られた。
 四十五年度には、ふたたび教育に関する施策が第一に置かれた。この間、若干の字句の変更もあったので、四十五年度の主要施策を掲げると次のとおりである。
 
(一) 教育施設および環境の整備、幼児教育の充実
(二) 交通安全対策の強化、交通安全施設の整備
(三) 区民生活環境の浄化・改善
(四) 民生安定のための社会福祉ならびに児童福祉の増進
(五) 中小企業の振興発展
 
【生活環境の変化と区政の対応】 この期間を通じて、「教育施設および環境の整備」、「社会福祉ならびに児童福祉の増進」、「中小企業の振興」の三つの主要施策はまったく変わらないが、「土木関係施設の整備」に「交通安全対策の強化」が加わり、「土木関係施設」が「交通安全施設」と改められたことや「区民生活環境の浄化・改善」が新しく主要施策にとり上げられたことは、港区の生活環境の変化とそれにたいする施策の対応を示すものとして注目される。
【自然環境の破壊】 昭和四十八年三月に発表された『港区長期計画策定のための基礎調査報告書(現状と問題点)』は、港区の当面するもっとも中心的な問題の第一に、「自然環境の破壊が進行していること」をあげて、「今日の都市居住のネックとしての公害の問題は、乱開発の反作用に他ならない。市街地として開発しつくされた港区では、地域的に、大規模緑地、良好な住宅街、寺社等の自然環境の残存がみられるが、おおむね破壊され、人体の健康、生命をも脅かすにいたっている」とのべている。
【空地の不足 通過交通】 また、この『報告書』は「建設動向の伸張により、空地が不足してきた」ことを問題とし、「地価の高騰に見合った建設投資は、いきおい、容積、高度、建ぺい率いずれも極めて高密度化していった。その結果、空地の不足が激しく、防災上危険な状態に落ち込んでいる」と指摘している。さらに、「街路条件」についても、「都心を中心に、放射状に拡がる幹線道路が、多く港区に存在し、それゆえ、通過交通を主とした交通量が非常に高く、公害の面でも、事故の面でも極めて問題となっている」とのべている。これらの指摘から、港区の抱えている環境上の問題を理解することができよう。
【昭和四十六年度以降の重点施策】 昭和四十六年度からは、港区の予算は「次代をになう世代の健全な育成」、「区民の安全と生活環境の整備」、「区民生活の安定と向上」の三つの柱を中心として編成され、とくに「老人対策」、「心身障害者対策」、「緑化対策」が重点施策目標としてとり上げられるようになった。また、四十九年度には、物価の高騰と不況の深刻化がすすむ、いわゆるスタグフレーションの状況のもとで、「この影響を最も受けている層に対する施策」が重点施策に加えられた。